慢性期脊髄損傷の治療剤に関する特許の優先権主張出願のお知らせ

2023 年3月 13 日
各 位
会 社 名 ク リ ン グ ル フ ァ ー マ 株 式 会 社
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番 15 号
住 所
彩都バイオインキュベータ 207
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 安 達 喜 一
(コード番号:4884 東証グロース)
問い合わせ先 取締役経営管理部長 村 上 浩 一
TEL.072-641-8739


慢性期脊髄損傷の治療剤に関する特許の優先権主張出願のお知らせ

当社は、学校法人慶應義塾(理事長:伊藤公平、以下「慶應義塾大学」 )と共同で慢性期脊髄損傷の治
療剤に関する特許出願(以下「本特許出願」 )を行ったことをお知らせいたします。本特許出願は、2022
年3月 11 日に慶應義塾大学と共同で行った特許出願に基づく優先権を主張して出願するもので、慢性期
脊髄損傷に対する治療剤の研究成果について、 幅広く包括的、 且つ円滑に特許権として保護されることを
目的としております。
2022 年3月 11 日付け当社プレスリリース:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4884/tdnet/2095386/00.pdf

発明の名称:脊髄損傷治療剤
出願番号:PCT/JP2023/9421
出願日:2023 年3月 10 日

当社は、2021 年2月 10 日付け当社プレスリリースの通り、慶應義塾大学医学部生理学教室 岡野栄之
教授及び同大学医学部整形外科学教室 中村雅也教授と新規の脊髄損傷治療に関する共同研究(以下「本
研究」 )を並行して進めてまいりました。
本研究では、慶應義塾大学が保有する iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞と当社が開発する HGF 及びスキャ
フォールド(足場基材) の併用療法により、脊髄の神経線維を切断した完全脊髄損傷モデル動物の慢性期
において、 新たな神経回路の構築による運動機能と排尿機能の回復に世界で初めて成功しました。 本研究
成果は、2023 年1月 26 日に国際学術雑誌「Biomaterials(バイオマテリアルズ) 」のオンライン版に論
文掲載されました(Hashimoto et al. Biomaterials 295 (2023) 122002) 。本研究成果の詳しい内容につ
きましては、慶應義塾大学医学部による 2023 年2月1日付けプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2023/2/1/230201-1.pdf

当社代表取締役社長 安達喜一は次のように述べております。 「本研究は、 脊髄損傷を受傷してから時間
が経過した慢性期の脊髄損傷に対する革新的な治療法の確立につながるものです。患者様の QOL はもと
よりご家族や介護者の負担を大きく軽減できる点で、医学的・社会的な意義は計り知れません。当社は、
現在、脊髄損傷急性期患者を対象に組換えヒト HGF タンパク質(以下「HGF」
)を投与する第Ⅲ相臨床試験
を実施しておりますが、 本特許出願をグローバルで権利化し、 これを基盤として慢性期脊髄損傷への事業
展開を目指してまいります。 」
なお、本件による 2023 年9月期の業績予想への影響はございません。
HGF(Hepatocyte Growth Factor, 肝細胞増殖因子)について
HGF は、成熟肝細胞の増殖を促進する因子として発見された生理活性タンパク質であり、その後の研究
から細胞増殖のみならず、細胞運動促進、抗細胞死、 形態形成誘導、血管新生など様々な組織・臓器の
再生と保護を担う多才な生理活性を有することが明らかにされました。
HGF は神経保護作用や軸索伸展作用も有し、神経難病とされる脊髄損傷に対する薬理効果は、慶應義塾
大学医学部生理学教室 岡野栄之教授及び整形外科学教室 中村雅也教授らのグループの研究により明ら
かにされています。新たな脊髄損傷治療薬として、HGF への期待が高まっています。

iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞について
ヒト iPS 細胞(人工多能性幹細胞)に由来し、 未分化な状態を保ったまま増殖することが可能な自己複
製能と、中枢神経系を構成する3系統の細胞(ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト)へ
と分化できる多分化能を併せ持つ細胞です。
現在、 慶應義塾大学病院において、 「亜急性期脊髄損傷に対する iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再
生医療」の臨床研究が実施されております。詳細は、 同大学による 2022 年1月 14 日付けプレスリリース
をご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2022/1/14/220114-1.pdf

脊髄損傷について
脊髄の外傷による損傷のことで、 受傷原因は平地転倒 交通事故 転落などの順に多いとされています。
・ ・
近年は、人口の高齢化に伴い、転倒による受傷が増加傾向にあります。国内では、年間に約6千人の脊髄
損傷患者が発生しており、慢性期までを含めた患者総数は 10~20 万人と言われています*。
適切な初期治療と専門的なリハビリテーションにより一定の回復が望めますが、運動麻痺や筋の痙性、
拘縮、知覚麻痺、体幹内臓機能不全(膀胱直腸障害、発汗体温調節機能障害、内臓機能低下、呼吸機能低
下)などの複合した重度の後遺障害が残る場合が多く、治療薬の開発が強く望まれています。

出典:Miyakoshi N et al. Spinal Cord 2021 Jun;59(6):626-634.
坂井宏旭ら「わが国における脊髄損傷の現状」(2010)

クリングルファーマ株式会社について https://www.kringle-pharma.com/
当社は「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、 難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供
し、社会に貢献すること」 を企業理念とし、希少疾病を対象に HGF タンパク質医薬品の自社開発を推進す
るバイオベンチャー企業です。
現在、当社が有する HGF タンパク質医薬品の開発パイプラインでは、 脊髄損傷急性期を対象とする開発
と、声帯瘢痕を対象にした開発の 2 つのいずれもが、 それぞれ医薬品開発の最終段階である第Ⅲ相臨床試
験に進んでおります。
当社は、HGF タンパク質性医薬品の社会実装を通じて新たな価値を創造し、人々の健康と幸せに貢献し
てまいります。

以上

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