HPCシステムズ、アドバンスソフト社、Oracle Cloud Infrastructureを活用し最大実行速度260倍、高精度な分子動力学法のクラウドサービスを開発

2023年7月31日
プレスリリース
報道関係者各位
HPC システムズ株式会社
代表取締役 小野 鉄平
(コード番号:6597 東証グロース)
問合せ先 取締役管理部長 下川 健司
(電話番号:03-5446-5530)




HPCシステムズ、アドバンスソフト社、Oracle Cloud Infrastructureを活用し
最大実行速度260倍、高精度な分子動力学法のクラウドサービスを開発


HPCシステムズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 小野 鉄平、以下HPCシステムズ)、アドバ
ンスソフト株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 松原 聖 、以下アドバンスソフト社)
は、オラクルが提供するOracle Cloud Infrastructure(OCI)の高性能コンピューティング(HPC)を
活用し、それぞれの強みを掛け合わせることで、分子動力学シミュレーションの実行速度が最大で
260倍注)になる高速・高精度クラウドサービスを開発しましたのでお知らせいたします。
同開発は、NVIDIA製GPU(Graphics Processing Unit)をベアメタル・インスタンス上で実行させ、
複雑なAIモデルや機械学習システムなどを高速化するOCI HPC、GPU化したニューラルネットワーク
力場を用いて分子動力学シミュレーションの高精度化を可能にしたアドバンスソフト社の分子動力学
計算ソフトウェア「ニューラルネットワーク分子動力学システム Advance/NeuralMD」、そして双
方の性能を最大限に引き出せるようHPCシステムズがシステムインテグレーション技術を駆使し最適
化を施すことで完成しました。
このサービス環境は、電気自動車などに搭載される全固体リチウム二次電池をはじめとする多種多様
な機能性素材・材料の研究開発に活用でき、近々にHPCシステムズのサイエンスクラウドサービスの
一環として提供される予定です。




サイエンスクラウド
ー 化学シミュレーションクラウド ー
【従来の分子動力学法の課題】
近年の新素材・材料の研究開発では、原子や分子の物理的な動きを高性能コンピュータで計算し、力
学的、熱的、電気的、磁気的、光学的などの物質固有の性質を予測することが盛んに行われていま
す。こうしたコンピュータシミュレーション技術を活用することで、実験にかかる時間やコストを大
幅に削減しながら、効率よく新素材・材料の研究開発を行うことができるようになりました。
特に、物質の原子レベルの物理的な動きを計算する手法として、分子動力学シミュレーションが広く
用いられていますが、従来の分子動力学シミュレーションは、電子や原子核を考慮せずモデル化され
た近似式とパラメータを用いて原子同士に働く相互作用を計算するため、計算精度の点に課題が生じ
ます。一方、第一原理計算の結果から原子に働く力を計算する手法は、高精度ながら計算に要する時
間の点に難があります。
そこで、昨今ニューラルネットワーク力場を用いて原子に働く力を計算する手法が注目を集めていま
す。ニューラルネットワーク力場は、第一原理計算で得た計算結果を機械学習させてAIを活用するこ
とで、第一原理計算よりも短い計算時間で、第一原理計算の計算結果を高精度に再現することができ
ます。しかしながら、その計算速度には更なる改善の余地があります。



【ニューラルネットワーク分子動力学システム Advance/NeuralMD】
従来の分子動力学シミュレーション手法が抱える様々な課題は、GPU化したニューラルネットワーク
力場を用いることで、分子動力学シミュレーションの高速化・高精度化を可能にしたアドバンスソフ
ト社のニューラルネットワーク分子動力学システムAdvance/NeuralMDで解決できます。
その特長は次の通りです。
●第一原理計算よりも高速、かつ、既存の分子動力学計算よりも高精度
●未知の材料、未知の添加元素 など、既存の力場が無い系も取り扱い可能
●研究者の勘や経験に依存しない、システマティックなシミュレーションを実現


分子動力学シミュレーション手法 計算速度 計算精度
従来の分子動力学シミュレーション △ ×
第一原理計算の結果から原子に働く力を計算する手法 × △
ニューラルネットワーク力場を用いて原子に働く力を
〇 〇
計算する手法
ニューラルネットワーク分子動力学システム
◎ ◎
Advance/NeuralMD



【Oracle Cloud Infrastructure】
Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)は、オラクルが提供する優れた可用性・拡張性・安全
性を有するクラウド・インフラストラクチャ・プラットフォームです。スモールスタートで始められ
る仮想マシン環境から、高い性能を必要とするシステムに向けたベアメタル環境まで、あらゆるビジ
ネス要件を満たすインフラ機能セットを備えています。
●迅速な立ち上げと拡張性に優れたコンピュート
●多彩なデータ保管のニーズに優れたコストパフォーマンスで応えるストレージ
●より高速でより安全・堅牢なセキュリティを両立するネットワーク
●データベース、セキュリティ、分析、AIなどの高度な運用・管理サービス
OCIサービス体系図



