血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤の非臨床試験および第I/II相試験結果について14th Annual WORLDSymposiumTM 2018で発表

2018年2月13日
各 位




会 社 名 J C R フ ァ ー マ 株 式 会 社
代表者名 代表取締役会長兼社長 芦 田 信
(東証1部 コード番号4552)
問合せ先 執行役員経営企画本部長 本 多 裕
(TEL 0797-32-8591)

血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤の非臨床試験および
第I/II相試験結果について14th Annual WORLDSymposiumTM 2018で発表

当社は、2018年2月5日から9日に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された
14th Annual WORLDSymposiumTM 2018*において、独自に開発した血液脳関門通過技術
「J-Brain CargoⓇ」を適用した血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤(開発番号:
JR-141)の非臨床試験およびハンター症候群患者を対象とした第I/II相試験で得られた結果
について、2件の口頭発表を行いました。本発表の概要を下記に示します。


ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症II型(ハンター症候群)は、先天的なイズロン酸-2-
スルファターゼ(IDS)遺伝子の欠損・変異により酵素活性が低下もしくは消失し、その基
質であるへパラン硫酸およびデルマタン硫酸が各種臓器に蓄積して引き起こされる疾患で
ある。現在、ムコ多糖症II型の主な治療法として、遺伝子組換えIDS酵素製剤を静脈内投与
する酵素補充療法が行われているが、この酵素製剤は末梢臓器に対しては効果を示すもの
の、中枢神経系(CNS)にはほとんど効果を示さないことが課題であった。これは、血液
脳関門(BBB)と呼ばれる血中から脳内への不必要な物質の侵入を防ぐ機構が脳毛細血管
に備わっているためで、静脈内投与された酵素製剤はBBBに阻まれて脳内に移行できず、
脳内の細胞に対して薬効を発揮することができない。


【ハンター症候群モデルマウスにおける非臨床試験】
当社が独自に開発したJ-Brain Cargo®は、抗トランスフェリンレセプター(TfR)抗体を
基盤とした薬剤の効率的なBBB通過を実現する技術であり、今回、J-Brain CargoⓇを適用
したIDS製剤である JR-141の脳移行性および薬効をムコ多糖症II型モデル動物であるヒト
TfR遺伝子ノックイン/IDS遺伝子ノックアウトマウスおよびサルを用い検証した。

・ モデルマウスにJR-141を静脈内投与した後、脳ホモジネート中の薬剤濃度を測定した結
果、薬剤の脳内への移行性が確認された。また、in vivoおよびex vivoイメージングに
より脳全体への薬剤分布を確認した。
・ モデルマウスにJR-141を反復静脈内投与した後、脳および脳脊髄液中のへパラン硫酸
(HS)蓄積量を測定した結果、脳および脳脊髄液中HS蓄積量は投与量に応じて低下し
た。
・ サルにJR-141を静脈内投与した後、脳ホモジネート中の薬剤濃度を測定した結果、薬剤
の脳組織への移行性が確認された。
【ハンター症候群患者を対象とした第I/II相試験】
遺伝子組換えIDS酵素製剤(イデュルスルファーゼ)を継続的に投与している14名の日本
人ムコ多糖症II型(ハンター症候群)患者にJR-141を4週間投与し、安全性、薬物動態に加
えて探索的に有効性を評価した。


・ 安全性については、投与中止に至った事象や生命を脅かすような事象は認められず、週
当たり最大2.0 mg/kg投与の忍容性が確認された。
・ 薬物動態については、血清中薬物濃度のデータから、投与量に依存したAUC並びに
Cmaxの上昇が認められた。また、投与開始21時間後までに血清中における薬物の消失
が確認された。
・ 探索的有効性については、バイオマーカーのデータから、中枢神経系症状の改善並びに
イデュルスルファーゼに劣らない全身症状への効果が示唆された。
[中枢神経系症状のバイオマーカー]
1.0 mg/kg/週又は2.0 mg/kg/週でJR-141を投与された全ての被験者で脳脊髄液
(CSF)中のヘパラン硫酸(HS)が減少した。
[全身症状のバイオマーカー]
イデュルスルファーゼから切り替えて1.0 mg/kg/週又は2.0 mg/kg/週でJR-141を投与され
た被験者において、血清中及び尿中のHS及びデルマタン硫酸(DS)、尿中のグリコサミノ
グリカンについてはイデュルスルファーゼ投与時から顕著な変動は認められなかった。


* WORLDSymposiumTM
このシンポジウムは、毎年米国で行われるライソゾーム病について基礎研究から臨床応用
をテーマとする国際学会です。(http://www.worldsymposia.org/)


以上

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