ヘアカラー直後の美しい状態を分子レベルで形状記憶する技術を開発

2020 年 11 ⽉ 20 ⽇ News Release
ヘアカラー直後の美しい状態を分⼦レベルで形状記憶する技術を開発

〜植物成分を利⽤した⽑髪タンパク質の架橋〜


株式会社ミルボン(代表取締役︓佐藤龍⼆)は、ヘアカラー直後に施術すると、タンパク質分⼦レベルで⽑髪を形
状記憶させて、その状態を保持できるヘアケア技術を新たに開発しました。この技術は植物性フェノール化合物※1を利
⽤して、⽑髪のタンパク質分⼦同⼠を半永久的に結合させることによるものです。
本研究は地⽅独⽴⾏政法⼈ ⼤阪産業技術研究所※2 の協⼒の元で推進され、本研究成果は⽇本繊維機械学
会研究発表会(2020 年 11 ⽉ 10 ⽇開催)にて発表しました。
本技術は両者によって共同で特許出願済みであり、来春全国発売の予定のヘアケア製品から応⽤していきます。


【本技術のポイント】
⽑髪は約 85%がケラチンと呼ばれるタンパク質で構成されています。美容室などでヘアカラーを⾏うと、施術直後の⽑
髪はとても艶やかで、形状も整った美しい状態になります。しかし、その後に洗髪を繰り返すと徐々に⽑髪の形状が歪に
なり、最終的には切れ⽑や枝⽑につながります。これは洗髪を繰り返すたびに⽑髪から、ヘアカラー施術に伴って損傷した
ケラチンが流出することが原因でした。
⽑髪は死んだ細胞のため、損傷したケラチンを修復することは困難です。その為、従来のヘアケアでは⽑髪に補修成
分を処理して⼀時的に⾒た目の美しさや⼿触りを改善する⼿法が主流でした。しかし、それではケラチンの流出を根本
的に防ぐことができない為に⼤きな課題となっていました。
そこで、ミルボンは⾷品分野で開発されていたフェノール化合物によってゼラチンタンパク質を結合させて硬度を向上す
る技術に着目し、ケラチンの修復に応⽤する研究に取り組みました。化粧品分野で実績があり、抗酸化作⽤から⽣体に
有⽤であるポリフェノールなどの植物性フェノール化合物を約 50 種類検討したところ、ムラサキバレンギク※3 という植物に
含まれるチコリ酸で最も⾼い効果が⾒られました。チコリ酸を銅イオンによって活性化させて、ヘアカラー直後の⽑髪に処
理すると損傷したケラチン同⼠に橋が架かるように結合(架橋)し、分⼦量が⼤きくなります。その結果、その後の洗髪
時などにおけるタンパク質の流出を防ぐことが可能となり、ヘアカラー直後の美しい状態を維持できるようになりました。




【今後の展望】
来春全国発売のヘアカラー対応のヘアケア製品をはじめとして、この技術をミルボンでは順次応⽤していきます。

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【補⾜➀︓なぜ植物フェノール化合物と銅イオンによってタンパク質が架橋できたのか】
昆⾍が⽻化する際に、柔らかい表⽪が硬くなります。この現象はキノン硬化と呼ばれ、タンパク質同⼠が結合して架橋
するために起こります。この反応にはフェノール化合物とその活性化成分として酵素が関与していることが⽣物研究で明ら
かになっています。⾷品分野ではこの現象を応⽤し、酵素の代わりに銅イオンを⽤いた⽅法でゼラチンタンパク質の硬さを
向上させる技術がすでに開発されています。ミルボンはこの技術をダメージした⽑髪の修復に応⽤しようと考えました。
タンパク質同⼠が結合すると分⼦量が⼤きくなります。そこでケラチンの⽔溶液を⽤いたモデル実験にて、タンパク質の
分⼦量が⼤きくなる成分を SDS-PAGE 測定※4を⽤いて探索しました。その結果、ケラチン⽔溶液にチコリ酸及び銅ク
ロロフィリン※5 を処理した場合と、ムラサキバレンギクエキス及び銅クロロフィリンを処理した場合には、約 40kDa※6 付近
の⾊が薄くなっていることが確認されました。(図1)
また、ケラチンの⽔溶液は透明ですが、これらの処理によって溶液が着⾊する事も目視で確認されました。(図2)
これらの結果より、約 40KDa のサイズのケラチンが架橋されて⾼分⼦量になり、その⼤部分が沈殿してケラチン溶液が
着⾊されたと考えられます。



