注射剤ブリンシドフォビルのアデノウイルス感染症を対象とした第2相試験における有効性に関する新たなポジティブ・データ(第65回ASH)

2023 年 12 月 11 日
各位

会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
(コード番号:4582)
問合せ先 IR 室(TEL.03-5472-1125)



注射剤ブリンシドフォビルのアデノウイルス感染症を対象とした第Ⅱ相臨床試験における
有効性に関する新たなポジティブ・データの口頭発表について
(第65回米国血液学会年次総会)


シンバイオ製薬株式会社(本社:東京都)は、現在米国サンディエゴで行われている第65
回米国血液学会年次総会(65th American Society of Hematology Annual Meeting and
Exposition、2023年12月9~12日)における口頭セッションにおいて、本試験を主導したシ
ンシナティ大学小児病院教授、グリムリー博士*により、注射剤ブリンシドフォビル(以下
「IV BCV」
)の免疫不全患者におけるアデノウイルス(AdV)感染症を対象に実施中の第Ⅱ
a相臨床試験(以下、
「本試験」)の抗ウイルス効果を示すPOCデータが発表されたことをお
知らせします。


本試験のコーホート1から3において、同種造血幹細胞移植の患者を含むAdV血症の免疫
不全患者27人に週2回のIV BCVが投与されました。抗ウイルス活性に関しては、 mg/kg
0.4
週2回**のIV BCV投与群において、血中AdV消失が100%の患者に確認されました。また、
その中で90%の患者は、治療後4週間以内にウイルス消失が確認されました(表1、図1)。
全27例の患者のうち、経口 BCV 製剤で確認されていた胃腸毒性および肝毒性を含む、治
療に関連する重篤な有害事象は認められませんでした。7例で治療に関連した有害事象が認
められましたが、すべての治療に関連した有害事象は可逆的で、治療終了後に消失しました。
有害事象に関連した投与中止は、0.4 mg/kg**のIV BCVを投与した患者10人のうちの1人
(グレード3のAST上昇)を含め、全体で27人中6人に観察されました。


この度の発表では、本試験は有望な結果であり、AdV感染症に対して承認されている他
の治療の選択肢法がないことから、本結果により、AdV感染症の治療に対するIV BCVの
安全かつ有効な用量が実証され、第Ⅲ相臨床試験への移行を支持するものであると述べ
られました。
本発表の抄録はASH websiteをご参照ください https://ash.confex.com/ash/2023/webprogram/Paper179901.html




吉田文紀社長兼CEOは「この度はASHにおいてAdV感染症治療薬としてのIV BCVの抗
ウイルス効果を示す第Ⅱ相試験のデータを口頭発表できたことを大変嬉しく思います。本
試験のデータに基づき、シンバイオは、アンメット・メディカル・ニーズの高い治療領域で
のBCVの承認のため、第Ⅲ相試験の開始に向けて準備を進めております」と述べています。


グローバルCMOのアジィ博士は「アデノウイルスは、造血幹細胞移植、臓器移植やその
他の免疫不全患者において、生命を脅かす感染症の原因です。現在アデノウイルス感染症を
治療する薬剤は承認されておりませんが、今回のデータはBCVがアデノウイルスに対する
ヒトでの有効性を示すもので、私たちのチームは、承認取得に向けて引き続き開発に取り組
んでいきます」と述べています。
以上
Michael Grimley, MD, Medical Director, Division of Bone Marrow Transplantation and Immune Deficiency, Cincinnati Children's

Hospital Medical Center(米国オハイオ州シンシナティ)

** または、体重50 kg以上の場合20 mg



ASH における口頭発表の概要

タイトル:Preliminary Results of a Phase 2a Clinical Trial to Evaluate Safety, Tolerability and Antiviral Activity

of Intravenous Brincidofovir in Immunocompromised Patients with Adenovirus Infection (Abstract #112)

(参考訳)免疫不全患者におけるアデノウイルス感染症を対象とした静注ブリンシドフォビルの安全性、忍容性および

抗ウイルス活性を評価する第Ⅱa 相臨床試験の予備的結果(抄録番号:#112)
【注記】
アデノウイルス感染症
BCVは、アデノウイルスを含む2本鎖DNAウイルスに対して、in vitroにおいて高活性で広
域スペクトルなどの特徴をあわせもつ抗ウイルス剤です。経口BCVはFDAから天然痘対策
として承認されているが、胃腸毒性が認められています。現在、この毒性がないことを期待
されている静注用製剤が、シンバイオにより複数の適応症のために開発されています。AdV
感染は、造血幹細胞移植(HCT)を受けた小児患者の約30%、成人のHCTレシピエントの
6%にみられます。播種性AdV感染症は、特に肺炎を合併した場合、高い死亡率になると報
告されています。


抗ウイルス薬ブリンシドフォビル
BCV は欧米では既承認のシドフォビル(CDV:cidofovir、本邦は未承認)の脂質結合体と
して新しい作用機序をもち、CDV及び他の抗ウイルス薬と比べて高活性の抗ウイルス効果
など優れた特徴を併せもち、広範囲の2本鎖DNAウイルス感染症(サイトメガロウイルス、
アデノウイルス、エプスタイン・バー ウイルス、ヘルペスウイルス、BKウイルス、パピロ
ーマウイルス及びサル痘ウイルスや天然痘ウイルスなど)に対して有効な治療方法となり
得るものと期待されている。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合する
ことにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変
換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDVをはじめとする他の抗ウイルス薬
に比べ深刻な副作用である腎毒性または骨髄抑制を回避できる新規の高活性抗マルチウイ
ルス薬として期待されています。
2019年9月、シンバイオは、Chimerix, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、キメリック
ス社)との間で、BCVに関しての天然痘やサル痘などのオルソポックスウイルスを除いた
すべての疾患について世界全域を対象として、開発・販売・製造を含めた独占的権利の取得
を目的とするライセンス契約を締結しました。
尚、錠剤および経口懸濁液(経口剤)は、2021年6月4日に天然痘の治療薬として成人およ
び新生児を含む小児の患者を対象に承認を取得しています。
BCVは、高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、現在、シンガポール国
立がんセンター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などとの間で抗がん活性の確認
及び抗ウイルス活性と合わせることによる相乗効果を確認するための共同研究を進めてい
ます。
臨床試験及び著名な研究機関との主な共同研究開発として下記を推進しています。
- 造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始し
(2021年3月)、米国食品医薬品局(FDA) よりファスト・トラック指定(2021年4
月)。コーホート3までのデータに基づき抗ウイルス効果のPOC(Proof of Concept)
の確立を確認(2023年5月)。
- カリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターで難治性脳腫瘍に
対するBCVの抗腫瘍効果を検討する非臨床試験を開始(2021年9月)。
- EBウイルスの関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症について、米
国国立衛生研究所(NIH)に所属する米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)と
の間で、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後
の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契
約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結(2023年
3月)。
- NIHに所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との間でEBウイルス関連リ
ンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価するCRADA を締結(2023年4月)。
アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、潜伏しているウイル
スの再活性化による感染の関与についての研究がこの数年進んでおり、米国タフツ大学に
より確立されたヒト神経幹細胞を培養し脳組織を3次元に模倣した単純ヘルペスウイルス
(HSV)感染・再活性化モデルを用いて、HSV感染に対するBCVの効果を検証するため
の委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結(2022年12 月)。


当社会社概要
シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、旧アムジェン株式会社の実質的
な創業者である吉田文紀が2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創 共生」

(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供
者を「共創・共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことにより、
社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、2016 年5月に米国
完全子会社SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、代表者:ステフ
ァン・ベルティエ)を設立しました。

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