個人投資家の皆様からのご質問への回答について

2023 年3月 30 日
各 位
会 社 名 ク リ ン グ ル フ ァ ー マ 株 式 会 社
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番 15 号
住 所
彩都バイオインキュベータ 207
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 安 達 喜 一
(コード番号:4884 東証グロース)
問い合わせ先 取締役経営管理部長 村 上 浩 一
TEL.072-641-8739


個人投資家の皆様からのご質問への回答について

先般、個人投資家の方から、現在実施中の脊髄損傷急性期に対する第Ⅲ相臨床試験(治験)に関しましてご
質問を頂きましたので、以下の通り回答いたします。
なお、皆さまよりご質問頂きました内容は、引き続き弊社ホームページ上の「よくあるご質問」にまとめて
まいります。
https://www.kringle-pharma.com/ir_info/faq/
お問い合わせいただく前にぜひご活用ください。




<ご質問>
受傷後 72 時間経ってから患者の状態を評価し、投薬を行っているかと思います。72 時間経たないと患者の評
価が正確に判断できない、よって、それより以前に薬を投与すると、急性期の脊髄損傷の患者がどの程度重症
かがわからないために、投薬せずに治ったのか、薬剤が有効だったのかを評価できない。そのため、72 時間後
に投与しているのでしょうか?


<回答>
受傷後 72 時間に重症度が AIS 分類Aであることを確認し初回投与を行う治験デザインを設定した理由につい
ては、ご推察の通りです。脊髄損傷の受傷直後から約 72 時間までは、脊髄ショックという一時的に脊髄反射が
消失する状態が起こる可能性があります。脊髄ショック状態にある時期に投薬を行うと、運動・感覚機能が回
復しても、脊髄反射が戻ったための自然回復なのか薬剤の効果によるものか判断できないために受傷後 72 時
間後の重症度判定を設定しています。



<ご質問>
急性の疾病(心不全や脳梗塞など)の患者に対しては受傷後すぐに治療を行わないと予後が悪いと認識してい
るのですが、脊髄損傷に関してもそうですか?もし、すぐに薬剤を投与すれば、患者の AIS 分類はAからC、
もしくはそれ以上になる割合が増える可能性があるということでしょうか?


<回答>
ご指摘の通り、HGF には受傷直後から発生する炎症を抑制する効果があることから、早く投与できればより高
い効果が得られると考えています。しかしながら、脊髄ショックの影響を避けながら効果が適切に評価できる
治験デザインとして、あえて 72 時間後の初回投与を設定しています。



<ご質問>
今回の治験では、
臨床試験のため治療を遅らせるということを行なってるということになるかと思うのですが、
倫理的には特に問題ないのでしょうか。


<回答>
上記の通り、薬剤の効果を適切に評価するために本治験デザインを設定し、独立行政法人医薬品医療機器総合
機構(PMDA)と合意しています。令和元年に厚生労働省が作成した「急性期脊髄損傷の治療を目的とした医薬
品等の臨床評価に関するガイドラインについて」(令和元年5月8日付け、薬生薬審発 0508 第1号/薬生機審
発 0508 第1号)においても、急性期脊髄損傷を対象とする場合には、脊髄ショックを考慮した適切な介入時期
を設定するように記載されています。当社としましても患者様のためには可能な限り早く投与したいという思
いはございますが、現時点では臨床試験の段階であり、安全性と有効性を検証することを目的とした試験デザ
インを設定しましたことにご理解をいただきたく存じます。



<ご質問>
今回の治験のデザインは、薬剤にとって不利な条件と論文にも書かれていましたが、第Ⅰ/Ⅱ相試験では改良
Frankel 分類Aの方がCに改善された方が 26.7%いらっしゃいます。同じような治験デザイン(もしくは治療)
で、過去に、これほどまで改善された例は国内、海外ともにあったのでしょうか?


<回答>
脊髄損傷では、治療をしなくても自然に機能が回復する症例があります。このような自然回復例が治験に組入
れられると薬剤の効果が評価できないために、当社は自然回復が極めて少ない完全麻痺患者(AIS 分類Aある
いは改良 Frankel 分類A/B1/B2)を対象としました。完全麻痺患者は患者数が少なく、症例管理も厳しいた
め、このような厳しい条件で行われた他の薬剤の治験は殆どありません。一方で、海外の過去の患者情報では、
受傷時の頚髄損傷 AIS 分類Aの患者がC以上に改善する割合は 10%程度と複数の報告があります。



<ご質問>
第Ⅰ/Ⅱ相試験の ASIA motor score は 168 日経っても変わらなかったが、副次評価項目の経時的推移に 140 日
で有意差を認めたとホームページの記述があります。ASIA motor score の評価シートを確認しましたが、感覚
レベル、運動感覚、運動レベルとかなり細かく検査する印象を受けました。第Ⅰ/Ⅱ相試験は ASIA motor score
にて全体的に検査すると、あまり変わらなかったが、下肢の機能に関しては 140 日にて改善されていたという
認識で合っていますか?


<回答>
ASIA motor score はご指摘の ISNCSCI アルゴリズムのシートの motor key muscle の左右の上肢 5 か所、下肢
5 か所の合計で算出されます。一般に再獲得した運動機能は維持されると考えられますが、評価時の患者さん
の状態によっては点数が減少する可能性も否定できません。ASIA motor score 全体の有意差は 140 日時点で得
られましたが、168 日時点では微妙な差によって有意差が消失したと考えております。しかし、84 日目以降は
p<0.1 で一貫した差を認めており、有効性は示唆されたと考えております。





<ご質問>
頸部の脊髄損傷は、頸部より下の身体の麻痺が残ると認識しています。上肢、下肢ともに動かなくなる、また、
排便機能も失われ、それが一生続くということが普通だと思っていますが、治療をすることによって、下肢の
機能にだけ改善がみられるということは今までの治療、治験の中であったのでしょうか?むしろ上肢の機能の
方が、首に近いので改善しそうなイメージなのですが、いかがでしょうか?


<回答>
日本の脊髄損傷患者の特徴として、高齢者の非骨傷性脊髄損傷が多いことが挙げられます。加齢に伴い脊柱管
が狭くなると、ちょっとした転倒でも外圧によって骨折を伴わない頚髄損傷が起こるのですが、このような場
合の多くは中心性頚髄損傷(脊髄の中心部分が強く損傷を受ける)となります。第Ⅰ/Ⅱ相試験では中心性頚髄
損傷患者が多かったのではないかと考察しています。組織学的に頚髄の運動神経は、内側が上肢、外側が下肢
と配置されていると考えられており、中心性頚髄損傷患者は内側、つまり上肢の運動神経が強く障害を受けま
す。第Ⅰ/Ⅱ相試験では、HGF 投与によって、障害の程度の少なかった外側(下肢)部分がレスキューされた結
果、大きな下肢運動機能回復が検出されたと考えます。受傷直後に投与できれば、中心性頚髄損傷の内側部分
もレスキューされ、上肢運動機能の回復も期待できると考えております。
参照:https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900067144/86-5-167.pdf



<ご質問>
第Ⅲ相試験は AIS 分類のAの患者がCになる割合を評価する治験になるかと思います。AIS 分類のみに絞った
理由はどういったものになりますか?


<回答>
脊髄損傷の発生頻度は少ないため、大規模の試験を実施することは難しいと考えています。そこで、効率的な
試験デザインを策定するために、PMDA と相談しながら、主要評価項目を重症度改善と設定しました。その他、
副次評価項目では、運動機能改善、感覚機能改善、日常動作性の改善などを設定しており、様々な機能回復効
果を評価することにしています。



以 上





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