2016年4月16日の熊本地震に関する液状化被害と活断層の現地調査報告(熊本地震現地調査・第2報)

2016 年 4 月 25 日
地盤ネットホールディングス株式会社



2016 年 4 月 16 日の熊本地震に関する
液状化被害と活断層の現地調査報告
(熊本地震現地調査・第 2 報)


戸建て住宅の地盤調査・解析・補償サービスを提供する地盤ネットホールディングス株式会社(本社:
東京都中央区、代表:山本 強、以下地盤ネット HD)の子会社、地盤ネット株式会社(以下地盤ネット)
は、2016 年 4 月 16 日未明に発生した 2016 年熊本地震(M7.3)の被災地における液状化被害と活断層の
状況を中心に、4 月 20 日から 23 日に現地調査を実施致しましたので報告いたします。


【液状化調査報告】
16 日に実施した地盤ネットによる緊急調査において液状化の発生を確認しました。これを受けて、第
2 次調査では、液状化による家屋被害の状況を中心に現地調査を実施致しました。現地調査は、福岡県、
大分県、熊本県の約 40 地点および移動時における目視調査にて実施いたしました。
その結果、複数の地点で家屋・路面等に被害が生じていたことを確認しました。地盤ネットが事業者
向けに展開している「地盤安心マップ PRO」の「液状化の可能性マップ」上に、被害のみられた地点の
位置を示しました。丸で示した地点が被害のみられた地点で、赤丸で示した地点が、複数の家屋の明確
な不同沈下や抜け上がり現象(液状化に伴う地盤沈下により、鋼管杭系地盤改良・杭基礎等の建物は沈
下しないことで、地盤面と高さに食い違いが生ずる現象)などのみられた、被害の大きな地点です。




「地盤安心マップ PRO」における液状化の可能性マップと、現地調査による被害状況

<報道関係各位からのお問い合わせ先>
地盤ネットホールディングス株式会社 災害担当:横山芳春(携帯: 070-6644-6061)
Tel: 03-6265-1834 / Fax: 03-6265-1804 / E-mail: yokoyama@jibannet.co.jp
※お客様からのお問い合わせ先: 地盤ネット株式会社 Tel: 03-6265-1803
参考資料

全体的な傾向として、沿岸部の干拓地よりも、内陸の河川沿いの自然堤防や旧河道、氾濫平野といっ
た地形区分での液状化被害が目立ちました。とくに、熊本駅より南側の、鹿児島本線および九州新幹線
の東側ゾーンに沿った地域で被害が大きい傾向がありました。
河川や水路沿いでの液状化発生および被害が目立ちましたが、地点2に示すような近くに河川がない
地域での被害も大きかったケースもあり、液状化被害が沿岸部や河川沿いに限定された課題ではないこ
とが、改めて浮き彫りになりました。


地点1 熊本市南区近見・近見町付近
内陸の生活道路沿いの集落付近で、土地条件図では、主に「自然堤防」に区分されています。道路へ
のおびただしい噴砂と、複数件の家屋の不同沈下、基礎や土間コンクリートのひび等の被害がみられま
した。杭基礎のマンション等では地盤沈下による 5cm 程度の抜け上がりとライフラインの破損、直接基
礎の建物では重量のある店舗を中心に構造物が沈み込み、かつ傾斜が生じていました。




2 階建て店舗・住宅の不同沈下 左写真の店舗。沈下に伴う 1 階部分の破損が目立つ




戸建て住宅基礎のひび、電柱埋没と噴砂 地盤沈下に伴うマンションの抜け上がりと
ライフライン破損状況
参考資料

地点2 熊本市南区日吉~刈草付近
地点1の南側にある、鹿児島本線および九州新幹線に隣接した地域で、土地条件図では「自然堤防」
に区分されています。3 階建ての店舗および集合住宅に明瞭な不同沈下がみられ、建物の傾斜による隣
接建物への衝突もみられました。
周辺道路や裸地における噴砂、道路や土間コンクリート・レンガのひび割れも多く認められ、JR 鹿児
島線高架下での土間コンクリート変状もみられました。




