注射剤ブリンシドフォビルのアデノウイルス感染症第2相臨床試験における有効性を示すポジティブ・データ学会発表(第65回米国血液学会年次総会口頭発表)

2023 年 11 月 6 日
各位

会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
(コード番号:4582)
問合せ先 IR 室(TEL.03-5472-1125)



注射剤ブリンシドフォビルのアデノウイルス感染症を対象とした第Ⅱ相臨床試験における
有効性を示すポジティブ・データの学会発表について
(第65回米国血液学会年次総会における口頭発表による)


シンバイオ製薬株式会社(本社 東京都) 注射剤ブリンシドフォビル
: は、 (以下「IV BCV」)
の免疫不全患者におけるアデノウイルス(AdV)感染症を対象に実施中の第Ⅱa相臨床試験
(以下、本試験」の予備的データを、
「 ) 第65回米国血液学会年次総会(65th American Society
of Hematology Annual Meeting and Exposition、2023年12月9~12日、サンディエゴ)に
おける口頭セッションにおいて、本試験を主導したシンシナティ大学小児病院教授、グリム
リ ー 博 士 ( Michael Grimley, MD, Medical Director, Division of Bone Marrow
Transplantation and Immune Deficiency, Cincinnati Children's Hospital Medical Center
(米国オハイオ州シンシナティ)が発表することをお知らせします。


本試験のコーホート1からコーホート3において、同種造血幹細胞移植の患者を含むAdV
ウイルス血症の免疫不全患者27人に週2回のIV BCVが投与されました。抗ウイルス活性に
関しては、0.4mg/kg*週2回のIV BCV投与群において、血中AdV消失が100%の患者に確認
されました。また、その中で90%の患者は、治療後4週間以内にウイルス消失が確認されま
した(下表参照)。
Cohort 1 Cohort 2 Cohort 3
抗ウイルス活性
(n=8) (n=9) (n=10)
6.2 8.8 5.1
IV BCV投与期間平均値、週(範囲)
(0.6 - 13.7) (1.0 - 13.4) (2.6 - 10.9)

IV BCV投与期間中央値、週 3.3 8.0 4.0

四分位範囲 4.7 6.0 2.9

血中ウイルスの消失が確認された患者数(%) 2 (25%) 5 (56%) 10 (100%)
IV BCV投与開始後4週間以内にウイ
1 (13%) 1 (11%) 9 (90%)
ルス消失が確認された患者数 (%)
8.6 8.1 5.1
IV BCV投与期間平均値、週(範囲)
(3.4 - 13.7) (1.0 - 13.4) (2.6 - 10.9)

IV BCV投与期間中央値、週 8.6 7.4 4.0

四分位範囲 5.1 7.7 2.9

投与量:0.2mg/kg(コーホート1)、0.3mg/kg(コーホート2)、0.4mg/kg(コーホート3)
体重50kg以上の場合:10mg、15mg、20mg(同順)
全27例の患者のうち、7例に治療に関連した有害事象が認められた一方、経口 BCV 製剤
で確認されていた胃腸毒性および肝毒性を含む重篤な治療に関連した有害事象は認められ
ませんでした。すべての治療に関連した有害事象は可逆的で、治療終了後に消失しました。
有害事象に関連した投与中止は、0.4 mg/kg*のIV BCVを投与した患者10人のうちの1人を
含め、全体で27人中6人に観察されました。
本試験は有望な結果であり、AdV感染症に対して承認されている他の治療の選択肢法
がないことから、この結果は、AdV感染症の治療法としてIV BCVのさらなる臨床試験の
必要性を支持すると述べられています。
※本発表の抄録はASHウェブサイトに公表されております。
https://ash.confex.com/ash/2023/webprogram/Paper179901.html



吉田文紀社長兼CEOは「我々は、AdV感染症治療薬としてのIV BCVの抗ウイルス効果を
示す第Ⅱ相試験のデータを発表できることを大変嬉しく思います。本試験のデータに基づ
き、シンバイオは、アンメット・メディカル・ニーズの高い治療領域でのBCVの承認に向け
て、第Ⅲ相試験を検討する予定です。また、世界の主要な移植センターの多くの医師から熱
意のある支持が寄せられていることを大変嬉しく思います。」と述べています。


グローバルCMOのアジィ博士は「治療の選択肢が限られている患者さんに、必要とされ
ている治療を提供するために、現在進行中の臨床試験から、このような心強い中間データを
学会において発表する機会を得られたことを嬉しく思います。我々は、生命を脅かす治療が
困難なウイルス感染症患者のための選択肢として、この革新的で広範なスペクトルを持つ
強力な抗ウイルス剤を市場に投入することに引き続き全力を尽くしてまいります。 と述べ

