X線CTスキャンによる毛髪の高精度観察に成功

2021 年 2 月 2 日 News Release

X線 CT スキャンによる毛髪の高精度観察に成功

~高効果ダメージケア製品開発への期待~
株式会社ミルボン(代表取締役社長・佐藤 龍二)は、大型放射光施設 SPring-8※1 の利用により、X 線 CT スキャン
による非破壊での毛髪の高精度観察に成功しました。これにより毛髪内部を従来に比べて詳細に観察できました。その結果、
毛髪内に効果的に充填されるケア成分の探索などが可能となり、効果的なダメージ対応のヘアケア製品の開発が期待されま
す。本研究は第 34 回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(2021 年 1 月 8 日~10 日開催)にて発
表しました。


【本技術のポイント】
ミルボンでは過去に SPring-8 を用いて毛髪の X 線 CT スキャンによる3D 撮影に成功し、ヘアカラーなどによって毛髪の
内部におこるダメージ現象として「棒状空洞化」現象を発見していました。
(https://www.milbon.co.jp/ir/upload_file/m000-/20160427_rodshaped-hollowing.pdf)
その後も技術開発を推進した結果、今回X線 CT スキャン技術の精度を大きく向上させる観察手法の確立に成功しまし
た。この技術で毛髪内部を詳細に観察したところ、従来技術では毛髪内の比較的大きな空洞(下図:黄色部分)だけしか
見えませんでしたが、本技術によって微細な空洞(下図:ピンク色部分)までも確認することができました。
(注)観察時期及び測定毛髪は異なる




(従来技術による毛髪の観察結果) (新技術による毛髪の観察結果)
今回、確立した手法を用いて観察した結果微細な空洞は毛髪繊維に沿って直線状に並んで存在することが新たにわかりま
した。このことから、直線状に並んだ微細空洞がダメージの進行に伴って連結して大きな棒状空洞になることが示唆されました。
(下図:青丸部分)




【今後の展望】
本技術によって、毛髪内部におけるダメージ箇所やその進行過程が高度に解明されると、その部分を補修する成分だけでな
く、保護して損傷しにくくする成分などの探索が可能となり、より高機能なヘアケア製品の開発が期待されます。


【補足①:なぜの高精度観察が可能になったのか】
太さ 0.1 ㎜程度である毛髪を X 線 CT スキャン法で観察する際に、従来法では X 線の照射によって毛髪サンプルがわず
かに動いてブレてしまうため、観察する精度に限界がありました。今回、特定の樹脂を用いて毛髪を包埋することで、安定して
毛髪を観察でき、測定精度を大きく向上できました。また、照射した X 線の散乱が抑えられて、表面付近から発生するノイズ
を抑えられたことも精度向上に寄与しています。




【補足⓶:棒状空洞化現象の進行の仕組み】
今回の精度向上によって、①微細な空洞(ピンク色部分)は直線状に複数並んで発生する、②微細な空洞と大きい空
洞(黄色部分)は直線状に存在するという2点が確認されました。これによって、微細な空洞が連結して大きな棒状の空洞
になっていくという、空洞の成長過程が示唆されました。これは毛髪の繊維方向、つまり毛髪が成長していく方向に伴っており、
毛髪内の特定の部位が損傷を受けやすいことも示唆される結果となっています。





[注記]
※1 大型放射光施設 SPring-8
播磨科学公園都市(兵庫県)にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設(同クラスのものはアメリカ
とヨーロッパ、世界で 3 台しかない)。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電子ボルト)に由来。
放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波
のこと。SPring-8 では、この放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテクノロジー・産業利用まで幅広い研究が行われ
ている。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社:東京都中央区、社長:佐藤龍二、証券コード:4919(東証1部)





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