➁ ➂ ④




図 2︓各溶液の外観写真



②は透明だが、③④は、着⾊している




※➀︓分⼦量マーカー※7
➁︓ケラチン
➂︓チコリ酸及び銅クロロフィリン処理したケラチン
図 1︓ケラチンタンパク質の SDS-PAGE 測定結果
④︓ムラサキバレンギクエキスと銅クロロフィリン処理したケラチン


40kDa 付近の⾊が、②に⽐べて③④では薄く
なっている。




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【補⾜➁︓⼈⽑での検証結果】
1.⽑髪の強度が向上
本技術の効果が実際に⼈⽑でもあることを確認するために、ダメージ処理⽑にムラサキバレンギクエキスと銅クロロフィリ
ンを処理して、引張試験にて強度を測定しました。その結果、ムラサキバレンギクエキスの濃度とともに、強度が有意に増
加しました。(図3)




図 3︓⽑髪の引張強度試験結果


2.⽑髪ダメージ部位の修復を確認
⽑髪のダメージ部位に反応する蛍光⾊素で染⾊して、⽑髪の断⾯観察を⾏いました。ダメージしていない未処理⽑
の断⾯は、ほとんど蛍光しませんでした。ダメージ処理⽑は強く蛍光しましたが、ダメージ⽑にムラサキバレンギクエキスと銅
クロロフィリンを処理すると、蛍光強度が弱まり、損傷部位が修復されていることが確認できました。(図 4)




未処理⽑ ダメージ処理⽑ 処理⽑

図4︓⽑髪断⾯の蛍光観察結果


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[注記]
※1 フェノール化合物
フェノール化合物とはベンゼン環に⽔酸基(-OH)を持つ物質の総称です。分⼦内に複数の⽔酸基を持つものは
多価フェノールと呼ばれます。


※2 ⼤阪産業技術総合研究所
産業技術に関する試験、研究その他の⽀援を⾏うとともに、これらの成果の普及及び実⽤化を促進することにより、
産業技術とものづくりを⽀える知と技術の⽀援拠点として、経済及び産業の発展並びに住⺠⽣活の向上に寄与するこ
とを目的とした地⽅独⽴⾏政法⼈です。


※3 ムラサキバレンギク
キク科ムラサキバレンギク属の多年草。属名のラテン名でエキナセアまたはエキナケアとも呼ばれる。




※4 SDS-PAGE 測定
タンパク質を分⼦量ごとに分離するタンパク質の分析法。


※5 銅クロロフィリン
葉緑素であるクロロフィルを出発原料とした化合物。⾷品や医薬品の着⾊料としても⽤いられる。


※6 Da
分⼦の⼤きさ表す単位「ダルトン」で分⼦質量を意味する。「40kDa」は「4 万 Da」を表している。


※7 分⼦量マーカー
分⼦量が既知のタンパク質の混合物で、タンパク質の相対的な分⼦の⼤きさの評価に使⽤します


■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社︓東京都中央区、社⻑︓佐藤龍⼆、証券コード︓4919(東証1部)
(地独)⼤阪産業技術研究所 森之宮センター 企画部

⼤阪府⼤阪市城東区森之宮 1-6-50 TEL 06-6963-8331 FAX 06-6963-8015




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