集合住宅の不同沈下による傾斜 戸建て住宅付近の土間変状と噴砂




3 階建て店舗・事務所の不同沈下 鹿児島線高架下の土間コンクリート変状
参考資料

地点3 熊本市南区川尻付近
南側の緑川と北側の加瀬川、また南北に流れる水路に挟まれた中洲状の立地にあり、土地条件図では
「自然堤防」に区分されています。
集落の西側にある水路側に向かって、地盤や構造物が変状している現象も見て取れました。このよう
な被害状況からは、液状化・流動化した地盤が側面にすべる現象である、
「側方流動」の可能性も考え
られます。
家屋の不同沈下、基礎や土間コンクリートのひび割れのほか、水路側への塀のはらみ出し、道路の断
裂、ライフライン損傷も目立ちました。写真では、西側の水路の方向を赤矢印で示します。




水路ぎわの戸建て住宅における変状 道路付近にみられる水路側への沈下・陥没




左右とも同一の水路沿い戸建住宅。塀のはらみだし、地盤の水路側への変状が見て取れます
参考資料

地点4 熊本市南区元三町~八幡
加瀬川の北岸の集落で、土地条件図では「自然堤防」「海岸平野・三角州」に区分されています。

アパートバルコニーの沈下、墓地における大量の噴砂、道路のひび割れ、家屋周辺の土間部分における
変状が多数みられました。




集合住宅バルコニーの不同沈下 墓地にみられる大量の噴砂と墓石の転倒
右側水路方向への変状に影響を受けている



地点5 熊本市東区画図町付近
加瀬川の北岸の集落で、土地条件図では「自然堤防」「海岸平野・三角州」に区分されています。地

盤沈下に伴い、最大 30cm 程度の抜け上がり現象における外構部破損、ライフライン破損、周辺道路の
ひび割れなどが見られました。




戸建住宅の抜け上がりとライフライン破損状況 左住宅前の道路破損状況。水路側に落ち込む
参考資料

地点6 熊本市東区秋津町秋田付近
北側の木山川と南側の矢形川に挟まれた集落です。木山川堤防の南側で被害が大きく、鋼管杭系地盤
改良の行われた戸建て住宅では最大 50cm 近い抜け上がりと外構部の破損、直接基礎と考えられる住宅
では不同沈下による傾斜がみられました。堤防背後の地盤が著しく沈下している様子が見て取れました。
土地条件図では「谷底平野・氾濫平野」に区分されています。




鋼管杭系改良工事家屋(手前から 1 件目、3 件目) 左写真 1 件目住居の抜け上がり状況
の抜け上がりと家屋の不同沈下(2 件目)


以上のように、熊本市内の広い範囲において、液状化の発生と家屋への被害が認められました。現時
点では避難されている方も多く、いまだ報道等は少ない状況です。しかしながら、一見すると家屋は健
在に見えるものの、液状化による不同沈下による傾斜やライフライン破損が発生しているケースも懸念
されます。
このほか、道路におけるマンホールの抜け上がりやひび割れ・陥没、電柱の傾斜、大量の噴砂による
被害など、家屋以外における被害もみられ、下水道を中心としたライフライン復旧、また鋼管杭系の改
良工事や杭基礎建物でも、建物自体は無事でも外構部の補修などについても、液状化による影響がある
ことが懸念されます。


土地条件図では「自然堤防」に区分されているエリアでの被害が多い傾向がありましたが、自然堤防
は一般には標高がやや高く地下水位も低いことから、実際には自然堤防に隣接した旧河道や微低地など
における液状化の発生や被害がある可能性も考えられます。


なお、今回の調査は可能な限りの場所を回っての目視調査が中心となります。今回示した事例でも、
地震による地盤の液状化以外の主要因による家屋への被害が含まれている場合や、今回確認された以外
の地点における液状化・被害がある可能性もあるものと考えられます。今後は、各研究機関、学会など
での詳細な調査・研究によって、その全貌が明らかになるとともに、予防策についても向上が図られる
ものと考えられます。
参考資料

