理化学研究所とiPS細胞由来NKT細胞療法に関する共同研究契約を締結

平成 30 年3月 29 日
各 位
ブライトパス・バイオ株式会社


理化学研究所と iPS 細胞由来 NKT 細胞療法に関する共同研究契約を締結

この度、ブライトパス・バイオ株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役:永井健
一、以下「ブライトパス」)は、国立研究開発法人理化学研究所(本部:埼玉県和光市、
理事長:松本紘、以下「理研」)と共同研究契約を締結しましたので、お知らせいたしま
す。本契約に基づきブライトパスは、理研統合生命医科学研究センターが進める NKT 細胞
由来 iPS 細胞から再分化誘導した NKT 細胞を用いた新規他家がん免疫療法(以下「iPS-
NKT 細胞療法」)の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画します。
本プロジェクトは、理研が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現
拠点ネットワークプログラム 疾患・組織別実用化研究拠点(拠点 B)に採択された「NKT
細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクトおよび理研創薬・医療技術基盤
プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頚部がんを対象とする医師主
導治験が 2019 年度中をめどに開始される計画です。


NKT 細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させ
るアジュバント作用をもつ免疫細胞です。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、
自然免疫系※に属する NK 細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促します。成熟した樹状細胞
は、更に獲得免疫系※に属するキラーT 細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍
効果が高まります。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T 細胞では殺傷でき
ない MHC 陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つことは、本剤のユニークな特徴の一つ
となります。
上述のように高い抗腫瘍効果が見込まれる NKT 細胞ですが、ヒト末梢血中 T 細胞のうち
0.01%-0.1%しか存在しないため、患者自身の T 細胞を用いるキメラ抗原受容体遺伝子改変
T 細胞療法(CAR-T)などと異なり、体外に取り出し治療に必要な細胞数まで培養・増殖さ
せることが非常に難しいという課題がありました。そこで理研では統合生命医科学研究セ
ンター古関明彦免疫器官形成研究グループディレクターを中心に、この課題を解決する方
法として、iPS 細胞技術によって NKT 細胞への分化能力を持つ多能性幹細胞を無制限に増
殖させた後、NKT 細胞へ分化誘導することで、治療に十分な質と量、均一な機能と均一な
量の NKT 細胞をタイムリーに供給することを目指す研究がこれまで進められてきました。


ブライトパスは今回の理研との共同研究を実施するとともに、iPS-NKT 細胞療法の独占
的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得し、世界でも初となる iPS-NKT 細胞療
法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。





【用語解説】
※ 自然免疫系・獲得免疫系…免疫系は、大きく自然免疫と獲得免疫に分かれ、細菌・ウ
イルスなどの外来の侵入物やがん細胞などの異物を、即時に攻撃するのが自然免疫、
少し時間をかけて得られた異物の情報に基づき、より特異的な異物に対しての攻撃を
行うのが B 細胞、T 細胞といった獲得免疫です。自然免疫は、異物の排除だけではな
く、異物の特異的な情報を、樹状細胞などの抗原提示細胞を介して、獲得免疫に伝え
る重要な役割も担います。


<ブライトパス・バイオについて>
ブライトパスは、従来の標準治療の適用が困難な難治性・進行性のがんに対する治療法と
してがん治療の革新をもたらしつつある「がん免疫療法」の開発を行う創薬バイオベンチ
ャーです。国内と米国で臨床試験を実施中のがんペプチドワクチンをパイプラインとして
有するほか、細胞医薬の開発、免疫制御分子に対する抗体、がん細胞特異的な遺伝子変異
に由来するネオアンチゲンを標的とした新薬の開発を行っています。


<国立研究開発法人理化学研究所について>
理化学研究所は、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、計算
科学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています。研究成果を社会に普及
させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的
財産等の産業界への技術移転を積極的に進めています。


問い合わせ先
・ブライトパス・バイオ株式会社 管理部
Tel: 03-5840-7697
E-mail: irpr05@brightpathbio.com
https://www.brightpathbio.com/index.html





補足説明資料
2018年3月29日




(上場市場)東京証券取引所 マザーズ市場
(証券コード)4594
iPS-NKT細胞療法の特性
iPS-NKT細胞療法は、従来十分量の確保が困難であった、多面的抗腫瘍効果が期
待されるNKT細胞を、iPS化技術を活用することで、大量にかつタイムリーに確保
し、他家免疫細胞として投与する細胞療法です




NKT細胞 iPS技術

多面的な抗腫瘍効果を有 iPS-NKT細胞を分化前に
する免疫細胞
ああああ バンク化することで、
ああああ

• 自然免疫の活性 臨床効果が期待できる十
• 獲得免疫の誘導 分量の細胞を必要に
• 免疫抑制環境の改善 応じて調整可能





自然免疫と獲得免疫の抗腫瘍効果(一般論)
自然免疫は自身の抗腫瘍活性に加えて、抗原提示細胞を通じたがん抗原提示によ
り、抗腫瘍特異性の高い獲得免疫を誘導します。この多面的な免疫反応の上流に
位置する自然免疫を効果的に活性化させることで、相乗的な効果が期待されます
<自然免疫> <抗原提示細胞> <獲免疫得>
共通抗原を認識 自然免疫と獲得免疫の 特定の抗原しか認識でき
(NK細胞、NKT細胞等) 橋渡し役 ないが、殺傷力が高い
(樹状細胞等) (T細胞等)

成熟化 抗原提示⇒
成熟化した抗原 それぞれの抗原を認識す
クロス・トーク 提示細胞による る獲得免疫の活性化
抗原取得




様々な抗原放出

殺傷
殺傷



ストレス等のシグナル




(がん細胞)



NKT細胞の持つ多面的作用
NKT細胞は前頁の一般的な自然免疫の作用に加えて、更に強力な抗腫瘍効果を発揮
するための、いくつかの性質が備わっています

前項の一般的な自然免疫系細胞に加えて、NKT細胞特有の性質を赤字で示す


(NKT細胞) (樹状細胞) (T細胞)
成熟化した抗原 抗原提示⇒
提示細胞による それぞれの抗原を認識
活発なクロストーク 抗原取得 する獲得免疫の活性化




様々な抗原放出
免疫抑制環境の改善

活性化 (マクロファージ/MDSC)
殺傷 殺傷
ストレス等の
シグナル


殺傷

(NK細胞)
(がん細胞)

自然免疫による殺傷作用 獲得免疫による殺傷作用

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