毛髪のしなやかさは、根元付近から失われ始めることを発見

News Release


2023 年 2 ⽉ 1 ⽇



⽑髪のしなやかさは、根元付近から失われ始めることを発⾒

〜根元付近から始まる⽑髪内部のミクロ構造ダメージを SPring-8 にて解明〜

美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)と、
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社(本社︓東京都品川区 社⻑・松下理⼀)は、公⽴⼤学法⼈ ⼭陽⼩野
⽥市⽴⼭⼝東京理科⼤学 佐伯政俊講師との協働により、根元から⽑先にかけてのミクロ構造の変化を解明し、⽑先で
顕著になるダメージ現象は根元付近から始まっていることを⾒出しました。なお、本研究の成果は、以下の研究会にて報
告しました。


【外部発表】
発表場所︓公⽴⼤学法⼈ ⼭陽⼩野⽥市⽴⼭⼝東京理科⼤学 第 277 回コロキウム
発表タイトル︓⼤型放射光施設(SPring-8)を活⽤した頭髪⽤化粧品の開発 〜⽑髪のミクロ構造の解析〜
発表⽇︓2023 年 1 ⽉ 31 ⽇


【研究の背景】
⽑髪はヘアカラー、ヘアアイロンなどの美容施術や紫外線によってダメージを受け、⼿触りや⾒た⽬が悪くなります。特に
⽣え始めてから⽉⽇の経った⽑先に近い部分はダメージが蓄積し、⼿触りや⾒た⽬が悪化した状態になっています。そのた
め、ダメージに対するケア技術の研究は、主に⽑先部分を想定して⾏われてきました。本研究では、ダメージ現象が進⾏す
る前の初期段階から継続してケアすることができればより根本的なケアにつながると考え、根元から⽑先にかけての変化を
調べることでダメージ現象の初期症状の解明に取り組みました。


【研究の成果】
1. 根元付近から、しなやかさの指標となる⽑髪強度の低下が始まることを確認
根元から⽑先にかけての⽑髪の変化を調べるため、根元から採取した⽑髪を 4 分割しました(図 1a)。それぞれの部
位についてしなやかさの指標となる⽑髪強度を調べたところ、根元付近(10 cm〜)から低下し始め、⽑先にかけて進⾏
することが分かりました(図 1b)。このことから、⽑先で顕著になるダメージ現象は、すでに根元付近から始まっていることが
わかりました。




図1
(a)根元から⽑先までの 4 分割 (b)根元から⽑先にかけての⽑髪強度の変化(N=29)

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2. 根元付近から、⽑髪内部のミクロ構造のダメージが始まることを確認
根元から⽑先にかけての⽑髪内部のミクロ構造の変化を調べるため、⽑髪強度に関わるとされる⽑髪組織のミクロフィブ
リル*1(図 2a)の状態を⼤型放射光施設 SPring-8 *2
のマイクロビーム-⼩⾓ X 線散乱法(µ-SAXS)*3 で調べ
ました。その結果、ミクロフィブリルが根元付近からダメージし始めていることを発⾒しました(図 2b)。さらにその原因を探る
ため、ミクロフィブリルを構成するタンパク質の状態を SPring-8 の⾚外分光法*4 で調べたところ、根元付近からタンパク質
構造の崩れが始まっていることがわかりました(図 2c)。
これらの結果から、根元付近から始まっている⽑髪強度の低下は、「ミクロフィブリルを構成するタンパク質の構造が崩れ
てしまい、ミクロフィブリルにダメージを⽣じるため」であることがわかりました。




図2
(a)⽑髪の内部構造 (b)根元から⽑先にかけての、ミクロフィブリルダメージの変化(N=34)
(c)根元から⽑先にかけての、ミクロフィブリルを構成するタンパク質(-ヘリックス)の分布変化




【今後の展望】
本研究成果をもとに、ダメージの初期症状として根元付近から始まり、⽑先にかけて悪化する⽑髪内部のミクロ構造の
変化をケアすることで、美しくしなやかな状態を維持できる⾼効果ヘアケア製品に応⽤します。




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《⽤語解説》
*1 ミクロフィブリル
⽑髪コルテックスのミクロ構造を形作る組織のひとつ。コルテックスはマクロフィブリルという構造の集合体で構成されており、マ
クロフィブリルは結晶性のミクロフィブリルと⾮晶性のマトリックスによって構成されている。


*2 ⼤型放射光施設 SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最⾼性能の放射光を⽣み出すことができる理化学研究所の施設。SPring-8
の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電⼦ボルト) に由来。放射光とは、電⼦を光とほぼ等しい速度まで加速
し、電磁⽯によって進⾏⽅向を曲げた時に発⽣する強⼒な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を⽤いてナノテクノ
ロジー・バイオテクノロジー・産業利⽤まで幅広い研究が⾏われている。
SPring-8 ホームページを参照(http://www.spring8.or.jp/ja/)


*3 マイクロビーム-⼩⾓ X 線散乱法(μ-SAXS)
物体に照射した X 線はその物体内で様々な⽅向に散乱する。このうち散乱⾓が数度以下の X 線を測定することにより、
数 nm〜数⼗ nm の構造情報を得る⼿法が⼩⾓ X 線散乱法である。⽤いる光源ビームの太さが数 μm 前後の場
合を特にマイクロビーム-⼩⾓ X 線散乱法という。


*4 ⾚外分光法
可視光よりも波⻑の⻑い⾚外領域の光を物体に透過あるいは反射させ、対象物の組成や化学構造、分⼦結合の状態
に関する情報を得る測定⽅法。




■リリースに関するお問い合わせ先


株式会社ミルボン 広報室
東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211




パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 経営企画センター 経営企画部 広報課
東京都品川区東品川 1 丁⽬ 39 番 9 号 カナルサイドビル 8F e-Mail︓las-pr@gg.jp.panasonic.com




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