微細藻類ユーグレナおよび特有成分パラミロンが腸管上皮細胞に作用することを示唆する研究結果を確認しました

2020 年8月 14 日

微細藻類ユーグレナおよび特有成分パラミロンが
腸管上皮細胞に作用することを示唆する研究結果を確認しました
腸管上皮-免疫系-神経系の相互関係に着目

株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社⻑:出雲充)は、東京医科⻭科⼤学の安達貴弘准教授
との共同研究により、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)およびその貯
蔵多糖であるパラミロンの腸管における影響をリアルタイムに観察し、食シグナル※1 として腸管上
皮細胞に作用することを示唆する研究成果が得られました。なお、今回の研究成果は 2020 年 7 月 30
日に『Nutrients』オンライン版に、特集号「食品に含まれるβ-グルカンと健康効果」の1つとして
掲載されました(https://www.mdpi.com/784732)。
※1 細胞内に情報伝達を活性化する食品成分のこと。細胞内カルシウム濃度を指標としている



■研究の目的
腸管は、食物の栄養を吸収するだけでなく、内分泌系や免疫系、神経系が集まる器官であり、生体
の恒常性維持に⼤切な役割を果たしています。その中でも、腸管上皮細胞は、栄養や水分の吸収機能
にとどまらず、粘膜形成などによる腸内細菌の制御と腸管免疫系の維持、そして内分泌器官として消
化管ホルモンを分泌し、知覚神経への刺激からぜん動運動・消化を促進するなど多様な役割を担って
います。当社ではこれまでに、ユーグレナおよびパラミロンが腸管内の免疫細胞や知覚神経細胞に直
接作用する可能性※2 について報告しております。今回は、腸管内の免疫細胞や知覚神経細胞に関連が
深い腸管上皮細胞において、ユーグレナおよびパラミロンが認識される可能性とその仕組みを研究
しました。具体的には、細胞内の情報伝達に関わるカルシウム(以下 Ca2+)濃度の変化を指標とし
て、ユーグレナおよびパラミロンが、腸管上皮細胞に与える影響について解析しました。
※2 2020 年 3 月 30 日のリリース https://www.euglena.jp/news/20200330/
本研究成果は、
「日本農芸化学会 2020 年度⼤会」 月 25〜28 日開催予定)にて発表し、本⼤会で初めて公表する学術的あるいは
(3
社会的にインパクトのある内容を含む発表であることを認められ、優秀発表に選出されました



■研究の内容と結果
ユーグレナおよびパラミロンは腸管上皮細胞に作用することが示唆されました
カルシウムバイオセンサー※3 を全身に発現させた遺伝子改変マウスを用いて、腸管上皮細胞の
Ca2+濃度の変化を顕微鏡で観察しました(図)
。腸管上皮細胞にユーグレナを添加すると、広範囲か
つ一過性の細胞内 Ca2+濃度の上昇が観察されました。パラミロンを添加すると、腸管上皮細胞の一
部だけに Ca2+濃度の変化が集中していました。このことから、ユーグレナに含まれるパラミロン以
外の成分は⼤部分の腸管上皮細胞に作用し、パラミロンは特定の腸管上皮細胞に作用することが示
唆されました。
※3 カルシウムバイオセンサーYellow Cameleon 3.60 (YC3.60)は、1 分子内にシアン蛍光蛋白質(CFP)と⻩⾊蛍光タンパク質
(YFP)を持ち、カルシウムに依存して構造変化を起こして 2 つの蛍光タンパク質が隣接し、CFP のみを励起(れいき)した時に
蛍光共鳴エネルギー移動により蛍光がシアンから⻩⾊に変化します。YC3.60 は 2 つの蛍光タンパク質(YFP/CFP)の蛍光強度の比
により、細胞内 Ca2+濃度をモニターできるバイオセンサーで、腸管上皮細胞などにおいて、さまざまな情報伝達が行われる時にセ
カンドメッセンジャーとして利用される細胞内 Ca2+の濃度変化を可視化することができます
図 腸管上皮細胞におけるシグナル応答※4

※4 ユーグレナを添加すると、細胞内 Ca2+濃度が高くなる細胞が確認された(腸管上皮の写真の赤⾊の部分)



腸管上皮細胞への作用を確認することは、食品成分と身体の相互作用という最も核心的な生理現
象の理解につながります。刺激された腸管上皮細胞は免疫系や神経系へのシグナル伝達を担うサイ
トカインやホルモンを分泌したり、直接、シナプス様結合している神経細胞にシグナルを伝えるこ
とにより、腸管上皮-免疫系-神経系からなる腸管ネットワークを形成するとともに、脳とも連携
し、生体の恒常性維持につながっていることが示唆されます。今回の検討から、ユーグレナおよび
パラミロンが異なるパターンで腸管上皮細胞に作用することが示されており、ユーグレナおよびパ
ラミロンの摂取が生体の恒常性維持につながる可能性を示唆しています。今後、ユーグレナおよび
パラミロンの摂取が、腸管上皮-免疫系-神経系に作用するメカニズムとその生理学的な意義、パラ
ミロンのみならず、パラミロン以外のユーグレナ由来成分の価値解明をさらに進めてまいります。
当社では、微細藻類ユーグレナおよびその含有成分の健康食品、医療分野等での利活用や食材と
しての付加価値向上を目指し、研究開発を行っていきます。
<微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)について>
ユーグレナ(和名:ミドリムシ)は、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両
方の特徴を持っており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など 59 種類の栄養素をバ
ランスよく含んでいます。なお、ユーグレナ特有の成分で β-グルカンの一種であるパラミロン
は、近年機能性についての研究が進み、食品や化粧品などのヘルスケア分野などでの活用が期待さ
れています。ユーグレナは、「栄養不足」「心身の疲労」「免疫力低下」の相互関係の事実をとら
え、健康の基盤を妨げる複合的要因に着目しています。健康の基盤を妨げる要因に左右されずに、
からだが本来持つ“つくる・はたらく・まもる”のサイクルを保ち、よりよい状態へ高めることで、
一時的ではなく、持続的な健康を叶えることが⼤切と考えています。


以上

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