オイル高配合ナノエマルション製剤を開発

News Release
2022 年 9 月 29 日



オイル高配合ナノエマルション製剤を開発
~乳化粒子の微細化により毛髪への浸透性を高めることに成功~

美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社:東京都中央区 代表取締役社長・佐藤龍二)は、オイル
成分を高配合した水系のリキッド状ナノエマルション*1 製剤を開発しました。得られた直径約 50 nm のナノエマルション製
剤は、同一成分で作成した直径約 200 nm のエマルション製剤と比較して、配合したオイル成分の毛髪内部への浸透性
および毛髪の柔軟効果が向上することを確認しました。本研究成果について、以下の学会で発表を行いました。


【外部発表】
発表学会:第 73 回 コロイドおよび界面化学討論会
発表タイトル:油溶性成分の髪への浸透を高める低エネルギーナノエマルションの開発
発表日:2022 年 9 月 22 日


【研究の背景】
近年の美容意識の高まりを受け、ヘアケアの方法は多様化しています。その中で、水系リキッド製剤のトリートメントは、
軽くサラサラした質感を叶えやすく、ミスト状に噴霧することも可能で毛髪全体に均一に行き渡らせることができるなど、一般
的なクリーム状・オイル状のトリートメントとは異なるメリットがあります。しかし、水系リキッド製剤は水のように粘度が低いこと
もあり、ヘアケア効果が期待されるオイル成分を安定に高配合しにくい課題がありました。
そのような課題を解決する手段の一つとして、オイル成分を水中に微細に乳化(ナノエマルション化)する技術がありま
す。スキンケアの領域ではナノエマルション製剤の皮膚への浸透性に関する研究事例が報告され、活用されているのに対し、
ヘアケア化粧品においてナノエマルション製剤の毛髪への浸透性に関する研究事例は少なく、更なる進展が望まれます。加
えて、ナノエマルション製剤の製造過程では高い温度や撹拌機による強い機械力が必要とされることが多く、SDGs 達成の
ためにもできるだけ省エネルギーの製法でナノエマルション化を達成する製剤化技術が求められます。
そこで本研究では比較的穏和な条件で、オイル高配合の水系のリキッド状ナノエマルション製剤を製造する製剤化技術
を開発するとともに、得られた製剤の毛髪に対する浸透性や毛髪への影響を評価しました。


【研究の成果】
1. オイル高配合のナノエマルションを製造する製剤化技術を確立
本研究では 60℃という比較的穏和な加熱条件下で緩やかに混ぜるだけの環境負荷が低い製法を用い、オイル高配
合のナノエマルション製剤を得ることを目標に、界面活性剤の選定を行いました。種々の界面活性剤でスクリーニングを行っ
たところ、分子内に疎水基を複数もつ界面活性剤に乳化粒子を微細化する能力が高いことを見出しました。さらに、一度
微細化した乳化粒子が大きくならず、安定に存在できるよう、乳化粒子内にオイル成分が保持されることを狙って分子構
造がかさ高い界面活性剤を組み合わせました。その結果、界面活性剤量の約 2 倍ものオイル成分を内包する安定なナノ
エマルション製剤を得ることに成功しました(図 1) 。
本技術によって得られたナノエマルション製剤の乳化粒子径は約 50 nm であり、平均的な毛髪直径(約 90 µm)の
約 1800 分の 1 の大きさです(図 2)。本技術によって、粘度の低い水系リキッド製剤中に、ダメージケアやまとまり感の
向上などに効果的なオイル成分を安定的に高配合することが可能になりました。

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図 1 得られたナノエマルション製剤の外観
図 2 ナノエマルション製剤の乳化粒子径
直径約 50 nm の製剤(左)は乳化粒子径が小さく光を
透過するが、直径約 200 nm の製剤(右)は不透明。 平均的な毛髪直径の約 1800 分の 1 の大きさ




2. ナノエマルション製剤は毛髪への浸透性が高く、柔軟効果が向上することを確認
本技術によって得られたナノエマルション製剤について、オイル成分の毛髪内部への浸透性を確認しました。油溶性で赤
色の蛍光色素を目的のオイル成分に見立て、毛髪断面を蛍光顕微鏡で観察することで浸透性を評価したところ、乳化
粒子の直径が約 50 nm のナノエマルション製剤では、同一成分で作成した直径約 200 nm のエマルション製剤と比較し
て、オイル成分がより毛髪内部まで浸透することが確認できました(図 3a)。また、カラーダメージによって硬くなった髪に、
それぞれの製剤を作用させたところ、ナノエマルション製剤の方が、毛髪を柔軟にする効果が高いことが分かりました(図
3b)。




(a)毛髪への浸透性 (b)毛髪の柔軟化効果

図 3 乳化粒子径による髪への浸透性と効果の違い



【今後の展望】
本研究により、様々な美髪効果が期待されるオイル成分を水系リキッド製剤の中に安定に高配合することが可能になり
ました。この技術を活用し、毛髪全体への簡便な均一塗布を可能で、高浸透・高効果なヘアケア製品の開発を目指しま
す。

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《用語解説》
*1 エマルション
水と油のように互いに混ざり合わず二層に分離する液体の系において、一方が小さな液滴(乳化粒子)となって他方に
分散している状態をエマルションという。エマルションを得るためには、界面活性剤などを添加して液体間の界面張力を下げ、
一度分散した乳化粒子同士が合一する作用を抑える必要がある。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本店:大阪市都島区、社長:佐藤龍二、証券コード:4919(東証プライム)




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