毛髪のタンパク質構造に近似した新たなケラチン原料を開発

News Release
2022 年 11 ⽉ 10 ⽇



⽑髪のタンパク質構造に近似した新たなケラチン原料を開発
〜2 種のケラチンを共存させることで補修効果を⾼めた新 CMADK〜

美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社︓東京都中央区 代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)は、
KRA ⽺⽑研究所所⻑ 新井幸三博⼠との協働で、⾼い補修効果を持つ、⽑髪のタンパク質構造に近似した新たなケラ
チン原料の開発に成功しました。この開発に際し公⽴⼤学法⼈ ⼭陽⼩野⽥市⽴⼭⼝東京理科⼤学 佐伯政俊講師
との協働で、⽔溶液中において 2 種のケラチンが共存することがタンパク質の構造形成に強く関与することを解明しました。
本研究成果は以下の学会で報告致しました。


【外部発表】
発表学会︓第 59 回ペプチド討論会
発表タイトル︓ Effects of Hair Derived Type I and Type II Keratin Synergically Increasing the
Secondary Structure
発表⽇︓2022 年 10 ⽉ 27 ⽇


【研究背景】
⽑髪は約 85%がケラチンタンパク質で構成されており、ヘアカラーなどの美容施術によって損傷を受けると、⽑髪強度が
低下するなどダメージ現象が⽣じます。このような⽑髪ダメージに対して⼀般的には、⽺⽑などから分解・抽出したタンパク
質が補修成分として活⽤されています。ミルボンでは、⽑髪をより効果的にケアするためには、“⽑髪が本来有するタンパク
質構造”をできる限り保った状態の補修成分が有効であると考え、原料化にむけた研究を継続的に⾏っています。その取り
組みの中で、ミルボンでは⾼い⽑髪補修効果を持つ成分 CMADK(S-カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチンタンパ
ク質)*1 を開発し、製品に応⽤してきました。CMADK は⽑髪のタンパク質構造に近い状態を有し、かつ⽑髪への定着性
が⾼いことを特⻑としています。
https://www.milbon.com/ja/news/uploads/docs/20130607_news-CMADK.pdf
近年では、⾼明度なヘアカラーデザインの広まりやヘアアイロン等を⽤いる美容習慣が浸透し、⽑髪ダメージはより深刻
化しています。そこでミルボンでは、より⾼い補修効果をもたらす成分として、従来の CMADK よりもさらに“⽑髪本来のタン
パク質構造”に近似した、新しい CMADK の開発を⽬指して研究に取り組みました。




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【研究の成果】
1. 新補修成分 3D-CMADK の原料開発に成功
新たな CMADK の開発にあたり、強度に関わるとされる⽑髪組織のミクロフィブリル*2 に着⽬しました。ミクロフィブリルは
TypeⅠ、Ⅱ*3 という 2 種類のケラチンで構成されていますが、従来の CMADK は安定的に原料化が可能な TypeⅠケラ
チンのみを活⽤しています。TypeⅠ、Ⅱのいずれも安定的に原料化できれば、より“⽑髪本来のタンパク質構造”に近似し、
⾼い補修効果をもたらすと考えました。そこで KRA ⽺⽑研究所所⻑ 新井幸三博⼠との協働で、製造時や保管時の安
定化成分や温度等の条件検討を⾏い、TypeⅠ、Ⅱケラチンの両⽅を安定に抽出し、原料化できる⽅法を確⽴しました。
ミルボンでは、この新成分を「3D-CMADK」と命名しました。この 3D-CMADK は従来の CMADK と⽐べて⽑髪のタンパク
質構造により近く(図 1)、⽑髪強度をより向上させることがわかっています(図 2)。




図 1 CMADK と 3D-CMADK の CD スペクトル*4
タンパク質の構造について詳細に解析するため、HiSOR*5 にて解析。
3D-CMADK は、CMADK よりも 190 nm 付近の上昇、208 nm と 222 nm 付近の下降が強く⾒られることより
⽑髪タンパク質のらせん状の構造「-ヘリックス構造」をより多く形成していることを⽰している。




図 2 ⽑髪強度向上効果
3D-CMADK は CMADK よりも⽑髪強度を向上させる。


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2. ⽔溶液中において⽑髪のタンパク質構造に近い状態を形成するためには、TypeⅠ、Ⅱケラチンの共存が重要で
あることを確認
タンパク質構造の研究を⾏っている公⽴⼤学法⼈ ⼭陽⼩野⽥市⽴ ⼭⼝東京理科⼤学 佐伯政俊講師と協働し、
TypeⅠ、Ⅱケラチンが⽔溶液中でどのようなタンパク質構造を有しているかについて、構造解析の研究に取り組みました。
その結果、TypeⅠ、Ⅱケラチン 2 種類は⽔溶液中で共存することで、それぞれが単独で存在する場合よりも⽑髪のタンパ
ク質構造に⼤幅に近づくことがわかりました(図 3)。
今回開発に成功した 3D-CMADK には TypeⅠ、Ⅱケラチンを共存させることが可能になったため、TypeⅠケラチンのみ
を含有する従来の CMADK よりもさらに、⽑髪のタンパク質構造に近似したと考えられます。




図 3 TypeⅠ、Ⅱケラチン単独または共存時の CD スペクトル
タンパク質の構造について詳細に解析するため、HiSOR にて解析。
TypeⅠ、Ⅱ単独時と⽐べて共存時は、190 nm 付近の上昇、208 nm と 222 nm 付近の下降が強く⾒られることより
⽑髪タンパク質のらせん状の構造「-ヘリックス構造」をより多く形成していることを⽰している。




【今後の展望】
今回新たに原料化に成功した 3D-CMADK を⽤い、ヘアカラーやヘアアイロンを繰り返すことで強度が低下しているハイ
ダメージ⽑にまで対応可能な⾼効果ヘアケア製品の開発を⽬指します。




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《⽤語解説》
*1 S-カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチンタンパク質(CMADK)
カルボキシメチルジスルフィドケラチンとも呼ばれ、ジスルフィド結合(⽑髪中に存在する、2つの硫⻩原⼦が共有結合した
もの)を持った可溶性ケラチンタンパク質のこと。


*2 ミクロフィブリル
⽑髪コルテックスのミクロ構造を形作る組織の⼀つ。コルテックスはマクロフィブリルという構造の集合体で構成されており、マ
クロフィブリルは結晶性のミクロフィブリルと⾮晶性のマトリックスによって構成されている。




*3 TypeⅠ、Ⅱケラチン
ミクロフィブリルを構成している主成分であり、TypeⅠが分⼦量 48,000、TypeⅡが分⼦量 64,000 のらせん状の構造を
持つケラチンタンパク質。


*4 CD スペクトル
試料がもつ円⼆⾊性(Circular Dichroism: CD)に基づく解析⼿法を円⼆⾊性分光法といい、それによって得られる
測定データが CD スペクトルです。特に遠紫外領域の光を⽤いてタンパク質を観測した CD スペクトルからは、そのタンパク
質の⼆次構造に関する情報が得られます。


*5 HiSOR (広島⼤学放射光科学研究センター)
広島⼤学(広島県東広島市)にある放射光実験施設。放射光とは、電⼦を光とほぼ等しい速度まで加速し、 電磁
⽯によって進⾏⽅向を曲げる時に発⽣する強⼒な電磁波のこと。HiSOR では、真空紫外線・軟 X 線領域の放射光を
⽤いた実験を得意としており、⽣体物質の構造解析⼿法などの研究を⾏っています。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本店︓⼤阪市都島区、社⻑︓佐藤⿓⼆、証券コード︓4919(東証プライム)


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