次世代型デコイ核酸医薬の基盤技術開発を完了 炎症性疾患向けに製品開発へ

News Release

平成 28 年7月 12 日
アンジェス MG 株式会社




次世代型デコイ核酸医薬の基盤技術開発を完了
炎症性疾患向けに製品開発へ




当社は、次世代の核酸医薬である「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、製品開発に
乗り出します。


今回のキメラデコイは STAT6 と NF-κB という炎症に関わる二つの重要な因子を同時に
抑制する働きを持った核酸医薬であり、NF-κB のみをターゲットとした従来のデコイに比
べ、炎症を抑える効果が格段に高いことが期待されます。当社は大阪大学大学院医学系研究
科臨床遺伝子治療学講座の研究チームと平成 24 年から共同研究を実施してまいりました。


喘息(ぜんそく)を対象とした動物試験の結果、従来の NF-κB デコイと比較して、呼吸
機能の程度を示す気道の抵抗値を約半分に、さらに炎症に関係する体内物質の濃度を大幅
に抑制できることがわかりました。この研究成果は、大阪大学大学院の研究チームによって
今年 5 月に開催された米国遺伝子治療学会で発表されました。またキメラデコイは、NF-κ
B デコイと比べ生体内の安定性に優れ、かつ生産コストが低いという長所も併せ持ちます。


キメラデコイの基盤技術開発が完了したことを受け当社は、臨床試験を含む製品開発の
段階に進みます。まず、臨床試験の実施に必要な前臨床試験を開始します。具体的には、炎
症性疾患を対象としたキメラデコイに適した製剤の開発、安全性試験などを実施します。今
後、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)など炎症性疾患
に対する治療薬の開発を目指します。複数のターゲットを同時に抑制できるキメラデコイ
の製品開発に着手するのは世界で初めてです。


炎症性疾患の分野では近年、抗体医薬品が実用化されていますが、効果が持続しない、薬
価が高いなどの課題があり、また有効な医薬品のない難治性の炎症性疾患も数多く存在し
ます。キメラデコイはこうした疾患に有効な治療法をもたらす可能性があります。





当社はこれまで複数の改良型のデコイを研究してきましたが、今回のキメラデコイは
NF-κB デコイと比較して様々な優位点を持つことから、今後、当社が新たに開発を始め
るデコイについては基本的にキメラ型を主軸と致します。ただし、既に開発に乗り出して
いる椎間板性腰痛症を対象としたデコイは、動物実験で効果が確認されていることから従
来型 NF-κB デコイの開発を継続します。




<ご参考>
- 用語の解説 -
1. NF-κB (nuclear factor-kappa B)
遺伝子は、生体の恒常性を維持する上で重要な働きを担っていますが、ほとんどの遺伝子は
普段発現しておらず、必要な時に必要な遺伝子が発現できるように発現の制御を司ってい
る蛋白質が転写因子です。NF-κB は、炎症や免疫が活性化する時、活性酸素などによる酸
化ストレスなどの刺激が外部から与えられた時に、細胞が炎症反応や免疫反応を惹起させ
るため活性化する主要な転写因子です。 実際に、NF-κB の過剰な活性化は、アトピー性
皮膚炎、乾癬、関節リウマチなど異常な炎症や免疫関連の疾患を引き起こし、病態を悪化さ
せることが指摘されています。


2.STAT6(signal transducer and activator of transcription 6)
上記、NF-κB と同様に STAT6 は遺伝子の発現の制御を担う転写因子です。STAT6 は特に
免疫応答シグナルにおいて重要な役割を果たしており、STAT6 の過剰な活性化は IL-4, IL-
13 などのサイトカインにより引き起こされ、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー・
免疫関連の疾患を悪化させることが指摘されています。実際、IL-4,IL-13 を分子標的とし
た抗体医薬が開発されており、STAT6 の重要性が示唆されています。
以上




お問い合わせ先

アンジェス MG株式会社 経営戦略本部 経営企画部 広報・IR 担当

TEL: 03-5730-2641





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