【活断層調査報告】
益城町付近は、北東の阿蘇山方面に延びる布田川(ふたがわ)断層帯と、南西の八代方面に延びる日
奈久(ひなぐ)断層帯の交わる位置にあります。地盤ネットが公開している「地盤安心マップ」では、
活断層の位置を公開していますので、その位置を頼りに、目視にて現地調査を実施し、地表活断層を追
跡いたしました。写真では、活断層のズレの方向を赤色の矢印で示しています。
今回、現地調査によって確認された活断層と、マップ上と現地で確認された活断層の位置は概ね一致
する傾向がありました。代表的な活断層の位置と、それぞれの現地写真を示します。地盤安心マップ上
で活断層の位置を、避難所マップや標高マップなどと重ねあわせて確認することができます。地震動予
測地図や、液状化ハザードマップなどとも比較して、地震リスクに対しての検討にご活用ください。




「地盤安心マップ」における活断層の位置と代表的な地表活断層の写真位置

地点1の益城町上陣~杉堂付近では、地表で明瞭な活断層を追跡することができました。特に、上陣
の麦畑付近では、最大2m近くに達する活断層の活動による横ずれが確認できます。地元の方によると、
14 日の前震のときには表れていなかったものが、本震後の 16 日に、避難所でテレビの報道を見て知っ
たとのことです。道路も地震前は直線だったものが、活断層によって曲げられています。




益城町上陣付近の活断層(地点1) 左写真の左手奥にある電柱付近の活断層
参考資料

南西側の御船町高木付近では、活断層による 20~40 ㎝程度の速攻や道路白線の横ずれが発生してい
ました。道路では陥没やひび割れも伴っており、道路の交通に支障を来しているケースもありました。




御船町高木付近の活断層(地点2) 御船町高木付近の活断層(地点3)


改めまして、このたびの地震によってお亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、一刻も
早い沈静化と、被災された方が一刻も早く日常の生活に戻れますことを、代表以下、役員・社員一同、
深くお祈り申しあげます。


※地盤ネット緊急調査隊メンバー
執行役員 技術副本部長・横山芳春 博士(理学) 九州支社長・井澤俊博(福岡市内担当)



【地盤ネットホールディングス株式会社概要】
地盤業界が抱える情報格差と生活者の不利益の解消を目指し、「工事を受注しない」という公正
中立な立場で地盤調査データを再解析する「地盤セカンドオピニオン®」を提供。オリジナルの地
盤測定機「グラウンド・プロ」を開発し、地盤調査や地盤補償サービスも提供する。2015 年 1 月よ
り、土地の災害リスクを診断して採点するレポート「地盤カルテ®」を WEB 上で無償公開し、利用
は 10 万件を超えた。また、さまざまな地盤情報を地図上で閲覧できる WEB サービス「地盤安心マ
ップ®」を公開。これらが評価され、ジャパン・レジリエンス・アワード 2015(強靭化大賞)にて
「最優秀レジリエンス賞」を、国土交通省国土地理院の主催する「電子国土賞 2015(PC 部門)」
を受賞し、地盤業界初のテレビ CM 制作をおこなうなど、業界の見える化を推進。


会 社 名 :地盤ネットホールディングス株式会社
代 表 者 :代表取締役 山本 強
本社所在地 :東京都中央区日本橋一丁目 7-9 ダヴィンチ日本橋 179 ビル 2 階
設 立 日 :2008 年 6 月 25 日(2014 年 10 月 1 日 持株会社体制に移行)
資 本 金 :4 億 9,040 万円(2015 年 3 月 31 日現在)
業 務 内 容:地盤解析サービス、地盤調査サービス、部分転圧工事サービス など
グループ会社:地盤ネット株式会社/JIBANNET ASIA CO.,LTD./Jibannet ReinsuranceInc.
U R L :http://jiban-holdings.jp

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