TREASURE試験サブグループ解析結果発表

2023 年 3 月 20 日
各 位

会 社 名株 式 会 社 ヘ リ オ ス
代表者名 代表執行役社長 CEO 鍵 本 忠 尚
( コ ー ド 番 号 : 4593 東証グロース)



TREASURE 試験サブグループ解析結果発表
~結果から見る三つの考察と HLCM051 の今後の課題~



当社は、日本国内において脳梗塞急性期を対象とした体性幹細胞再生医薬品 HLCM051※1 の
有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE 試
験※2 治験調整医師:北海道大学 総長 寳金 清博 先生 以下、本試験といいます。 )を実施し、
本試験の結果について、2022 年 5 月ならびに 2022 年 11 月に公表しました。

この度、2023 年 3 月 17 日に開催された第 48 回日本脳卒中学会学術集会において、本試験の
治験参加医師である北海道大学脳神経外科 長内 俊也 先生より追加のサブグループ解析結果
(投与 90 日後の mRS※3 スコア 2 以下の割合)が発表されましたので、お知らせ致します。

1.サブグループ解析結果

1) 脳梗塞体積が 25 mL、50 mL 、75mL と、より大きくなる程、有効な傾向が見られまし
た。特に 50 mL 以上においては統計学的有意差を以て有効性が示されました。

2)被験者数は多くないものの、64 歳以下の患者でより有効な傾向が見られました。





2.三つの考察

1)脳梗塞体積が有効性に及ぼす影響
HLCM051 は、静脈投与後、急性期に不必要な免疫作用を抑制する事が知られており
ます。
脳梗塞においては、血管が閉塞する一次損傷(脳梗塞)が起き、血流の途絶えた組織
がサイトカインを産生して周辺組織を汚染し、体中から免疫細胞が動員され、通常であ
れば攻撃されない周辺組織を攻撃し、より広い領域(ペナンブラ)に二次損傷を起こす
事が知られています。
本試験の結果から、一次損傷が大きい方が薬剤の効果が現われやすかったと考えられ
ますが、今後の検証が必要です。

2)観察期間が有効性に及ぼす影響
有効性を神経学的指標で評価するには、本剤により二次損傷を抑えた後、神経組織の
回復伸長を待つ必要がありますが、本剤投与後 7 日、30 日、90 日と神経学的所見が改善
していくことから、本治験の観察期間として最も長い 365 日で効果が最大化(あるいは
最大化が維持)される傾向にあると考えられます。

3)年齢が有効性に及ぼす影響
神経学的指標で臨床効果を検出する為には、薬剤の効果に加え、元々人体が持つ、神
経組織の回復伸長能力が重要と考えられますが、64 歳以下の若い年齢層における神経回
復能力が高齢者より高い可能性が考えられ、より良好な反応が得られたと考えられます。

3.今後の課題

上記の考察はこれまでの結果から導かれる本剤の効果であり、更なる科学的な検証が必要で
す。米国・欧州で同じ薬剤を使用し脳梗塞急性期の治験(治験名称:MASTERS-2 試験)を実
施している Athersys 社が、2023 年 3 月に米国 FDA(Food and Drug Administration)と TREASURE
試験の結果を踏まえて評価項目の一部変更等を協議する予定であり、新たに FDA となされる
合意を受け、PMDA と米国データの活用も含め更に相談を進めていく予定です。



今回の結果を受け、当社代表執行役 CEO 鍵本忠尚は、以下のように述べています。
「細胞医療は、細胞と人体の相互作用で治療効果が発揮される領域であり、非臨床試験や少数
対象者の臨床試験では十分に人での薬効が判明しない事がありますが、今回の様な大規模二重
盲検試験を行う事で、客観的評価に足る、科学的な知見を得る事が 可能となります。
TREASURE 試験を通じて臨床効果のプロファイルが科学的に明らかになって来た事は、今後
の HLCM051 の可能性を開くものと考えます。引き続き、患者さんへの貢献、科学への貢献を
続け、 『生きる』を増やす、爆発的に。
「 」のミッションを実現できる様、経営努力を重ねて参
ります」

