ブリンシドフォビルの多発性硬化症に関する米国国立神経疾患・脳卒中研究所との研究成果を発表(ECTRIMS-ACTRIMS合同学会)

2023 年 10 月 12 日
各位

会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
代 表 者 名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
(コード番号:4582)
問合せ先 IR 室(TEL.03-5472-1125)

ブリンシドフォビルの多発性硬化症に関する
米国国立神経疾患・脳卒中研究所との研究成果を発表
(ECTRIMS-ACTRIMS合同学会)


シンバイオ製薬株式会社(本社:東京都、以下「シンバイオ」
)は、現在、米国国立衛
生研究所(NIH: National Institutes of Health)の一部である米国国立神経疾患・脳卒中研
究所(NINDS: National Institute of Neurological Disorders and Stroke)と多発性硬化症
を対象として共同研究を進めておりますが、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV:
brincidofovir)に関する研究成果がNINDSのDr. Maria Chiara Monacoにより、第9回
ECTRIMS-ACTRIMS合同学会(9th Joint ECTRIMS-ACTRIMS Meeting 、2023年10月
11~13日、イタリア・ミラノ)において、発表されたことをお知らせします。


この度の発表では、主に以下の研究成果を公表しました。
・ 多発性硬化症患者および健常者由来の内在性Epstein-Barr Virus(EBV)による不死化リンパ芽球細
胞(EBV陽性のB細胞株)において、BCV処理はウイルス複製を濃度依存的に抑制しました。

・ 一方、EBV陰性対照のB細胞株においては増殖抑制含めBCVの作用は認められませんでした。

・ これらの予備的データはBCVをMS患者への抗EBV療法に適応する潜在的有用性を示唆しています。



近年、多くの研究により、EBVが多発性硬化症のリスクファクターであることが証明され
ております。2023年3月に、多発性硬化症の抗ウイルス剤による新たな治療方法の確立を目
的として共同開発研究契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)
を締結し、臨床試験の実施に向けて共同研究を進めております。この度の第9回ECTRIMS-
ACTRIMS合同学会においての発表はCRADAにおける研究の第一報です。


吉田文紀社長兼CEOは「EBVを直接標的とすることで、MSに苦しむ患者さんに新たな治療
選択肢を提供できる可能性を示唆する今回の研究成果に、我々はとても興奮しています。臨
床試験に向けたNINDSチームとの共同研究の次のステップを楽しみにしております。」と
語っています。
以上
【注記】
リンパ芽球細胞 (LCL: Lymphoblastoid cell line)
LCLは、in vitroでEBウイルスをB細胞に感染させて不死化した細胞株です。


多発性硬化症 (MS: multiple sclerosis)
厚生労働省指定の特定疾患で神経難病[指定難病13]。中枢神経の自己免疫疾患と言われてい
ます。世界全体では欧米を中心に患者数は約300万人で、日本では患者数は約1万8000人と
言われています。脳、脊髄、視神経などに発病し、様々な神経症状が現れ再発と寛解を繰り
返します。


Epstein-Barr Virus (EBV)
EBVは、1964年にバーキットリンパ腫から分離された最初のヒト癌ウイルスとして知られ、
上咽頭にある受容体を介して感染します。また同じ受容体を発現するB細胞へ感染します
が、ほとんどの場合不顕性感染となり潜伏感染状態で一生涯存在し続けます。しかし、時に
様々な要因により、急性・慢性の異常なリンパ球増殖を呈し長期にわたる倦怠や発熱など多
様な臨床症状をもたらします。さらに、多発性硬化症や一部の自己免疫疾患など様々な疾患
の原因因子となる可能性があると認識されています。これまで、ワクチンや細胞治療が開発
中ですが、承認された薬剤は現在ありません。


米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS: National Institute of Neurological
Disorders and Stroke)
NIHを構成している27の研究所及びセンターの一つで、その使命は、脳・神経系に関する基
本的な知識を模索し、その知識を活用して全ての人々の神経疾患の負担を軽減することに
あります。2023年度予算は28億ドルで、主な研究領域は、脳と神経系の基礎生物学、遺伝
学、神経変性、学習と記憶、運動制御、脳修復、シナプスなど基礎科学研究に焦点を当てて
おり、エイズ、アルツハイマー病、てんかん、筋ジストロフィー、多発性硬化症、パーキン
ソン病、脊髄損傷、脳卒中、外傷性脳損傷など、脳や神経系の疾患や障害に関する臨床研究
にも資金を提供しています。


