美容習慣に伴うまつ毛のダメージ現象を解明

2023 年 12 ⽉ 22 ⽇



美容習慣に伴うまつ⽑のダメージ現象を解明
〜内部タンパク質の流出に対し、補修成分の効果を確認〜

美容室向けヘアケア・化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)は、
株式会社コーセー(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・⼩林⼀俊)と共同で、まつ⽑のダメージ現象を捉える研究
に取り組みました。その結果、美容習慣に伴うダメージとして、まつ⽑内部のタンパク質が流出することを⾒出しました。さら
に、そのようなまつ⽑に対する補修成分の効果を確認しました。本研究成果は以下の学会で発表致しました。


【外部発表】
発表学会︓2023 年 繊維学会秋季研究発表会
発表タイトル︓化学的・物理的処理に伴うまつ⽑の特性変化
発表⽇︓2023 年 11 ⽉ 27 ⽇


【研究の背景】
まつ⽑は⽬元の印象を⼤きく左右することから、⻑く、太く⾒せる需要は⾼く、まつ⽑専⽤の美容液等が多く上市されて
います。また、まつ⽑を上向きにカールさせるために、アイラッシュカーラー*1 を⽤いてまつ⽑を物理的に変形させる化粧法が
⼀般化しており、化学的処理*2 によってまつ⽑をカールセットする⼿法も存在します。
これらの⼿法は少なからずまつ⽑に負担をかけることが予想されますが、これまでその影響についての詳細な研究はあまり
⾏われていませんでした。しかしながら、美しく健やかなまつ⽑を保ち、上向きにカールさせたまつ⽑で華やかな⽬元の印象を
楽しみ続けていただくためには、美容習慣に伴って⽣じるまつ⽑のダメージを詳細に捉え、適切なケア⽅法を確⽴する必要
があると考えました。
そこで今回我々は、まつ⽑を上向きにカールさせるための物理的・化学的⼿法が、まつ⽑に与えるダメージについての研
究に着⼿しました。美容室専売メーカーとして⽑髪研究に⻑年取り組むミルボンと、世の中に先駆けた研究開発で新しい
化粧品を⽣み出し続けるコーセー、互いの研究領域の強みを活かすことで、ダメージ現象の解明と、適切なケアを⾏うため
の補修成分の選定に取り組みました。


【研究の成果】
1.物理的・化学的カールによるキューティクルの損傷を確認
物理的・化学的にカールさせる⼿法がまつ⽑に与える影響を調べるため、電⼦顕微鏡での観察を⾏いました。その結果、
繊維形状の変形や表⾯のキューティクル損傷が⾒られ、特に化学的カール履歴あり群ではキューティクル損傷が顕著でした
(図 1)。




図 1 電⼦顕微鏡での典型的な観察像

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2.化学的カール履歴あり群では、まつ⽑のタンパク質が流出していることを確認
電⼦顕微鏡での観察で特に損傷の激しかった化学的カール履歴あり群のまつ⽑では、表⾯のキューティクルだけでなく、
まつ⽑内部にまで影響を⽣じているのではないかと考えました。
まつ⽑は頭髪と同様、そのほとんどがタンパク質で構成されています。頭髪においては、化学的カール処理によるダメージ
でタンパク質同⼠の結合が切れ、その後⽇々の洗浄によってタンパク質が髪の外に流出してしまうことが知られています。タ
ンパク質の流出は、⽑髪繊維の強度低下を招き、髪の弾⼒やハリコシが失われることにつながります。
今回、まつ⽑内部のタンパク質の状態を顕微 FT-IR 法*3 によって調べたところ、化学的カール履歴あり群のまつ⽑では
タンパク質量が少なくなっていることがわかり、タンパク質がまつ⽑の外に流出していることが⽰されました。またその結果につい
て、⼤型放射光施設 SPring-8*4 の BL43IR*5 を⽤いた詳細な可視化を⾏うことでも確認しました(図 2)。




図 2 カール履歴なし群と化学的カール履歴あり群のまつ⽑内部のタンパク質分布
タンパク質のアミド結合*6 に由来するピークの強度を解析した結果、化学的処理による流出が⽰された。


3.まつ⽑に対する補修成分の効果を確認
内部タンパク質の流出に対応するため、補修成分の検討を⾏いました。化学的処理と洗浄処理を⾏ったダメージまつ⽑
に対し、タンパク質の材料であるアミノ酸から作られ浸透性に優れた成分ジラウロイルグルタミン酸リシン Na を 1,3-ブチレン
グリコールと共に作⽤させたところ、成分がまつ⽑の内部にまで浸透したことを⽰す結果が得られました(図 3)。




図 3 ダメージまつ⽑に対して補修成分を作⽤させた結果
補修成分を作⽤させたまつ⽑ではアミド結合に由来するピークの強度が向上しており、
アミド結合を有するジラウロイルグルタミン酸リシン Na 等の成分がまつ⽑内部に浸透していることが⽰された。


【今後の展望】
まつ⽑を上向きにカールさせる際のダメージを補修し、⻑さや太さだけでなく、理想のまつ⽑デザインを楽しみ続けられる製
品の開発につなげてまいります。


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《⽤語解説》
*1 アイラッシュカーラー
まつ⽑を挟み、物理的に変形させる専⽤の器具のこと。


*2 化学的処理
専⽤のクリームを⽤いてまつ⽑をカールセットする⼿法。⼀般にまつ⽑パーマやまつ⽑カールなどと呼称される。なお、⽇本で
は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づき、医薬部外品のパーマネ
ント・ウェーブ⽤剤や化粧品の洗い流すヘアセット料として販売されている商品を頭髪以外の部位に⽤いることは認められて
いない。


*3 顕微 FT-IR 法
顕微 FT-IR 法とは、顕微フーリエ変換⾚外分光(Fourier Transform-Infrared Spectroscopy)法のことで、化合
物の構造推定を⾏う分析⼿法である。微⼩領域の分析において有⽤であり、各種⼯業製品の品質管理や科学捜査、
⽣物医学領域など、様々な分野において活⽤されている。


*4 ⼤型放射光施設 SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最⾼性能の放射光を⽣み出すことができる理化学研究所の施設。SPring-8
の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電⼦ボルト) に由来。放射光とは、電⼦を光とほぼ等しい速度まで加
速し、電磁⽯によって進⾏⽅向を曲げた時に発⽣する強⼒な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を⽤いてナノテ
クノロジー・バイオテクノロジー・産業利⽤まで幅広い研究が⾏われている。
SPring-8 ホームページを参照(http://www.spring8.or.jp/ja/)


*5 BL43IR
SPring-8 において、放射光を⽤いて実験を⾏うための設備を「ビームライン」(以下 BL)と呼ぶ。BL43IR は BL のうち
のひとつであり、 ⾼輝度な⾚外光によって、⼀般的な顕微 FT-IR では達成できない微⼩領域・微⼩試料の測定・解析
を可能としている。本研究の⼀部は、(公財)⾼輝度科学研究センターの産業利⽤⼀般課題 2023A1463 として、本
BL を⽤いて⾏われた成果である。


*6 アミド結合
タンパク質は多数のアミノ酸が結合してつながることで構成されており、アミノ酸同⼠をつなぐ結合をアミド結合という。




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株式会社コーセー/本社︓東京都中央区、社⻑︓⼩林⼀俊、証券コード︓4922(東証プライム)


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