HSP法を用いて、眼刺激性に関する動物代替試験の結果を予測するシステムを構築

News Release
2022 年 3 月 31 日


HSP 法を用いて、眼刺激性に関する動物代替試験の
結果を予測するシステムを構築
~迅速かつ高精度な化粧品の安全性評価を実現~
美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社:東京都中央区 代表取締役社長・佐藤龍二)は、関西
大学 山本秀樹教授と協働で、化粧品の安全性項目の 1 つである眼刺激性に関する動物代替試験に対して Hansen
溶解度パラメータ法(HSP 法*1)を用いたコンピュータ計算による予測システムを新たに構築しました。眼刺激性を簡便に予
測できるシステムとしてこの知見を活用し、より迅速に安全性の高い製品開発に繋げていく予定です。なお、本研究成果
は以下の学術誌に掲載されました。


【掲載誌】
「Len I. et al., Predictive Study of Eye Irritation Results Obtained from the STE Method Using
Hansen Solubility Parameters, J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn, 56(1): 53-59」


【研究の概要】
動物愛護の観点から化粧品開発において動物実験を行わない事は今や世界的な潮流となっており、ミルボンもこの考え
に賛同しています。こうした中、化粧品の安全性を確認する際、動物の代わりに、人工的に培養した細胞などを用いた動
物代替試験(in vitro*2)を行うことが主流となっています(図 1A)。
更に経済産業省が策定した『in silico 評価に関する開発ガイドライン2019』には、「動物実験(in vivo*3)および
動物代替試験(in vitro)のみでは技術的・倫理的・経済的などあらゆる観点で課題が生じ、開発が滞る。しかしコンピュ
ータによる予測計算(in silico*4)で相互補完できれば、開発を迅速化できる。」との考え方が示されています(図 1B)。


in silico 評価に関する開発ガイドライン 2019(手引き)
経済産業省/国立研究開発法人日本医療研究開発機構
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/heal
thcare/iryou/downloadfiles/pdf/39_guideline.pdf
を加工して作成 (図 1A, B)




図 1A, B 動物代替試験(in vitro)、動物実験(in vivo)、およびコンピュータ計算(in silico)による相互補完の関係性


この考え方に基づきミルボンでは、関西大学山本秀樹教授との協働により HSP 法を用いたコンピュータ計算による化粧
品の安全性予測システム構築のための研究を進めていました。その取り組みの中で、眼刺激性に関する動物実験の結果
をコンピュータ計算によって予測できるシステムを構築したことを報告しています(図 1B の緑丸部分に相当)。
https://www.milbon.co.jp/files/pdf/news/2021/01/20210125143504_1.pdf


動物実験だけでなく動物代替試験についてもコンピュータ計算ができると、より精度高い眼刺激性予測システムの構築
につながると考え研究を進めていました(図 1B の赤丸部分に相当)。今回新たに、現在広く用いられている動物代替試験
の1種である「STE 試験*5」について HSP 法を用いた予測計算システムの構築に取り組みました。

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その結果、91.7%の精度で化粧品原料を含む様々な物質の眼刺激性を計算予測できるシステムを構築しました。ミ
ルボンが構築した HSP 法を用いたコンピュータ計算による予測システムは、眼刺激性を評価する動物実験および動物代
替試験の精度と比較しても遜色ない結果となっています。
この研究成果は、動物代替試験を補完するシステムとして活用することができ、迅速に安全な製品開発につながると考
えられます。


【今後の展望】
安全な化粧品開発のためには、眼刺激性だけではなく、皮膚刺激性やアレルギーのリスクなど様々な試験を行うことが大
切です。ミルボンでは安全な製品をより迅速に開発するために、今後も様々な安全性試験を高精度に補完できるコンピュ
ータ計算予測システムの研究に取り組みます。


《用語解説》
*1 Hansen溶解度パラメータ法:HSP法(Hansen Solubility Parameter法)ともいう。物質同士が互いに溶け合う
場合はその性質は似ており、溶けにくい場合は性質が異なるということを利用した物質の評価方法。


*2 in vitro:試験管内評価、ここでは生物由来の細胞や組織を用いた試験を意味する。


*3 in vivo:生体内評価、ここでは生物に対する試験を意味する。


*4 in silico:コンピュータ計算による評価を意味する。


*5 STE試験:Short Time Exposure試験。眼刺激性に関する動物試験代替法の一種。試験管内で培養された、
ウサギ角膜の細胞に対する、化学物質の細胞毒性を指標とする。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本店:大阪市都島区、社長:佐藤龍二、証券コード:4919(東証1部)



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