また、NVIDIA製GPU(Graphics Processing Unit)をベアメタル・インスタンス上で実行し、複雑な
AIモデルや機械学習システムの高速化を実現。例えば、新薬の試験や開発、安全な航空機の設計、天
然資源の迅速な調達などのモデリングやシミュレーションのように膨大なデータを多用する複雑なハ
イパフォーマンス・アプリケーションも、高速・効率的・低コストで実行できます。



【HPCシステムズのインテグレーション技術による最適化】
硫化物系リチウム固体電解質Li10GeP2S12(以下、LGPS)は、高いリチウムイオン伝導率を有すること
から、電気自動車などに搭載される全固体リチウム二次電池の固体電解質として注目を集めている材
料です。実用上で十分な出力を有する全固体リチウム二次電池を作成するためには、高いリチウムイ
オン伝導率を持つ固体電解質が必要であり、そのような物質を探索するために分子動力学シミュレー
ションによるリチウムイオン伝導率の計算が広く行われています。
このLGPSを対象に、32個のGPUを搭載したOCI上で、Advance/NeuralMDのGPU化されたニューラ
ルネットワーク力場が使用できるよう、HPCシステムズのシステムインテグレーション技術で最適化
を図り、OCIおよびAdvance/NeuralMDの性能を最大限に引き出し、計算を実行しました。



【計算結果および今後の見通し】
計算の結果、分子動力学シミュレーションの実行速度を最大で約260倍注)に高速化することに成功、
加えて、1ナノ秒の分子動力学シミュレーションをLGPSの98000原子系に対して実施した場合、約15
時間という実用的な時間で約10万原子の大きなモデルのイオン伝導率を計算することができました。




98000原子系における相対計算速度 GPUデバイス数に対する相対計算速度のスケーリング
この度、高性能な分子動力学法ソフトウェア、多機能なクラウド環境、高度なシステムインテグレー
ション技術が三位一体となったことで、膨大なナノ秒オーダーの分子動力学シミュレーションをわず
か半日から数日程度の短時間で実行、更に精度の高い計算結果を導き出すことに成功しました。


このサービス環境は、多種多様な機能性素材・材料の研究開発に活用でき、近々にHPCシステムズの
サイエンスクラウドサービスの一環として提供される予定です。


HPCシステムズは、今後もアドバンスソフト社、日本オラクルとの連携を強化して、分子動力学法の
可能性を追求し、様々な分野の研究開発の効率化および加速化を実現することで、未来社会の創造に
貢献してまいります。




◆HPCシステムズのサイエンスクラウドサービス:https://www.hpc.co.jp/science-cloud/




注)Intel Xeon Platinum 72コアCPUによるLGPS 98000原子系の計算時間を基準とし、OCI環境で
Advance/NeuralMDマルチGPUによる相対計算速度を算出しました。
詳細は次のリンクをご参照下さい。
http://case.advancesoft.jp/NeuralMD/Cloud-Benchmark/index.html
HPCシステムズについて
HPCシステムズは、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野のニッチトップ企業です。
HPC事業では、科学技術計算用高性能コンピュータとシミュレーションソフトウェア販売、科学技術計算や
ディープラーニング(深層学習)環境を構築するシステムインテグレーションサービス、シミュレーションソフ
トウェアプログラムの並列化・高速化サービス、計算化学ソフトウェア、マテリアルズ・インフォマティクスの
プログラム開発・販売、受託計算サービス・科学技術研究開発支援、創薬研究開発や素材・材料研究開
発分野向けサイエンスクラウドサービスをワンストップで提供しています。
また、CTO事業では、顧客の用途、課題をヒアリングしながら、価格・性能・品質・高低温・防塵・防水・静
電対策・過酷な環境に対する高耐久性など多種多様の対応が求められる、工場生産設備・製造装置・検
査装置、制御機器や交通インフラ、自動運転、リテール店舗などのコントローラーとしての産業用コンピュ
ータやエッジコンピュータの仕様提案から開発、生産、保守サポート、長期安定供給を実現しています。




社 名 HPCシステムズ株式会社 https://www.hpc.co.jp/
所在地 東京都港区海岸3丁目9番15号 LOOP-X 8階
設 立 2006年7月3日
資本金 2億2,991万円 (2023年3月31日時点)
代表者 代表取締役 小野 鉄平



プレスリリースに関するお問い合わせ
https://www.hpc.co.jp/contact/company_form/




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他の国における登録商標です。NetSuiteは、クラウド・コンピューティングの新時代を切り開いたクラウド・
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