カキの完全陸上養殖で“あたらないカキ”誕生に関するお知らせ

2023 年8月4日

各 位
会 社 名 株 式 会 社 ゼ ネ ラ ル ・ オ イ ス タ ー
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 吉田 秀則
(コード番号:3224 東証グロース市場)
問 合 せ 先 経営管理本部 本部長 芝田 茂樹
(TEL.03-6667-6606)




カキの完全陸上養殖で“あたらないカキ”誕生に関するお知らせ



当社は、カキの陸上養殖で、
“あたらないカキ”の完全陸上養殖に成功しましたので、下記
の通り、お知らせいたします。



【概要】

株式会社ゼネラル・オイスターは、子会社の株式会社ジーオー・ファーム(代表取締役社
長:吉田秀則)が 2012 年から沖縄県久米島で研究開発を開始し、2013 年には国立大学法人
東京大学生物生産工学研究センターと、カキの餌料となる微細藻類 ※ 1 の大量培養に関する共
同研究を行いました。

※1:藻類のうち 1 ミリメートルから 1 マイクロメートルほどの大きさである植物プランクトン。微細藻類は光合成で
有機物を生産して、水圏の生態系における食物連鎖の基盤を担っており、上位の栄養段階の生物に栄養を供給している。


これまでの研究開発により、世界初となるカキの完全陸上養殖で“あたらないカキ”が誕
生にしました。
今回の開発により、付加価値の高い完全陸上養殖の牡蠣の量産化を目指し、事業を推進し
ていきます。



【今までの問題点】

現在の浄化方法では餌とともにカキ体内に取り込んだノロウイルスを完全に取り除くこ
とが出来ず、ノロウイルスに汚染されたカキが市場流通していました。
厚生労働省の食中毒統計資料によると、ノロウイルスが流行した 2006 年から 2022 年ま
で、魚介類が原因と断定された食中毒事件は 3224 件、うち貝類が原因と断定された事件は
516 件、患者数 5866 名です。
また、 同統計による 2018 年から 2022 年までの 5 年間における病因物質別発生状況では、
病因物質の発生件数(病因物質不明数除く)の第 3 位がノロウイルスによるもので 14.4%であ


るにも関わらず、ノロウイルスの患者数(病因物質不明数除く)は全体の 42.3%を占めてお
ります。従いまして、1事件当たりの患者数が多く、感染力の強さが示されています。
また、ノロウイルスは感染力を長期間保持している点も特徴です。感染者の糞便などによ
り排出されたノロウイルスが下水処理場で完全に浄化されないまま河川へ排出され、海域に
流れ込み、それをカキが体内に取り込み、汚染されたカキを人が食べるという循環の間、感
染力を維持し続けています ※ 2 。

これまでカキのノロウイルス汚染を排除するため、浄化方法や様々な研究や取り組みが行
われてきました。生食用カキについて,出荷前に紫外線照射水などによる浄化を 20 時間程
度行っているところが多くなってきていますが、この方法ではカキの中腸腺に蓄積 濃縮さ
れたウイルスの多くは除去されるものの,完全な除去は困難であるとの見解が示されていま
す ※ 3。

※2~3 引用文献
誌名:食品衛生学雑誌 ISSN:00156426 発行元:日本食品衛生学会 著者名:国立感染症研究所 西尾治氏、
他 巻/号:46 巻 6 号 掲載ページ:p.235-245 発行年月:2005 年 12 月


また、カキのノロウイルスによるリスクは国内に留まらず、EU 各国においても発生し、
2020 年以降はフランス産カキが原因とみられる数千人に達する大規模なノロウイルス食中
毒事件が多発しています ※ 4。

これらの状況下で、市場流通されているものと同様のカキを産地から仕入れている弊社に
おいては、食品衛生法に定められた基準よりも厳しい自社基準に従った検査体制を確立し、
年間 2,000 検体以上のノロウイルス検査を実施するなど、カキのリスクを限りなく低減する
ことに取り組み、ノロウイルスが検出されないロットのみを流通しています(図 1) 。
ノロウイルス自社検査の具体的な結果として、2022 年度には検査数 2121 件を実施し、検
出数は 162 検体 ※ 5、7.6%の陽性率です。




図 1:ゼネラル・オイスター自社基準

※4:北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司氏著(2020 年 2 月 1 日 株式会社バイオ・シータ
食品衛生コラム第 71 話 「EU では貝の生食でノロウイルス食中毒」)
※5:食品衛生法で定められた生食用カキの規格基準は細菌に関する 3 種のみで、ノロウイルスは自主検査です。㈱ゼ
ネラル・オイスターのノロウイルス自社基準は国が定める 10.0 コピー未満を陰性、10.0 コピー以上を陽性という基準



に対して、リアルタイム PCR 法により 0.1 コピーでも検出されたロットは流通しません。そのため、検出数 162 検体
は自社基準による 0.1 コピー以上検出された検体数です。


【本研究の目的と得られた解決方法】

カキのリスクを無くすためには、カキを汚染しているウイルスの完全な除去方法、あるい
はウイルスを殺滅する浄化方法の開発、もしくはウイルス汚染のない環境でのカキの飼育が
必要とされてきました。

そこで、弊社では元々ノロウイルスの存在しない環境でカキを完全陸上で養殖することに
取り組んできました。
完全にノロウイルスの存在しない海水として、海洋深層水を養殖海水に使用することに着
目しました ※ 6。しかし課題となった点は、海洋深層水には人に害を与えるウイルス、細菌が
存在しない代わりに、 カキのエサとなる微細藻類(植物プランクトン)も存在ないことです。
そのため、弊社では微細藻類も海洋深層水の清浄性と富栄養性 ※ 7 を活用した大量培養技術や
無菌培養技術を確立しました。