以 上





※1 HLCM051
HLCM051 は、日本国内における体性幹細胞再生医薬品の開発パイプラインです。当社は
2016 年1月に、米国のバイオベンチャー企業 Athersys, Inc.と、同社の開発する幹細胞製品
MultiStem®を用いた脳梗塞に対する再生医療等製品の国内での開発・販売に関する独占的なラ
イセンス契約を締結し、本パイプラインを導入いたしました。さらに 2018 年6月に同社との
提携を拡大したことにより、日本における急性呼吸窮迫症候群に対する開発・販売ライセンス
を取得し、開発を開始いたしました。

※2 TREASURE 試験
本試験は、中程度から重度の脳梗塞患者(登録時の神経症状障害度の指標である NIHSS※4ス
コアが 8 から 20)を対象とし、発症後 18 時間から 36 時間以内に HLCM051 またはプラセボの
単回静脈内投与を行いました。本試験は、48 の医療機関で実施され、206 名の患者が登録され
ました。また、HLCM051 投与群とプラセボ投与群の患者背景に偏りはありませんでした。
なお、これまでに発表された TREASURE 試験の結果をまとめますと、以下となります。
⚫主要評価項目である投与 90 日後の Excellent Outcome※5 に有意な差は示せませんでした。
⚫本剤投与後 7 日、30 日、90 日、365 日と時間が経つ程、プラセボ群と比べてより強く薬剤
効果が見られました。特に 1 年後の BI※6、Global Recovery※7 などで示される、介護を必要と
せず、自立生活が出来る患者さんの割合の増加が、統計学的有意性をもって認められまし
た。
⚫被験者の脳梗塞体積の分布でプラセボ群がやや大きい傾向があったものの、脳梗塞体積が
25 mL 未満で効果が無かったことに比べて、25、50、75 mL と、より大きくなる程、より強
い薬効を認める傾向にあり、特に 50 mL 以上で統計学的有意差をもって効果が認められま
した。
⚫64 歳以下で、本剤の効果がより強く示唆されました。

※3 mRS
概括障害度(modified Rankin Scale)と表現され、障害の程度を0(まったく症候がない)、
1(症候があっても明らかな障害はない) 、2(軽度の障害)、3(中等度の障害)
、4(中等
度から重度の障害)、5(重度の障害) 、6(死亡)のグレードで判定されます。数字が低い方
が障害の度合いが低くなります。本試験では、当該評価項目を副次評価項目として設定してい
ます。

※4 NIHSS
神経症状障害度(NIH Stroke Scale)と表現され、脳梗塞の神経学的重症度を項目別に点数
化 して合計点で評価されます。点数は0点から 42 点となるように設定されており、点数が高
い ほど重症となります。本試験では、当該評価項目を副次評価項目として設定しています。

※5 Excellent Outcome
優れた転帰と表現され、脳卒中患者の機能評価に使われる主要な指標として、mRS、
NIHSS、BI の3つの指標が用いられております。これら3つの指標において、 「mRS が1以
下、NIHSS が1以下かつ BI が 95 以上」を満たした場合を“Excellent Outcome(優れた転
帰)”と定義します。本試験では、投与 後 90 日の当該評価項目を主要評価項目として設定して
います。





※6 BI
日常生活活動指標(Barthel Index)と表現され、代表的な基本的日常生活動作 10 項目につ
いて点数をつけ、合計得点で評価されます。例えば、食事の項目では自立、自助具などの装着
可、 標準的時間内に食べ終えることができれば 10 点、部分介助(おかずを切って細かくして
もらう等)の場合は5点、全介助は0点となっています。点数は0点から 100 点。数字が低い
ほど介助の必要性が高まります。本試験では、当該評価項目を副次評価項目として設定してい
ます。

※7 Global Recovery
「mRS が 2 以下、NIHSS が 75%以上改善し、BI が 95 以上」を満たした場合を“Global Recovery
(全般的機能回復)”と定義します。Global Recovery は、米国と英国で Athersys, Inc.が実施した
第Ⅱ相試験(MASTERS-1)の主要評価項目でした。本試験では、当該評価項目を副次評価項目
として設定しています。

本件に関するお問合せ先
IR・財務経理部 IR 広報グループ:
ir@healios.jp





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