当社持分法適用会社である株式会社CUREDにおける研究開発の状況についてのお知らせ

2022 年6月 15 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 免 疫 生 物 研 究 所
(コード番号:4570)
本店所在地 群馬県藤岡市中字東田 1091 番地1
代 表 者 代表取締役社長 清 藤 勉
問 合 せ 先 常務取締役業務執行責任者
中 川 正 人
兼事業グループ管理本部長
電 話 番 号 0274-22-2889(代表)
U R L https://www.ibl-japan.co.jp

当社持分法適用会社である株式会社 CURED
における研究開発の状況についてのお知らせ

株式会社CURED(以下、 「CURED」)は、当社が発行済普通株式の22.482%を所有するこ
とから当社の持分法適用会社となっている、創薬に特化したバイオベンチャーです。
CUREDは、2015年8月の創業時、免疫不全症や新型コロナウイルス抗体療法研究のメ
ッカ熊本大学エイズ学研究センター (現ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大
学キャンパス )で発見された完全ヒト型抗HIV-1抗体(以下「抗HIV抗体」 )を導入し、
当社と事業提携契約を締結いたしました。その後もリンパ球・マクロファージ・好中球
等免疫を司る細胞に作用して難病を治癒に導く画期的な新薬候補品を継続的に導入し、
感染症・癌・慢性炎症疾患の3領域からなる開発ポートフォリオを構築しています。グ
ローバルメガファーマとの大型提携を可能とするための研究開発投資が続くため、 当社
は、CUREDの損失とのれん償却を決算時に計上しています。

当社は、 CUREDの抗HIV抗体を当社の遺伝子組換えカイコ技術で生産することを目指し、
2016年4月より共同開発を行ってまいりましたが、生産技術競争環境の変化や製造コス
トの観点から、遺伝子組み換えカイコ技術による事業化を断念しました(2020年8月6
日発表「抗 HIV 抗体の製造方法の変更および資金使途変更に関するお知らせ」参照) 。
その後CUREDは、協和キリン株式会社の米国子会社BioWa Inc.と、カイコによる生産と
同様に 抗体依存性細胞傷害活性が増強されるように遺伝子改変されたチャイニーズハ
ムスター卵巣細胞DG44(ポテリジェント技術)の使用許諾契約を締結し、既に細胞培養
液1リットル当たり約2グラムの抗HIV抗体が製造可能となっています。生産系の変更に
伴い非ヒト霊長類動物を用いたブリッジング試験が必要ですが、抗HIV抗体の大量製造
に充当し得る競争的資金として、日本医療研究開発機構(AMED)の橋渡し研究プログラ
ムpreFに採択されています。
当社、CURED, 熊本大学、医薬基盤・健康・栄養研究所の4者で共同出願した「抗HIV
抗体及びその製造方法」 特許は、主要国において国内段階に移行し審査が進んでいます。

癌領域においてCUREDが開発中の治療法は、既存療法が無効となった進行癌患者自ら
の免疫力を飛躍的に向上させ、 全身の癌細胞を死滅させると同時に再発阻止をも狙う養
子免疫細胞療法です。 北海道大学遺伝子病制御研究所より導入した固形癌特異的に過剰
発現する新規癌抗原Xを認識するヒト化モノクローナル抗体の抗原認識部位を、最適な
構造を持った単鎖可変領域フラグメント(scFv)に改変後、癌患者から採取したTリン
パ球にレトロウイルスベクターによりキメラ抗原受容体(CAR)として膜表面に強制発


現させ、体外で大量培養したCAR発現Tリンパ球(CAR-T細胞)を点滴で癌患者に戻しま
す。固形癌に対するCAR-T療法は世界中で研究されていますが、正式に承認されたもの
は未だありません。
CUREDは、CAR-T細胞療法のパイオニア米国フレッド・ハッチンソン癌研究センターと
長年人的交流がある名古屋大学医学部血液・腫瘍内科と2019年11月に共同研究を開始し、
消化器系・呼吸器系・泌尿器系等の癌細胞を効率良く認識し自己増殖シグナルを持続的
に増幅する抗Xキメラ抗原受容体T細胞(抗X-CAR-T細胞)の作製に成功、名古屋大学・
北海道大学と共同で特許を出願しました。 これら固形癌の細胞株を移植した動物で薬効
をみる試験と並行し、 早期の臨床試験入りを目指して抗X-CAR-T細胞作製プロセスのGMP
化と安全性のチェック作業を進めています。この抗X-CAR-T細胞療法を適応できる癌種
を可能な限り増やすため、外科切除した様々な癌病変組織における抗原Xの発現強度を
網羅的に解析する共同研究を、北海道大学病院ゲノム・コンパニオン診断研究部門と開
始する予定です。
CUREDは、世界初のCAR-T製剤キムリア(ノバルティス)の発明者である今井千速新潟
大学医学部小児科准教授(病院教授)と2022年2月より共同研究を行っています。今井
准教授は、癌抗原を認識する抗体のscFvの代わりに、健常人のナチュラルキラー細胞が
癌化異常細胞を排除する際にその主たる機能を担うNKp44分子をCARとしてTリンパ球に
発現させ癌に反応して増幅させる技術を開発しています。NKp44が認識する分子は様々
な癌細胞に幅広く発現しているため癌種にかかわらず効果を発揮する可能性があり、 既
にNKp44-CAR-T細胞が様々な肉腫細胞を死滅させることを報告しています。 NKp44が認識
する分子は正常細胞にはほとんど発現していないため、NKp44-CAR-T細胞は副作用が少
ない安全な癌免疫療法になりうると期待されます。 CUREDはこのNKp44-CAR-T細胞に関す
る基本特許を導入しており、新潟大学医学部小児科及び名古屋大学医学部血液・腫瘍内
科と共同で当該特許の更なる強化に取り組んでいます。

慢性炎症疾患領域では、物質Aが遊走好中球にアポトーシスを誘導しマクロファージ
をM2に分極化して傷害組織の修復を促進することに着目、物質Aが炎症部位で生成する
様々な代謝物による炎症消退促進作用に基づく医療用医薬品の開発を2019年より行っ
ています。物質Aが、レニンアンジオテンシン系阻害剤の腎保護作用と協調して慢性腎
炎の進行遅延化に寄与することを、 遺伝性慢性腎炎の代表的モデル動物であるアルポー
ト症候群マウス(COL4A3-/-)を用いて確認し特許を出願しました。2021年7月には、物
質Aを安価に製造する独自技術を有する化成品メーカーと事業提携契約を締結していま
す。現在、アルポート症候群の患者に対する臨床試験の実施可能性を小児腎臓病の専門
家と慎重に検討しています。
さらに、 様々な疾患モデル動物を用いて他の実質臓器に起こる慢性炎症の治療可能性
を検討し、既にいくつかの慢性疾患を選定済みです。適応症によっては血管内投与が必
要となるため、注射剤に適した剤型の開発を精密化学メーカーに委託しています。

CUREDの経営陣は、バイオテクノロジー・臨床医学・医薬品開発の豊富な知識とネッ
トワークを駆使して内外の公的医学系研究所やバイオベンチャーから有望なシーズを
導入、 戦略的に付加価値を向上させて大手企業との提携を実現させた実績を多数有して
います。
当社は、 CUREDに対して取締役1名を派遣、同社によるイノベーションの実現を通して、
当社の企業価値向上を進めてまいります。
以上



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