B細胞リンパ腫に対するブリンシドフォビルの抗腫瘍効果 AACR Annual Meeting 2024における研究成果の学会発表

2024年3月18日
各位

会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
代 表 者 名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
(コード番号:4582)
問合せ先 IR 室(TEL.03-5472-1125)


B細胞リンパ腫に対するブリンシドフォビルの抗腫瘍効果
AACR Annual Meeting 2024における研究成果の学会発表


シン バイオ製 薬株式会社( 本社:東 京都)は、抗 ウイルス 薬ブリンシド フォビ ル
(brincidofovir、 「BCV」 のシンガポール国立がんセンター
以下 ) (National Cancer Centre
Singapore以下「NCCS」)との共同研究成果が、2024年4月5日から米国サンディエゴで開
催される米国がん学会(AACR Annual Meeting 2024)において発表されることをお知ら
せします。


この度の発表では、主に以下の研究成果を公表いたします。
・ 全 19 種の B 細胞リンパ腫の細胞株(DLBCL:びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫、BL:
バーキットリンパ腫、HL:ホジキンリンパ腫)を用い、BCV の抗腫瘍効果を評価しま
した。また、in vivo 効果を評価するために、マウス異種移植モデルが使用されました。
・ BCV は、濃度依存的に全ての B 細胞リンパ腫細胞株を抑制しました。
(IC50 0.0798~8.414 µg/ml)
・ Double-hit DLBCL 細胞株を含む 9 つの細胞株では顕著な感受性が示されました。
(IC50 < 1 μg/ml)
・ DLBCL 患者コホートにおいては、TLE1 の高発現と全生存期間悪化が関連することが
示されました。これは NK/T 細胞リンパ腫に対する結果と対照的でした。
・ BCV は B 細胞リンパ腫の新規治療薬になり得ることが示唆されました。


NCCSとの共同研究においては、2023年6月に行われたNK/T細胞リンパ腫におけるバイ
オマーカーに関する学会発表に続き、今回は、難治性であるdouble-hit DLBCLを含むB細
胞リンパ腫に対するBCVの抗腫瘍活性に関する研究成果の発表となります。
本発表の抄録は、2024年米国がん学会ウェブサイト(下記リンク:英語)に掲載されてお
ります。
https://www.abstractsonline.com/pp8/#!/20272/presentation/8985


以 上





【注記】
Double-hit リンパ腫 (WHO 分類第 5 版において高悪性度 B 細胞リンパ腫に分類)
従来、MYC 転座に加え BCL2 転座かつ/または BCL6 転座をもつ高悪性度 B 細胞リンパ
腫に含まれるタイプで、きわめて予後が悪いリンパ腫として知られています。


マウス異種移植モデル
高度免疫不全状態のマウスを用いた異種移植モデルは、ヒトのがん細胞株を移植し、がん
細胞を標的とした抗がん剤の評価のために用いられています。


AACR Annual Meeting(米国がん学会)
AACR 年次総会は、科学者、臨床医、その他の医療専門家、がんサバイバー、患者、支援者
が集まり、がんの科学と医学における最新の進歩を共有する、がん研究コミュニティの中心
的な研究会議です。集団科学や予防から、がん生物学、トランスレーショナル研究、臨床研
究、サバイバーシップやアドボカシーに至るまで、世界中の研究機関から集まったがん分野
における最高の研究者たちの研究にスポットライトを当てます。


National Cancer Centre Singapore(NCCS:シンガポール国立がんセンター)
シンガポール国立がんセンター(NCCS)は、がん治療の専門家を擁する主要なシンガポール
国内および地域の三次がんセンターです。NCCS は、シンガポールの公的医療部門におけ
るがん症例の大部分に対応しています。
詳細についてはウェブサイト(https://www.nccs.com.sg/)をご覧ください。


抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)概要
BCV は米国では既承認のシドフォビル(CDV:cidofovir、本邦では未承認)の脂質結合
体として新しい作用機序を有しています。CDV 及び他の抗ウイルス薬と比べ、より低用量
で広範囲の抗ウイルス効果を示すなど優れた特徴を併せもち、様々な2本鎖 DNA ウイルス
(サイトメガロウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バー ウイルス、ヘルペスウイ
ルス、BK ウイルス、パピローマウイルス及びサル痘や天然痘ウイルスなど)に対して有効
な治療方法となり得るものと期待されています。BCV 分子の細胞内への取り込み効率が飛
躍的に向上し、細胞内ではウイルスの複製阻害として作用する CDV-PP
(CDV diphosphate)
分子に変換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDV を初めとする他の抗ウイ
ルス薬に比べ深刻な副作用である腎毒性または骨髄抑制を回避できる新規の高活性の抗マ
ルチウイルス薬として期待されています。
2019 年 9 月、シンバイオは、Chimerix, Inc.(キメリックス社、本社:米国ノースカロラ
イナ州)との間で、天然痘やサル痘などのオルソポックスウイルスを除いたすべての疾患に
ついて世界全域を対象として、BCV に関しての開発・販売・製造を含めた独占的権利の取
得を目的とするライセンス契約を締結しました。
尚、錠剤および経口懸濁液(経口剤)は、2021 年 6 月 4 日に天然痘の治療薬として成人
および新生児を含む小児の患者を対象にキメリックス社が承認を取得しています。




BCV は、高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、現在、シンガポー
ル国立がんセンター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などとの間で抗がん活性の
確認及び抗ウイルス活性と合わせることによる相乗効果を確認するための共同研究を進め
ています。
臨床試験及び著名な研究機関との主な共同研究開発として下記を推進しています。
 造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始し
(2021 年 3 月)、FDA よりファスト・トラック指定(2021 年 4 月)。コホート3まで
のデータに基づき抗ウイルス効果の POC(Proof of Concept)の確立を確認(2023 年 5
月)。
 カリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターで難治性脳腫瘍に対
する BCV の抗腫瘍効果を検討する非臨床試験を開始(2021 年 9 月)。
 EB ウイルスの関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症について、米
国国立衛生研究所(NIH)に所属する米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)との
間で、多発性硬化症の治療における BCV の EB ウイルスに対する効果を検証し、今後の
臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契約
(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結(2023 年3
月)。
 EB ウイルス関連リンパ増殖性疾患に対する BCV の有効性を評価することを目的とし、
NIH に所属する米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との間で CRADA を締
結(2023 年 4 月)

 アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、潜伏しているウイ
ルスの再活性化による感染の関与についての研究がこの数年進んでおり、米国タフツ大
学により確立されたヒト神経幹細胞を培養し脳組織を3次元に模倣した単純ヘルペスウ
イルス(HSV)感染・再活性化モデルを用いて、HSV 感染に対する BCV の効果を検証
するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結(2022 年 12 月)



【当社会社概要】
シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、旧アムジェン株式会社の実質的
な創業者である吉田文紀が 2005 年 3 月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共
生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本
提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことによ
り、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、2016 年 5 月に
米国完全子会社 SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、代表者:ス
テファン・ベルティエ)を設立しました。





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