大気中の微粒子が毛髪表面へ悪影響を与えるメカニズムを解明

News Release
2021 年 10 ⽉ 15 ⽇

⼤気中の微粒⼦が⽑髪表⾯へ悪影響を与えるメカニズムを解明

〜キューティクルタンパク質の酸化による⽑髪表⾯の強度低下を確認〜


美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)は、⼤
気中の微粒⼦が⽑髪キューティクルのタンパク質を酸化させることを確認しました。また、それによって⽑髪表⾯の強度が
低下し損傷しやすくなることを⾒出しました。今後、微粒⼦の悪影響から⽑髪を守る⾼機能ヘアケア製品の開発を⽬指
します。本研究成果は以下の学会にて報告致しました。


【外部発表】
発表学会 ︓第 18 回 SPring-8 産業利⽤報告会
発表⽇ ︓2021 年 9 ⽉ 2 ⽇


【研究の背景】
私たちが⽣活する⼤気中には、⽬に⾒えないほど⼩さい微粒⼦が浮遊し、⽇常⽣活の中で⽑髪へ付着しています
(図 1)。⼤気中の微粒⼦の中には、排気ガスや⼯場排煙などから⽣じる窒素酸化物(NOx)や硫⻩酸化物(SOx)、⾦
属といった化学物質が含まれます。これらの成分は、周囲のものを酸化させるように働きます。このような微粒⼦が体内に
取り込まれたり肌に付着したりすることによる健康上の影響について、様々な研究が進められています。しかし、⽑髪へ与
える影響に関しては、解明が充分に進んでいませんでした。
⽑髪の最表⾯はキューティクルによって覆われており、⼿触りやバリア機能に関わっています。⽑髪は酸化が進⾏すると、
パサつきやまとまりの悪さなど、様々な変化を引き起こします。⼤気中の微粒⼦はキューティクルに付着し、さらに紫外線
などの光を浴びることで、酸化反応を促進していると考えられます。そこでミルボンでは、⼤気中の微粒⼦がキューティクル
へ与える影響について研究しました。




図 1 ⽑髪に⼤気中の微粒⼦が付着している様⼦



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【研究の成果】
1. ⼤気中の微粒⼦による、キューティクルタンパク質の酸化を確認
⼤気中の微粒⼦によってキューティクルタンパク質が受けた酸化の程度について、⼤型放射光施設 SPring-8*1 の
顕微 FT-IR 法*2 を⽤いて測定しました。
微粒⼦の⽑髪への付着は、⽇常⽣活では主に屋外で過ごす際に⽣じます。屋外環境を想定し、都市⼤気粉塵*3
を⽑髪へ付着させた後に光照射処理を施した試料を測定した結果、⼤気粉塵の付着処理を経た⽑髪のキューティクル
タンパク質において、酸化が進⾏している事が明らかになりました(図 2)。




図 2 キューティクルタンパク質の酸化部位をイメージング
A)都市⼤気粉塵の付着処理の無い⽑髪 と⽐較して B) 都市⼤気粉塵の付着処理を経た⽑髪は
キューティクルタンパク質の酸化が進⾏している




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2. ⼤気中の微粒⼦による、キューティクルの⼒学物性の変化を確認
⽑髪表⾯を精密に分析することが出来る原⼦間⼒顕微鏡(AFM)を⽤いてキューティクルを調べたところ、都市⼤気
粉塵によってキューティクルタンパク質の酸化が進⾏した⽑髪は、その強度が低下し(図 3)、コーミングによる摩擦などの物
理的な刺激によって⽑髪表⾯が損傷しやすい状態になることが分かりました(図 4)。




図 3 都市⼤気粉塵の付着処理の有無による、⽑髪表⾯のヤング率(弾性率)の変化




図 4 ヘアブラシによるコーミング処理後の、⽑髪キューティクルの顕微鏡写真
A)都市⼤気粉塵の付着処理の無い⽑髪 と⽐較して B) 都市⼤気粉塵の付着処理を経た⽑髪は
⽑髪表⾯が損傷しやすくなっている




【今後の展望】
⼤気中の微粒⼦によって⽑髪表⾯が損傷しやすくなることを、そのメカニズムとともに解明しました。今後は微粒⼦の悪
影響から⽑髪を守る⾼機能ヘアケア製品の開発を⽬指し、研究を進めてまいります。




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《⽤語解説》
*1 ⼤型放射光施設 SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最⾼性能の放射光を⽣み出すことができる理化学研究所の施設(同クラスの
ものはアメリカとヨーロッパ、世界で 3 台のみ)。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電⼦ボルト)
に由来。放射光とは、電⼦を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁⽯によって進⾏⽅向を曲げた時に発⽣する強⼒な
電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を⽤いてナノテクノロジー・バイオテクノロジー・産業利⽤まで幅広い研究が
⾏われている。
Spring-8 ホームページを参考 (http://www.spring8.or.jp/ja/)


*2 顕微 FT-IR 法
顕微 FT-IR 法とは、顕微フーリエ変換⾚外分光(Fourier Transform-Infrared Spectroscopy)法のことで、化
合物の構造推定を⾏う分析⼿法である。微⼩領域の分析において有⽤であり、各種⼯業製品の品質管理や科学捜
査、⽣物医学領域など、様々な分野において活⽤されている。


*3 都市⼤気粉塵
本研究に⽤いた都市⼤気粉塵は、実際に都市で回収されたものです。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社︓東京都中央区、社⻑︓佐藤⿓⼆、証券コード︓4919(東証1部)

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