産学連携の共同研究成果を発表、国際学術誌に掲載

2022 年 6 月 17 日
日本工営株式会社
東邦大学
千葉工業大学
国立研究開発法人国立環境研究所

日本工営など、産学連携の共同研究成果を発表、国際学術誌に掲載
― 多様な虫の鳴き声がリラックス効果をもたらすことを確認 ―

日本工営株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:新屋浩明、以下日本工営)と東邦大学、
千葉工業大学、国立研究開発法人国立環境研究所による研究チームは、虫の鳴き声が人にリラックス効
果をもたらす研究成果を発表しました。複数の被験者に異なる種類の虫の鳴き声を組み合わせた音源を
聞かせその印象を評価する実験を行った結果、鳴く虫の種数が増えると好ましいイメージが向上するこ
とが確認されました。本成果は、6 月 13 日に都市緑化に関する国際学術誌「Urban Forestry & Urban
(インパクトファクター※1 4.537)に掲載されました。
Greening」
今回の知見をもとに、公園や緑地造成などのグリーンインフラの整備において、多様な鳴く虫が生息で
きる自然環境を保全・創出する生物多様性の観点を織り込むことで、人々の暮らしに豊かさをもたらす
ことが期待されます。

日本工営は、グリーンインフラの付加価値を高める要素を科学的知見に基づき解析することで、人々に
とって快適な社会基盤の整備と持続可能な社会の実現を目指します。


1. 研究背景
近年、自然の中に身を置くことが人の心身に良い影響を与えることが様々な研究で分かってきました
が、景観のような視覚情報と比べて、自然界の音によりもたらされる聴覚情報が人にどう影響するかを
検証する研究は多くありませんでした。日本では古来より虫の鳴き声を楽しむ文化があり、身近な虫の
鳴き声が人の心理に好影響を及ぼすのではないかと仮説を立て、4 者合同で検証することとしました。


2. 研究内容(概要)
昆虫の種類が豊かな千葉県白井市の草原で、実験に用いるバッタの仲間 4 種(エンマコオロギ、カン
タン、キンヒバリ、スズムシ)を選定しました。
虫4種の鳴き声の音源を組み合わせた全 15 通りのサンプルを用意し、実験室で大学生被験者 65 名
にランダムで 7 通りずつ聞かせ、心理学における測定法の一つであるセマンティック・ディファレンシ
ャル法(SD 法)により各音源に対する印象を回答してもらいました。
得られた結果をもとに、因子分析や音響物理解析などの分析手法を用いて、種や種数によって鳴き声
に対する好みの程度に違いがあるかどうかを検証しました。




白井市の草原の様子 実験風景


形容詞対 好みなどに関する質問
Q1 金属性の - 深みのある Q11 嫌い - 好き
Q2 詰まった - 響きのある Q12 欲しくない - 欲しい
Q3 閉鎖的な - 開放的な
Q4 不快な - 快適な 属性
Q5 静かな - にぎやかな ・性別
Q6 暗い - 明るい ・年齢
Q7 寂しげな - 楽しげな ・現在の自然との触れ合いの頻度
Q8 醜い - 美しい ・子供の頃の野外活動の頻度
Q9 いらだつ - 和む ・虫を採取した経験の有無
Q10 そわそわする - 落ち着く ・音楽を聴く時間 etc.

SD 法による印象評価および被験者の属性に関する質問


聞かせる虫の声が 1 種類のみで、それぞれの鳴き声の好みを尋ねる質問では有意な差はありませんで
したが、種数を組み合わせると、数が増えるにしたがって、好みの得点が向上する結果となりました。
さらに因子分析を行ったところ、4 つの因子(Calm:穏やかさ、Gorgeous:華やかさ、Musicality:
音楽性、Deep:深み)が抽出され、種数が増えるに従って各因子に対する印象の得点が向上しまし
た。特に、「華やかさ」と「音楽性」の得点が顕著に増えました。
Calm
7 * 穏やかさ

0.8
6 ** 0.6
0.4
好みの得点の平均値




0.2

-0.2
-0.4
-0.6
4 -0.8
Deep Gorgeous
-1
深み 派手さ






Musicality
種数 音楽性
**p < 0.01, *p < 0.05 統計的に有意な差があることを示す。 1種 2種 3種 4種

種数と好みの得点 種数と印象の得点


実験に用いた 4 種の鳴く虫の音響スペクトルを分析したところ、種ごとに周波数の特徴が異なってお
り、聴感上の調和が得られたと考えられました。また、音の高さ、強さ、長さなどのパターンが種によ
って異なることから、複数の種の音が調和することで、リズムも多様化し、より好ましい印象を与えた
と考えられます。一般的に、自然の音には様々なリラックス効果があると言われていますが、虫の鳴き
声にも同様の心理的な回復効果があると示唆されます。なお、今回は大学生という比較的均質な属性の
集団を対象とした実験であったため、文化や年齢などの違いが結果に及ぼす影響についての分析は今後
の課題です。




3. 今後の展開
これらの情報は、例えばグリーンインフラの保全や創出の際に虫の鳴き声を活用した快適な空間整備
の方針を提示できるなど、得られた知見の幅広い活用が期待できます。

※1…学術誌の掲載論文が 1 年間に引用される回数の平均値。同分野の学術誌との比較により影響度を評価するための指標。




発表論文
タイトル:Effects of hearing diverse orthoptera sounds on human psychology
著者:Yoshihiro Tokue, Kazuko Koga, Atsumi Nakamura, Kai Osawa, Kenichi Seki, Fumiko
Imamura, Jun Nishihiro
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1618866722000553



日本工営株式会社:徳江 義宏、今村 史子
東邦大学 :古賀 和子(元理学部訪問研究員)、中村 厚美(理学部生命圏環境科学科卒業生)、
大澤 魁(同)
千葉工業大学 :関 研一
国立環境研究所 :西廣 淳

以上


<本研究成果の内容に関するお問い合わせ先>

日本工営株式会社 中央研究所技術開発センター:徳江 義宏
TEL:029-871-2073 E-mail:tokue-ys@n-koei.jp

千葉工業大学 社会システム科学部:関 研一
TEL:047-478-0468 E-mail:kenichi.seki@p.chibakoudai.jp



<本研究成果に関する報道関係のお問い合わせ先>

日本工営株式会社 コーポレートコミュニケーション室
TEL:03-5276-2454 E-mail:c-com@n-koei.co.jp

学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
TEL:03-5763-6583 E-mail:press@toho-u.ac.jp

学校法人千葉工業大学 入試広報部:大橋 慶子
TEL:047-478-0222 E-mail:ohhashi.keiko@it-chiba.ac.jp

国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
TEL:029-850-2308 E-mail:kouhou0@nies.go.jp





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