アカウミガメの甲羅から新属新種の甲殻類を発見

News Release


日本工営株式会社
2019 年 8 月 8 日

アカウミガメの甲羅から新属新種の甲殻類を発見

日本工営株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:有元龍一、以下 日本工営)先端研究開
発センター 林亮太研究員らの研究チームは、アカウミガメの甲羅の上から、体長1ミリにも満たない新
属新種の超小型甲殻類(貝形虫)を発見し、Chelonocytherois omutai(ケロノシセロイス・オオムタイ)と
命名しました。本研究成果は動物分類学の国際専門学術誌 Zootaxa に 2019 年 7 月 2 日に掲載されました。

■背景
日本工営は、生物多様性の保全、環境 DNA 等の調査・解析手法の確立や、新規ビジネスへの活用を目
的として、生物の網羅的な研究活動を行っています。それらの調査研究の中で、屋久島の砂浜に産卵のた
め上陸してきたアカウミガメの甲羅の上に生息する微小甲殻類を対象に調査研究を行いました。 現在、地
球上に見られる全てのウミガメ類は IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに掲載され、その保全は
世界的に重要な課題の一つとなっています。絶滅危惧種に指定されているアカウミガメの甲羅の上には
様々な生物が生息していることが知られていますが、肉眼で見ることができない小さな生物について詳
細に調べた研究は多くありません。

■研究成果
本研究の結果、甲羅上から採集された貝形虫は、 これまでに報告された属に含まれない新属の未記載種
であると判断され、新たにギリシャ語の「カメ:Chelono-」に由来する Chelonocytherois(ケロノシセロイ
ス)属を設けました。種名は、NPO 法人屋久島うみがめ館を主催し、これまで長期間ウミガメ類の調査
保全活動を主導してきた大牟田一美氏の名前をとって omutai(オオムタイ)と命名しました。また、ウミ
ガメの体表上に生息する貝形虫を種レベルで同定したのは世界で初めての例となります。




左: Chelonocytherois omutai ケロノシセロイス・オオムタイの雄と雌(スケールは 0.1mm)
写真提供:田中隼人博士(葛西臨海水族園)
中:アカウミガメの背甲上に付着するケロノシセロイス・オオムタイの群れ(赤丸部分)と、
ウラシマタナイス(下) 写真提供:上野大輔博士(鹿児島大学)
右: 産卵を終えたアカウミガメの背甲から付着生物を採集するところ


■今後への期待
生物多様性保全の基盤となるのは、「どこに何がいるか」という分布情報です。今回発見した新種の貝
形虫は、これまで保全対象として認識されることすらありませんでした。本研究は、これまでほとんど注
目されることのなかった、絶滅危惧種に指定されるアカウミガメの体というごく限られた場所にも未知
の生物が生息していることを明らかにしたものです。このように、地球上には名前さえつけられていない
生物がまだまだ多く残されています。このような基礎的な知見を蓄積していくことは、環境問題として大
きな課題の一つとなっている生物多様性の保全に必要不可欠なものです。日本工営は、今後も研究開発お
よび事業を通じて、生物多様性保全に向けた活動を推進してまいります。
本研究は、科学研究費助成事業の支援のもと、京都大学野生動物研究センター、NPO 法人屋久島うみ
がめ館の協力を得ながら、ウミガメ捕獲等許可と特別地域内動物の捕獲許可を受けて実施されました。


研究論文題名:Chelonocytherois omutai gen. et sp. nov. (Crustacea: Ostracoda) from the back of loggerhead sea
turtle. (アカウミガメの体表上から得られた新属新種の貝形虫について)
著者:田中隼人 1, 林 亮太 2(1 葛西臨海水族園, 2 日本工営株式会社 技術本部 先端研究開発センター)
公表雑誌:Zootaxa (動物分類学の国際専門学術誌)




―本件に関するお問合せ先―
日本工営株式会社 経営企画部 コーポレートコミュニケーション室
TEL :03-5276-2454 Email: c-com@n-koei.co.jp ホームページ:https://www.n-koei.co.jp/

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