TTRエクソンヒト化マウスを用いた遺伝子治療実験の検証

2022 年2月2日
各 位
会 社 名 株式会社トランスジェニック
代表者名 代表取締役社長 福 永 健 司
(コード番号 2342 東証マザーズ)
問合せ先 取 締 役 船 橋 泰
( 電 話 番 号 03-6551-2601)


TTR エクソンヒト化マウスを用いた遺伝子治療実験の検証


当社は、2022 年 1 月 27 日付リリースでお知らせいたしましたように、東京大学医科学研
究所先進動物ゲノム分野 真下教授、C4U 株式会社との3者共同研究契約を締結いたしまし
たが、本共同研究契約は当社独自のエクソンヒト化技術(国際特許出願済み WO/2020/240876)
に基づき作製されたモデルマウスである TTR エクソンヒト化マウスを用いての研究となり
ます。当社は、それに先立って、TTR エクソンヒト化マウスの遺伝子治療実験における有用
性を検証するため、パイロット実験を行いましたので、その成果について概要を報告いた
します。
近年、ゲノム編集を用いた遺伝子操作の効率が高いことから、遺伝子治療に応用される
ようになってきました。遺伝子治療では、変異した遺伝子を正常に戻さなければならない
場合と、変異した遺伝子を破壊するだけで治療に直結する場合があります。前者は、劣性
遺伝病の場合で、2つの遺伝子が共に変異している場合に発症する疾患が該当します。後
者は、優性遺伝病の場合で、1つの遺伝子異常で発症する疾患が該当します。
TTR の変異によって優性遺伝病である家族性アミイロイドポリニューロパチー(Familial
amyloidotic polyneuropathy: FAP)が発症します。変異した TTR タンパクが末梢神経、心
臓、腎臓、消化管に沈着し、機能障害を引き起こします。この場合は、遺伝子を破壊し、
変異タンパクが産生されなくすることで、病気を治療できます。ゲノム編集では、遺伝子
破壊の効率は非常に高く、優性遺伝病の治療に大きな期待が寄せられています。そして、
TTR 遺伝子は、肝臓で発現していますので、肝細胞でゲノム編集を行う必要があります。
今回の検証実験では、ヒトでの治療を念頭に、AAV-gRNA-TTR-SaCas9 ベクター※1を作製
いたしました。本来は、細胞への感染効率が良く、ウイルス粒子内の遺伝子を肝細胞内に
持ち込み発現させることが可能な adeno-associated virus というウイルス粒子を作製しそ
れを投与することが目的ですが、簡便な方法として、ウイルス粒子ではなく、ベクターを
尾静脈から hydrodynamic tail vein injection 法で1回だけ注入し、デザインした gRNA
が効率よく TTR 遺伝子を破壊できるかどうかを、血清中のヒト TTR の測定を行うことで検
証いたしました。その結果、8匹中3匹で約 50%の低下、2匹で 35%の低下、8匹平均で
も約 30%の減少が認められました。1回のベクター投与でこれだけの効果が見られること
は、2回投与を行うこと、あるいはウイルス粒子の投与で、より効率よく TTR 遺伝子を破
壊できることが期待されます。また、エクソンヒト化マウスから得られた成果、例えばあ
る gRNA が優れた遺伝子破壊効果を持つとなれば、その gRNA は、直ちに人にも適用できる
ので、ヒトでやり直す必要がないのが大きな利点と考えられます。


当社は、本遺伝子治療実験の検証においてエクソンヒト化技術の有用性を示すとともに、
他の遺伝病の遺伝子治療実験に有効なエクソンヒト化モデルマウスの作製受託あるいは共
同開発を推進していきたいと考えております。
以上


◆ご参考
※1 ベクター
ベクターとは、目的の遺伝子や DNA、RNA を細胞に導入する遺伝子改変の際に、
外来遺伝物質を細胞に人為的に運ぶための DNA または RNA です。

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