植物のカンキツグリーニング病において2価鉄供給資材による症状緩和効果を発見

2020年9月1日
愛知製鋼株式会社
国立大学法人広島大学


植物のカンキツグリーニング病において
2価鉄供給資材による症状緩和効果を発見

愛知製鋼株式会社(代表取締役社長:藤岡高広)と、国立大学法人広島大学(学長:越智光夫)
の正岡淑邦名誉教授及び同大学大学院生物圏科学研究科の研究グループは、2価鉄供給資材※1の
散布がカンキツグリーニング病※2(以下「CG病」)の症状緩和に高い効果があることを発見・
実証しました。
本成果は学術論文として生命科学を専門とするInternational Journal of Molecular
Sciences(MDPI出版社;本社スイス、バーゼル) に2020年6月4日に掲載されました※3。

CG病はカンキツ類の生産量を大きく減少させる病害として、世界中の熱帯・亜熱帯地域で猛
威を振るっており、感染樹の伐採以外の抜本的な対応策がないため、深刻な問題となっています。

正岡氏及び同大学の研究グループはCG病の感染樹の症状が鉄欠乏の症状に似ていることに
着眼し、愛知製鋼が開発した植物に吸収されやすい2価鉄供給資材を感染したカンキツ樹(ラフ
レモン等)に温室内で散布した結果、症状が緩和することを実証しました。なお、溶液中の
2価鉄の測定は株式会社豊田中央研究所により実施されました。

同グループはCG病に感染した樹は鉄の栄養が行き渡らなくなり、鉄欠乏を起こすと推定しま
した。通常の鉄材(3価鉄)は植物に吸収されにくいものの、2価鉄であれば病気にかかった樹
でも鉄栄養が吸収され、鉄欠乏症状が改善されると考えられます。

今後は、アメリカ、東南アジアなどCG病が蔓延している地域でフィールド実証による効果の
検証を行い、カンキツの安定供給に貢献していきます。

【2価鉄供給資材散布前後の比較(閉鎖系温室での試験の様子)】
【散布前】 【散布後】
(頻度:5日に1回、期間:6ヶ月)









樹全体



※1 植物が2価鉄イオンとして鉄を吸収しやすく加工した鉄溶液資材。
鉄イオンは大気中では通常は3価で存在するが、植物は2価鉄イオンの形に変換してから鉄栄養を植物体内に取り入れる。
※2 細菌によって起こるカンキツ類が発症する病気で、葉が黄化し樹全体に進行すると生育不良となり、
果実の成長も鈍り、枝枯れや株枯れを引き起こす。
※3 論文名「Fe2+ Ions Alleviate the Symptom of Citrus Greening Disease」
出典「International Journal of Molecular Sciences」(MDPI出版社;本社スイス、バーゼル)

お問い合わせ先・・・愛知製鋼株式会社 総務・広報部 広報室:052-603-9216
国立大学法人広島大学 財務・総務室 広報部 広報グループ:082-424-3749

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