※6:海洋深層水の清浄性にて立証
(海洋深層水研究(Deep Ocean Water Research),3(2),91-1002002 髙橋正征氏・池谷透氏著
※7:水深 200m 以深を海洋深層水といい、沖縄県久米島の海洋深層水水深は 612mです。光も届かず、植物プランク
トン等による光合成が行なわれないため、栄養塩が消費されない結果、ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素な
どが多く含まれています。
弊社は、完全陸上養殖の技術開発以外に、2016 年に国立大学法人東北大学大学院農学研究科と、海洋深層水で浄化した
カキの含有栄養成分分析と健康機能成分の高度化に関する共同研究にも取り組みました。




図 2:カキの陸上養殖事業のイメージ



国内外では陸上での種苗採卵や、稚貝と呼ばれる 1~3cm 程度までの生育はおこなわれて
いますが、その後は海域に移動し生育されています。これは稚貝以降成貝までに必要とする
大量の餌料(微細藻類)培養が困難なことが大きな要因です。
弊社では、微細藻類の大量安定培養技術、及び完全陸上で成貝まで成育させる飼育技術を確


立したことにより、ノロウイルスフリーの“あたらないカキ”※ 8 を実現しました。これによ
り、これまでリスクが高いとされていたカキに、確実な安全性をもたらすことができました
※9


また、 完全陸上養殖により生育したカキの味に関しましては、 国立研究開発法人水産研究・
教育機構との共同研究による遊離アミノ酸の分析結果より、甘味の強い牡蠣である特徴があ
げられました。また海域養殖カキとの比較により、タウリン ※ 10 、グルタミン酸 ※ 11 、アラニ
ン ※ 12 、プロリン ※ 13 、及び遊離アミノ酸トータル量が高値を示しました。アミノ酸はそれぞ
れ栄養機能性を持つもの、及びタンパク質を構成しているものが多いため、栄養価値も高い
と評価されました。



※8:“あたらないカキ”とは、ノロウイルスを始めとするウイルス、細菌類、貝毒など、カキが原因で人に害を与える
病因を含まない環境下で完全陸上養殖により生育されたカキであり、喫食者の体調、免疫反応による体調変化は除外
※9:外部検査機関における自社ノロウイルス検査実施済
※10:中性脂肪、血中悪玉コレステロールを減少させ、血圧を正常に保つ作用
※11:うまみ成分の代表で、脳の機能を活性化させる作用
※12:カキの甘味に関与、アルコール代謝を改善する作用
※13:コラーゲンの主要な構成成分


【久米島での陸上養殖事業のイメージ】




図 3:久米島での陸上養殖事業のイメージ

【今後について】

今後は IoT 技術などを駆使した量産化施設の建設を検討しています。
量産化ファーストステップは年間数十万個、その後のセカンドステップでは年間数百万個
の生産を想定しています。
現在も世界中では、リスクの高いカキの取り扱いを敬遠するホテル、百貨店が多数ありま


す。職業上カキの喫食を控えなければならない方も多数いらっしゃいます。
ノロウイルスフリーの完全陸上養殖の“あたらないカキ”の流通により、オイスターの生
食文化を守り、世界中に食の楽しみを拡大創出することを目指します。
次なる研究は、カキの栄養機能性、旨み成分をコントロールする技術開発 等です。本研究
においては、今後も国立研究開発法人水産研究・教育機構との共同研究 ※ 14 を行い、また今後
は更に各研究機関との連携を予定し、出荷前の味上げ技術や、元々栄養豊富なカキ における
栄養機能性をテーマにした研究に取り組んで参ります。

※14:契約期間令和 4 年 10 月 31 日~令和 6 年 3 月 31 日 研究課題名「カキの呈味特性に関する研究」




【持続可能な陸上養殖へ向けて】

この度誕生したカキは、沖縄・久米島の海洋温度差発電の発電後海水 ※ 15 を二次利用して
います。発電に使用された海洋深層水は清浄性や富栄養性は保たれたままで、 水温が上昇し、
※ 16
カキの生育に最適な水温 となっています。このようなクリーンエネルギーを中心とした
海洋深層水の多段利用は「久米島モデル」と呼ばれ、現在世界の島嶼地域から注目が集まっ
ています。発電後の資源を更に陸上養殖で有効活用し、 環境負荷の低減に取り組んでいます。

今後はカキの餌である微細藻類、及びカキ殻の炭素固定量の増大や、養殖排水の二次利用
など、カキの陸上養殖を通して海の豊かさと自然環境を守る持続可能な陸上養殖を目指しま
す。

※15:海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行う仕組みです。
※16:カキの生育段階によって、至適水温は異なります。海洋深層水原水の水温はカキにとって冷たい時期もあります。
陸上養殖における化石燃料や電気による加温は環境負荷、及びランニングコスト高騰という大きな問題点でした。この
課題に対し、弊社では発電後海水を利用することにより克服することができました。尚、平成 29 年度、30 年度「沖縄
県海洋温度差発電における発電後海水の高度複合利用実証事業」において、発電後海水を利用することによる経済性、
カキの成長効率性の向上を実証しています。




【今後の見通し】

本陸上養殖カキの開発における当期連結業績に与える影響は軽微であります。今後、量産
化施設の開発等で業績に与える影響が生じた場合、もしくは本量産化施設に関する新たな契
約が発生する場合は、速やかに開示いたします。




以上





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