ステラファーマ、三菱ケミカルグループ、東京大学が共同研究契約締結-ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ポリビニルアルコール(PVA)製剤の実用化を加速-

2023 年 12 月 11 日


ステラファーマ株式会社
三菱ケミカルグループ株式会社
国立大学法人東京大学大学院総合文化研究科


ステラファーマ、三菱ケミカルグループ、東京大学が共同研究契約締結
〜ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ポリビニルアルコール(PVA)製剤の実用化を加速〜


ステラファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:上原 幸樹、以下「ステラファーマ」)、
三菱ケミカルグループの三菱ケミカル株式会社(本社:東京都千代田区、以下「三菱ケミカルグループ」)、
国立大学法人東京大学(本部:東京都文京区、総長:藤井 輝夫、以下「東京大学」)は、ポリビニルアル
コール*1 とボロノフェニルアラニン*2 から構成されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用製剤の実用化に
向けた組成・製剤化方法の研究(以下「本共同研究」)に関する共同研究契約を締結し、共同研究を開
始いたします。


【本共同研究の背景・経緯】
BNCT は、ホウ素(10B)に対して熱中性子を照射することにより核反応を起こし、細胞傷害性の高いア
ルファ粒子とリチウム反跳核を発生させて、それによりがんを治療する方法です。


BNCT ではいかに B をがんに選択的に集積させることができるかが重要となります。現在、臨床で
主に使用されているホウ素化合物は、ボロノフェニルアラニン(BPA、一般名:ボロファラン(10B))という
物質です。BPA は、LAT1 というがん細胞上に多く発現しているアミノ酸トランスポーターを介して細胞に
取り込まれる性質があるため、選択的にがんに集積することができる化合物です。
このように使用されている BPA ですが、がん細胞に選択的に集積することができるものの、がん細胞
に長い時間滞留することができないケースもあり、BPA のがんにおける滞留性を長期化できれば、
BNCT の治療効果を更に向上できると考えられています。これまでの研究*3 により、ポリビニルアルコー
ル(PVA)に BPA を結合させた物質が、がん細胞に選択的かつ積極的に取り込まれ、その滞留性を大き
く向上できることを東京大学大学院総合文化研究科 野本貴大准教授(当時 東京工業大学 助教)らが
発見しました。
この研究は、2020 年 8 月から 2023 年 3 月までの期間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構
(AMED)の医療分野研究成果展開事業「産学連携医療イノベーション創出プログラム」基本スキーム
(ACT-M)に採択され、野本准教授がリーダーとなり、BPA の製剤化及び薬事承認を経て、世界で唯一
BNCT 承認薬を販売するステラファーマとともに実用化に向けた製剤組成の最適化研究を行ってきまし
た。その成果として、現在、製造販売されている BNCT 用製剤に対して PVA を付加した製剤構造(PVA-
sorbitol-BPA)にすることにより、新規な BNCT 製品として実用化できる可能性を見出しました。この新規
製剤により 10B の腫瘍集積性・滞留性を向上させて BNCT の有効性を高め、BNCT の適用範囲を拡大
できることが期待されています。
一方、PVA-sorbitol-BPA には、医薬品としての保存安定性の面などおいて今後検討すべき課題が
残っていました。今回、この課題を解決するため、日系初の EXCiPACT GMP*4 を取得し、国内外の製薬





会社での販売実績や固・非固形製剤の多様な用途を持つ PVA メーカーの三菱ケミカルグループを新た
に加えて、実用化に向けた組成・製剤化方法の最適化の研究を開始します。


【本共同研究の目的】
本共同研究では PVA、sorbitol、BPA から構成される BNCT 用製剤の非臨床試験実施を目的とした
組成・製剤化方法の最適化を行います。
三者それぞれの役割として、東京大学 野本准教授のグループは PVA-sorbitol-BPA 製剤の効果検
証を行い、ステラファーマは、BPA の提供とこれまでの開発経験を活かし PVA-sorbitol-BPA 製剤の規
格設定を担当します。PVA のノウハウを有する三菱ケミカルグループは PVA の製剤化ならびに物性評
価を行います。
PVA-sorbitol-BPA の最適組成の検討と、それを用いた規格化設定ならびに安全性・治療効果の評
価による課題解決を推進し、本製剤の早期実用化を目指します。


【今後の展開】
アカデミアと民間企業とが綿密に提携し、実用化に向けた産学連携による研究を実施してまいります。
本共同研究により PVA-sorbitol-BPA の製剤規格設定を完遂し、適切な時期に公的な研究開発支援制
度を活用して臨床開発に向けた非臨床 POC 取得を目指します。


*1 ポリビニルアルコール:生体適合性に優れた無色無臭の水溶性高分子。三菱ケミカルグループでは、
不純物を取り除いた高品質なポリビニルアルコール (製品名:ゴーセノール™ EG) を製造・販売してお
り、国内外で医薬品添加物として利用されている。

*2 ボロノフェニルアラニン:必須アミノ酸のフェニルアラニンと類似した構造を持ちながら、ホウ素原子を
含有した化合物。がん細胞に選択的かつ効率的に取り込まれることが知られている。熱中性子を当てる
と化合物中のホウ素原子が核反応を起こしてがん細胞を殺傷する。

*3 液体のりの主成分であるポリビニルアルコールを BNCT 用製剤に応用できることを 2020 年に野本
准教授のグループが「スライムの化学を利用」という形で報告し注目を集めた、本共同研究の基礎とな
った研究。

*4 EXCiPACT GMP は、医薬品添加剤の製造・流通に関する国際認証プログラムで、製薬メーカーの厳
しい要求を国際的に満たす証明になる。
以上

【問い合わせ先】
ステラファーマ株式会社
TEL:06-4707-1516(代表)
三菱ケミカルグループ株式会社
コーポレートコミュニケーション本部 メディアリレーション部
TEL:03-6748-7140
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 広報室
E-mail:pro-www.c@gs.mail.u-tokyo.ac.jp
TEL:03-5454-6306





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