当社子会社の医化学創薬株式会社におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体の販売開始に関するお知らせ

2021 年 1 月 20 日
各 位
会 社 名 株式会社トランスジェニック
代表者名 代表取締役社長 福 永 健 司
(コード番号 2342 東証マザーズ)
問合せ先 取 締 役 船橋 泰
( 電 話 番 号 03 -6 55 1 -2 6 01 )



当社子会社の医化学創薬株式会社における
SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に対する抗体の販売開始に関するお知らせ

当社子会社の医化学創薬株式会社 (代表取締役社長:八並孝夫、 北海道札幌市、 以下、「医化学創薬」 )
は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症(以下、 「新型コロナウイルス」 )に対する抗体の開発プロ
ジェクトにおいて取得に成功しました SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に結合する抗体 (2020 年 12 月
23 日付リリース『当社子会社の医化学創薬株式会社における SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に対す
る抗体取得および販売に関するお知らせ』 )について 2021 年 1 月 26 日より販売を開始しますので、お
知らせいたします。

【概要】
今般の新型コロナウイルスの感染症拡大においては、全ての医療機関で迅速に診断可能な PCR 検査の
代替となる簡易診断キット及び治療薬の開発が急務となっています。
医化学創薬は、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質※2(人に侵入するためのタンパ
ク)の「糖鎖結合領域」に着目し、当該分子に結合する抗体を取得することで、イムノクロマト法によ
る簡易検査キットや治療薬へと繋げる複数の研究開発プロジェクトに取り組んでいます。
このたび販売を開始する SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に結合する抗体は、医化学創薬が有する糖
ペプチド合成技術と抗糖タンパク質抗体取得技術を融合させることで、糖鎖領域に対する抗体取得に成
功したものです。 一般的な抗体取得方法では、 不活化ウイルスや組換体タンパク質を免疫原としますが、
当該方法では免疫原が大きく抗原となる部位が多く含まれるため、狙った部位に対する抗体取得が難し
いだけでなく、変異してしまう部位に対する抗体も取れてしまうという問題があります。この問題に対
して、医化学創薬が用いた方法では、スパイクタンパク質における糖タンパク質の一部である糖ペプチ
ドを免疫原としていることから、効率よく狙った部位に対する抗体取得が可能となります。また、糖ペ
プチド抗原を免疫原として取得した抗体は、一般的には、本来の糖タンパク質に結合しない可能性が生
じますが、医化学創薬は、独自の免疫法により達成される極めて高い陽性率(多数の候補クローンの取
得)とスクリーニング方法により解決しています。また、当該抗体は、変異が発生しにくい糖鎖付加部
位※3 をターゲットとしているため、今般世界各国で報告されている変異ウイルスにも結合することが期
待され、糖鎖構造が異なっていても結合する「ユニバーサル抗体※4」としての可能性も期待されます。
当該抗体は、国内外の診断薬メーカーや製薬企業向けに販売し、新型コロナウイルスの簡易診断キッ
ト開発や治療薬開発に貢献することを想定しています。

当社は、創業以来、各種検査用抗体試薬の開発・提供および創薬支援ツールとしての遺伝子改変マウ
スの提供を行うとともに、グループにおいては、治療薬開発に必要な非臨床試験サービスや最新機器を
用いた検査・解析サービスの提供を行っております。
既に当社子会社のジェネティックラボは、北海道及び札幌市と検査受託契約を締結し、新型コロナウ
イルスの PCR 検査を実施しています。また、当社においても、新型コロナウイルス研究用エクソンヒト
化マウスの開発を進めております。
医化学創薬は取得した抗体群の評価をトランスジェニックグループの創薬支援機能を活用しながら迅
速に進めるとともに、 糖ペプチド免疫原を使用した SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に対して結合特性
が異なる、あるいは別糖鎖領域を認識する抗体開発も継続し、今後新たに変異が生じたスパイクタンパ
ク質にも結合しうる抗体開発を順次進めてまいります。
当社グループは、引き続きグループの知見を集結させ、今般の世界的な新型コロナウイルス感染拡大
抑制に貢献してまいります。

なお、本件による 2021 年 3 月期の連結業績への影響はございませんが、今後新型コロナウイルスに関
する抗体ライブラリーを拡充させ、収益化を図りグループの業績拡大につなげるよう積極的に取り組ん
でまいります。

◆ご参考
※1 イムノクロマト法
イムノクロマト法は、抗原抗体反応を利用した迅速診断法の一つで、インフルエンザの診断や
妊娠検査薬に利用されています。

※2 スパイクタンパク質
スパイクタンパク質は、 ウイルス粒子の表面に存在するスパイク (突起)状のタンパク質です。
スパイクタンパク質には S1 と S2 の領域があります。ウイルスが細胞に侵入(感染)する際は、
まず S1領域が細胞表面のアンギオテンシン変換酵素 2(ACE2)に結合します。スパイクタン
パク質の S1領域は、診断薬、治療薬(中和抗体)やワクチンのシーズ開発のシーズになると
期待されます。

※3 スパイクタンパク質の糖鎖付加部位


スパイクタンパク質の立体構造
*黒点線丸は糖鎖修飾箇所
(参考:Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike in the prefusion conformation
Science 19 Feb 2020)




※4 ユニバーサル抗体
ユニバーサル抗体は、変異ウイルス、糖鎖の違いに関わらず。変異しない領域に対して“ユニ
バーサル”に結合する抗体で、診断薬や治療薬(中和抗体)候補として期待されます。
(医化学
創薬定義)




以上

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