ています。
以上
ASH における口頭発表の概要

タイトル:Preliminary Results of a Phase 2a Clinical Trial to Evaluate Safety, Tolerability and

Antiviral Activity of Intravenous Brincidofovir in Immunocompromised Patients with Adenovirus

Infection (Abstract #112)
(参考訳)免疫不全患者におけるアデノウイルス感染症を対象とした静注ブリンシドフォビルの安全性、

忍容性および抗ウイルス活性を評価する第Ⅱa 相臨床試験の予備的結果(抄録番号:#112)

セッション名:721. 同種移植:コンディショニングレジメン、移植片形成および急性毒性:移植関連合

併症の軽減による転帰の改善

セッション開催日:2023 年 12 月 9 日(土)

セッション時間:午前 9 時 30 分 – 午前 11 時

発表時間:午前 10 時 15 分

会場: サンディエゴ・コンベンションセンター、ルーム 11
【注記】
アデノウイルス感染症
BCVは、アデノウイルスを含む2本鎖DNAウイルスに対して、in vitroにおいて高活性で広
域スペクトルなどの特徴をあわせもつ抗ウイルス剤です。経口BCVはFDAから天然痘対策
として承認されているが、胃腸毒性が認められています。現在、この毒性がないことを期待
されている静注用製剤が、シンバイオにより複数の適応症のために開発されています。AdV
感染は、造血幹細胞移植(HCT)を受けた小児患者の約30%、成人のHCTレシピエントの
6%にみられます。播種性AdV感染症は、特に肺炎を合併した場合、高い死亡率になると報
告されています。


抗ウイルス薬ブリンシドフォビル
BCV は欧米では既承認のシドフォビル(CDV:cidofovir、本邦は未承認)の脂質結合体と
して新しい作用機序をもち、CDV及び他の抗ウイルス薬と比べて高活性の抗ウイルス効果
など優れた特徴を併せもち、広範囲の2本鎖DNAウイルス感染症(サイトメガロウイルス、
アデノウイルス、エプスタイン・バー ウイルス、ヘルペスウイルス、BKウイルス、パピロ
ーマウイルス及びサル痘ウイルスや天然痘ウイルスなど)に対して有効な治療方法となり
得るものと期待されている。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合する
ことにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変
換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDVをはじめとする他の抗ウイルス薬
に比べ深刻な副作用である腎毒性または骨髄抑制を回避できる新規の高活性抗マルチウイ
ルス薬として期待されています。
2019年9月、シンバイオは、Chimerix, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、キメリック
ス社)との間で、BCVに関しての天然痘やサル痘などのオルソポックスウイルスを除いた
すべての疾患について世界全域を対象として、開発・販売・製造を含めた独占的権利の取得
を目的とするライセンス契約を締結しました。
尚、錠剤および経口懸濁液(経口剤)は、2021年6月4日に天然痘の治療薬として成人およ
び新生児を含む小児の患者を対象に承認を取得しています。
BCVは、高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、現在、シンガポール国
立がんセンター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などとの間で抗がん活性の確認
及び抗ウイルス活性と合わせることによる相乗効果を確認するための共同研究を進めてい
ます。
臨床試験及び著名な研究機関との主な共同研究開発として下記を推進しています。
- 造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始し
(2021年3月)、米国食品医薬品局(FDA) よりファスト・トラック指定(2021年4
月)。コーホート3までのデータに基づき抗ウイルス効果のPOC(Proof of Concept)
の確立を確認(2023年5月)。
- カリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターで難治性脳腫瘍に
対するBCVの抗腫瘍効果を検討する非臨床試験を開始(2021年9月)。
- EBウイルスの関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症について、米
国国立衛生研究所(NIH)に所属する米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)と
の間で、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後
の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契
約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結(2023年
3月)。
- NIHに所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との間でEBウイルス関連リ
ンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価するCRADA を締結(2023年4月)。
アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、潜伏しているウイル
スの再活性化による感染の関与についての研究がこの数年進んでおり、米国タフツ大学に
より確立されたヒト神経幹細胞を培養し脳組織を3次元に模倣した単純ヘルペスウイルス
(HSV)感染・再活性化モデルを用いて、HSV感染に対するBCVの効果を検証するため
の委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結(2022年12 月)。


当社会社概要
シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、旧アムジェン株式会社の実質的
な創業者である吉田文紀が2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創 共生」

(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供
者を「共創・共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことにより、
社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、2016 年5月に米国
完全子会社SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、代表者:ステフ
ァン・ベルティエ)を設立しました。

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