くせ毛の整えやすさに、タンパク質の“動きやすさ”が関与していることを発見

News Release
2023 年 12 月 22 日



くせ毛の整えやすさに、タンパク質の“動きやすさ”が関与していることを発⾒

〜 くせ毛を整えやすくするヘアケア成分を特定 〜


美容室向けヘアケア・化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・佐藤龍⼆)は、
椙⼭⼥学園⼤学 上甲恭平名誉教授と協働で、くせ毛は直毛と比較すると毛髪内のタンパク質が動きにくい状態になって
おり、このことがくせ毛の整えにくさに関与していることを明らかにし、以下の学会にて発表しました。また、くせ毛のタンパク質
の動きやすさを向上させ、毛髪の形状を整えやすくする成分を特定しました。


【外部発表】
発表学会︓ 2023 年 繊維学会秋季研究発表会
発表タイトル︓毛髪のガラス転移点測定による毛髪内タンパク質の観察について
発表日︓2023 年 11 月 27 日


【研究の背景】
髪のまとまりは、⾒た目の印象に⼤きな影響を与えます。くせ毛によるうねりが原因で髪がまとまらないことに悩む人は多く、
くせ毛のまとまりにくさを解消するニーズは古くからあります。これまでミルボンでは、くせ毛のまとまりにくさは毛髪内部の水分
分 布 に 起 因 す る こ と に 着 目 し 、 水 分 分 布 を 均 一 に 改 善 す る 成 分 を ⾒ 出 し て き ま し た 20171019_kuse.pdf
(milbon.com) 。 ま た 、 く せ 毛 の ま と ま り に く さ が 日 々 の 美 容 習 慣 の 積 み 重 ね で 徐 々 に 悪 化 す る 現 象 を ⾒ 出 し
(https://www.milbon.com/ja/docs/08bf787c92e8124d5014062a74cd810976885f55.pdf) 、 効 果
的なヘアケア技術を開発してきました。
現在、髪のうねりをまっすぐに整える代表的な美容技術として、ストレートパーマ、ストレートアイロンを用いたセットなどが
知られています。これらは高いストレート効果が得られますが、髪にダメージを生じやすいことが課題です。髪に負担をかけず
にうねりを整える方法としては、洗髪後の濡れた髪を手で整えながらドライヤー乾燥する方法(ハンドブロー)が広く用いら
れています。ハンドブローは日々のお手入れ習慣に取り入れやすく、かつダメージを心配せずにうねり緩和効果が得られます。
しかしその効果は弱く、くせが強い毛髪をハンドブローのみでまっすぐに整えることは、一般的に困難です(図 1)。
今回、「くせが強い毛髪はハンドブローで整えにくい」現象に着目し、その原因と解決策を⾒出すことに着手しました。




図 1 直毛とくせ毛の、ハンドブローによる整えやすさの違い

直毛は洗髪後にハンドブローを⾏うとまっすぐ整うが、くせ毛はまっすぐ整わない




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【研究の成果】
1.くせ毛のタンパク質は、動きにくい状態になっていることを確認
ハンドブローで整えにくい原因を解明するために、毛髪の主な構成成分であるタンパク質に着目しました。毛髪を構成す
るタンパク質は、⻑いひも状のランダムな構造になっています。このひも状のタンパク質は、髪の中で完全に固定されているわ
けではなく、ある程度の“動きやすさ”をもって存在します。直毛とくせ毛では毛髪形状の整えやすさが異なることから、毛髪
内タンパク質の“動きやすさ”が異なる可能性があると考えました。そこで、直毛とくせ毛のタンパク質の動きやすさを調べるた
めに、示差走査熱量測定*1 を⾏いました。その結果、くせ毛は直毛に比べ、タンパク質が動きにくい状態になっていることが
明らかになりました(図 2)。




図 2 直毛とくせ毛の、タンパク質の動きやすさの違い
(A) 緩和エンタルピー量(ΔH)の測定結果 (ΔH が⼤きいほどタンパク質が動きにくい状態であることを示す)

(B) ΔH の結果に基づく、毛髪を構成するタンパク質のイメージ図



2.毛髪のタンパク質の動きやすさを向上させる成分を特定
くせ毛のタンパク質の動きやすさを向上させられると、ハンドブローなどの穏和な条件で毛髪の形状を整えやすくなると考え
ました。そこで、効果的な成分のスクリーニングを⾏った結果、ヘアケア成分 F は、ハンドブローによりくせ毛の形状を整えやす
くする効果を有することを⾒出しました(図 3)。またこのときタンパク質の動きやすさを確認したところ、ヘアケア成分 F の処理
によってくせ毛のタンパク質の動きやすさが向上していることが確認できました(図 4)。




図 3 ヘアケア成分のスクリーニング結果 図 4 タンパク質の動きやすさに対する、成分 F の効果

濡れた毛髪に各成分を処理後、ハンドブローを⾏った。 ヘアケア成分 F を処理したくせ毛は、タンパク質の動きやす

ヘアケア成分 F を処理した毛髪は形状を整えやすくなった。 さが向上していた。



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【今後の展望】
本研究成果をもとに、くせ毛の形状を整えやすくし、まとまりを高めるヘアケア製品の開発を目指します。


《補足》 毛髪タンパク質の動きやすさの測定方法
毛髪には、「水の影響を受けやすいタンパク質」と、「水の
影響を受けにくいタンパク質」がある。毛髪の整えやすさは主
に、「水の影響を受けやすいタンパク質」の動きやすさが関与
している。
「水の影響を受けやすいタンパク質」の動きやすさを確かめ
るため、示差走査熱量測定(図 5)を⾏い、緩和エンタルピー
量(ΔH)を測定した。毛髪においては、緩和エンタルピー量は
「水の影響を受けやすいタンパク質」の“構造における歪み“で
あり、この歪みが⼤きいほどタンパク質同士の相互作用が強く、
動きにくい状態であるとされている。




図 5 示差走査熱量の測定結果例

緩和エンタルピー量(ΔH)は、吸熱ピークの面積値として
求められる。


《用語解説》
*1 示差走査熱量測定
基準物質と測定試料に一定の熱を与えながら、基準物質と試料の温度を測定して、試料の熱物性を温度差として捉え、
試料の状態変化による吸熱反応や発熱反応を測定する手法。


*2 緩和エンタルピー量(ΔH)
分子が動きにくい状態(ガラス状態)から分子運動が活発な状態(ゴム状態)になる際に生じる“歪み”の緩和に必要
なエネルギー量。この値が高いほど、ガラス状態での歪み量が多いことを表している。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社︓東京都中央区、社⻑︓佐藤龍⼆、証券コード︓4919(東証プライム)

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