米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)
NIHは、米国の医学研究機関であり、27の研究所とセンターがあり、米国保健社会福祉省の
一部門である。NIHは、基礎、臨床、トランスレーショナルな医学研究を実施・支援する主
要な連邦機関であり、一般的な疾患と希少疾患の両方の原因、治療、治癒を調査しています。
共同開発研究契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)
共同研究開発契約(CRADA)とは、連邦政府研究機関と連邦政府に関係しない民間企業また
は大学が、共通の研究目的の追求のために研究開発を促進するために締結される制度に則
った正式な契約です。CRADAの目的は、政府の施設、知的財産、専門知識を、共同で研究
開発することにより広く人の健康のために有用で市場性のある製品につなげてゆくことで
す。CRADAの下では、研究から生まれるNIHの発明者/研究者と共同研究機関の発明者/研
究者による共同発明、もしくはNIHの発明者/研究者による単独発明について、特許権の使
用許諾を得る優先権が共同研究機関に与えられます。


第9回ECTRIMS/ACTRIMS合同学会、2023年10月11~13日開催)(9th Joint ECTRIMS-
ACTRIMS Meeting, MSMilan2023)
多発性硬化症の世界最大規模の研究会。MSMilan2023(10月11日~13日、イタリア・ミ
ラノで開催)は、複数の分野、研究所、国の研究者をつなぐことを目的とした多様なプロ
グラムで、参加者に会場やオンラインでの参加機会を提供します。


抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV:brincidofovir)
BCV は欧米では既承認のシドフォビル(CDV:cidofovir、本邦は未承認)の脂質結合体と
して新しい作用機序をもち、CDV及び他の抗ウイルス薬と比べて高活性の抗ウイルス効果
など優れた特徴を併せもち、広範囲の2本鎖DNAウイルス感染症(サイトメガロウイルス、
アデノウイルス、エプスタイン・バー ウイルス、ヘルペスウイルス、BKウイルス、パピロ
ーマウイルス及びサル痘ウイルスや天然痘ウイルスなど)に対して有効な治療方法となり
得るものと期待されている。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合する
ことにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変
換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDVをはじめとする他の抗ウイルス薬
に比べ深刻な副作用である腎毒性または骨髄抑制を回避できる新規の高活性抗マルチウイ
ルス薬として期待されています。
2019年9月、シンバイオは、Chimerix, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、キメリック
ス社)との間で、BCVに関しての天然痘やサル痘などのオルソポックスウイルスを除いた
すべての疾患について世界全域を対象として、開発・販売・製造を含めた独占的権利の取得
を目的とするライセンス契約を締結しました。
尚、錠剤および経口懸濁液(経口剤)は、2021年6月4日に天然痘の治療薬として成人およ
び新生児を含む小児の患者を対象に承認を取得しています。
BCVは、高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、現在、シンガポール国
立がんセンター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などとの間で抗がん活性の確認
及び抗ウイルス活性と合わせることによる相乗効果を確認するための共同研究を進めてい
ます。
臨床試験及び著名な研究機関との主な共同研究開発として下記を推進しています。
- 造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始し
(2021年3月)、米国食品医薬品局(FDA) よりファスト・トラック指定(2021年4
月)。コーホート3までのデータに基づき抗ウイルス効果のPOC(Proof of Concept)
の確立を確認(2023年5月)。
- カリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターで難治性脳腫瘍に
対するBCVの抗腫瘍効果を検討する非臨床試験を開始(2021年9月)。
- 近年、多くの研究により、EBVが多発性硬化症のリスクファクターであることが証明
されています。シンバイオは、2022年8月にNINDSと共同研究試料提供契約を締結し
ました。さらに、2023年3月には、多発性硬化症の抗ウイルス剤による新たな治療方法
の確立を目的としてCRADAを締結し、臨床試験の実施に向けて共同研究を実施中。
- NIHに所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との間でEBV関連リンパ増
殖性疾患に対するBCVの有効性を評価するCRADA を締結(2023年4月)。
- アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、潜伏しているウ
イルスの再活性化による感染の関与についての研究がこの数年進んでおり、米国タフ
ツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養し脳組織を3次元に模倣した単純ヘル
ペスウイルス(HSV)感染・再活性化モデルを用いて、HSV感染に対するBCVの効果
を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結(2022年12
月)。


当社会社概要
シンバイオは、米国アムジェン社元副社長で、旧アムジェン株式会社の実質的な創業者であ
る吉田文紀が2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」
(共に創り、
共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・
共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことにより、社会的責任及
び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、2016 年5月に米国完全子会社
SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、代表者:ステファン・ベル
ティエ)を設立しました

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