eNK細胞の肺がん患者由来がんオルガノイドに対する抗腫瘍効果を確認

2022 年 10 月 12 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 ヘ リ オ ス
代 表 者 名 代表執行役社長 CEO 鍵 本 忠 尚
(コード番号:4593 東証グロース)




eNK®細胞の肺がん患者由来がんオルガノイドに対する抗腫瘍効果を確認

当社は、iPSC 再生医薬品分野において、固形がんを対象に、遺伝子編集技術により特定
機能を強化した他家 iPS 細胞由来 NK 細胞*1(開発コード:HLCN061、以下、「eNK®細胞
(engineered NK cells)」と言います。
)を用いた次世代がん免疫細胞療法の研究・開発を推進
「F-PDO 🄬
しております。この度、eNK®細胞が肺がん患者由来のがんオルガノイド*2(以下、
(Fukushima Patients Derived Tumor Organoid)
」と言います。)に対して抗腫瘍効果を有する
ことが確認できましたので、お知らせいたします。
本試験で使用している F-PDO 🄬は、患者の腫瘍組織に由来する複数種の細胞からなる細胞
塊で、組織学的・遺伝学的解析により患者由来のがん組織の特徴を維持していることが確認
されています。本来のがん組織の特徴を有していることから、臨床をより反映した状態で抗
がん剤の効果について評価することができます。
当社は、2021 年 11 月にお知らせしました通り、肺がん細胞株から作製した細胞塊に対す
る抗腫瘍効果を確認しておりましたが、F-PDO®を用いた研究においても eNK®細胞が抗腫
瘍効果を有していることが確認できました。


【研究成果】
eNK®細胞の肺がん患者由来 F-PDO®に対する抗腫瘍効果




Caspase-3/7 activity x 107
Apoptosis




E:T=10:1

E:T=3:1

E:T=1:1
2 Target only



時間 (hour)
本研究では、eNK®細胞(E(Effector の略)で表記)を肺がん患者由来 F-PDO®(T(Target
の略)で表記)の細胞数に対して、1倍、3倍、10 倍の比率(それぞれ、E:T=1:1、3:1、10:1
と表記)で添加し、アポトーシス*3 誘導を測定することにより細胞傷害活性を測定しました。
eNK®細胞を添加した条件では、8時間(10 倍)
、18 時間(3倍、1倍)以降、アポトー
シス誘導が添加した eNK®細胞の量に応じて認められ、eNK®細胞が F-PDO®を傷害している
ことを示す結果が得られました。一方、 ®細胞を添加せず F-PDO®のみの条件
eNK (Target only)
では、48 時間付近までは、アポトーシス誘導は見られませんでした。本研究では、複数の
患者由来 F-PDO®で検討し、総じて同様の結果が得られています。(グラフは一例を図示し
ています。



当社は、これまでに eNK®細胞が肺がんモデルマウスやヒト肝がんモデルマウスに対して
抗腫瘍効果を有する動物レベルでの POC(Proof of Concept)を取得しておりますが(2022
、これらのデータに加えて、F-PDO®を用いた本試験
年4月事業説明会資料 P.30~32 参照)
結果からも eNK®細胞が固形がん患者への有効な治療法となる可能性が示されました。


がん疾患は、分子標的薬やがん免疫療法の登場により、その治療成績の向上が見られてい
ますが、未だ治療効果の低い疾患領域です。当社は引き続き固形がんに対する有効な治療法
の研究・開発を推進いたします。




*1 NK 細胞:NK(ナチュラルキラー)細胞は、人間の体に生まれながらに備わっている防
衛機構で、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する白血球の一種です。さらに白血球の
NK
分類においてはリンパ球に分類されます。 細胞を用いた治療の有効性としては延命効果、
症状の緩和や生活の質の改善、治癒が期待されています。


*2 オルガノイド:生体内の組織・器官に極めて似た特徴を有している 3 次元な構造をもつ
組織・細胞のことです。


*3 アポトーシス:特定の刺激によって細胞が自壊する機能です(プログラム細胞死)。


*本試験は、ヘリオスが一般財団法人福島医大トランスレーショナルリサーチ機構に委託
し、公立大学法人福島県立医科大学で樹立された F-PDO®を用いて富士フイルム和光バイオ
ソリューションズ株式会社にて実施されました。


■ヘリオス eNK®細胞について
eNK®細胞は、遺伝子編集技術により細胞傷害活性の増強だけでなく、患者免疫細胞のリ
クルート(呼び込み)や固形がんへの浸潤特性も強化された、当社独自の遺伝子編集 iPSC-
NK 細胞プラットフォームです。
当社では、自社研究の成果として、eNK®細胞の作製に成功するとともに、eNK®細胞がヒ
ト肺がん細胞生着マウスモデルやヒト肝がん細胞生着モデルマウスに対して抗腫瘍効果を
有することを確認しました。また、国立研究開発法人国立がん研究センターと現在共同研究
にて、国立がん研究センターが保有する複数種類のがん種に由来する PDX(Patient-Derived
Xenograft:患者腫瘍組織移植片)マウスを用いて eNK®細胞の抗腫瘍効果等の評価を進めて
おります。さらに、国立大学法人広島大学大学院と、eNK®細胞を用いた肝細胞がんに対す
るがん免疫細胞療法に関する共同研究を、兵庫医科大学と、eNK®細胞を用いた中皮腫に対
するがん免疫細胞療法に関する共同研究を進めております。当社は、治験の開始に向けて、
eNK®細胞が抗腫瘍効果をより発揮しやすい固形がんの種類の探索・評価を進めています。


■株式会社ヘリオスについて
再生医療は、世界中の難治性疾患の罹患者に対する新たな治療法として期待されている
分野であり、製品開発・実用化へ向けた取り組みが広がり、近い将来大きな市場となること
が見込まれています。ヘリオスは、iPS 細胞(人工多能性幹細胞)等を用いた再生医薬品開
発のフロントランナーとして、実用化の可能性のあるパイプラインを複数保有するバイオ
テクノロジー企業です。2011 年に設立、2015 年に株式上場(東証グロース:4593)し、再生
医薬品の実用化を目指して研究開発を進めています。
独自の遺伝子編集技術を用いて免疫拒絶のリスクを低減する次世代 iPS 細胞、ユニバーサ
ルドナーセル(UDC: Universal Donor Cell)を作製し、がん免疫領域、眼科領域、肝疾患等に
おいて、iPS 細胞技術を用いた新たな治療薬の創出のための取り組みを進めています。iPS
細胞由来の再生医療等製品としての第一候補である HLCN061 は、固形がんに対する殺傷能
力を遺伝子編集により強化した次世代の NK 細胞治療薬です。また、現在、体性幹細胞再生
医薬品を用いて日本国内における脳梗塞急性期および急性呼吸窮迫症候群に関する治験を
実施し、申請に向け規制当局との協議を進めています。(詳細は https://www.healios.co.jp/を
ご覧ください。




本件に関するお問合せ先
IR・財務経理部 ir@healios.jp

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