TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示

2023 年6月 30 日
エスリード株式会社




TCFD 提言に基づく情報開示


目次


1. 気候変動に対する当社の認識 ……………………………………………………2
2. ガバナンス …………………………………………………………………………3
3. 戦略 ………………………………………………………………………………4
4. リスク管理 …………………………………………………………………………10
5. 指標と目標 ………………………………………………………………………11





1.気候変動に対する当社の認識


近年、気候変動が原因の一つとされる異常気象や自然災害が頻発しています。IPCC(気候変動に
関する政府間パネル)第 5 次報告書では、「20 世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の活動に
よる影響の可能性が極めて高い」という科学的見解が示され、「パリ協定」の採択以降、世界各国が脱炭
素へ大きく政策移行しています。


当社グループでは、「総合デベロッパーとして。都市と住まいの未来を見据えて。」を経営理念とし、「多様
化する社会のニーズへの対応を通じ、持続可能な社会に貢献する。」を社会的使命の一つとして掲げてい
ます。企業を取り巻く環境が大きく変化する中、「持続可能な社会の実現」と「企業の持続的成長」を両
立していくことが重要な経営課題であるとの認識に立ち、ESG に関する取組みを推進しています。


このような中、当社グループは、気候変動問題の重要性を認識し、当社ビジネスへの影響を分析し対応
していくことが肝要であると考え、2022 年 6 月に TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言
への賛同を表明しました。TCFD 提言に基づく情報開示を通じて、ステークホルダーの皆様との対話を進
め、分析をさらに精緻化し取組みを深化させてまいります。


当レポートでは、TCFD 提言により開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目
標」について開示致します。


ガバナンス 気候変動リスク及び機会に関する組織のガバナンス

組織のビジネス・戦略・財務計画に対する気候変動リスク及び機会に関する
戦略
実際及び潜在的な影響

リスク管理 組織が気候変動リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

指標と目標 気候変動リスク及び機会を評価・管理するのに使用する指標と目標





2.ガバナンス

当社グループは、気候変動を経営に重要な影響を与える課題の一つとして認識し、リスク管理委員会を
気候変動関連課題について検討する機関と位置づけています。


リスク管理委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、営業本部・事業本部・管理本部の本部長
及び副本部長によって構成されています。その他、必要に応じてグループ会社の役職員、内部監査室長や
その他の者が出席します。


委員会は、リスク管理規程に基づき月に 1 回以上開催され、議事内容は取締役会に報告します。





3.戦略

気候関連にともなうリスクと機会には、低炭素な社会へ移行していく過程での政策や市場、技術等の変
化によって生じる「移行リスク・機会」と、地球温暖化に伴い慢性的な気温上昇や急性的な自然災害の
激甚化によって生じる「物理的リスク・機会」に大別されます。


当社グループは、「移行リスク・機会」が大きいシナリオとして 2℃シナリオを設定し、IPCC 第 5 次報告書
の RCP2.6 シナリオや経済産業省の「グリーン成長戦略」等を参照しました。一方、「物理的リスク・機会」
が大きいシナリオとして 4℃シナリオを設定し、IPCC 第 5 次報告書の RCP8.5 シナリオを参照しました。


分析の事業範囲は、エスリード株式会社と全グループ会社を含むエスリードグループとしました。また、分
析期間は 2050 年までを想定し、2030 年までを中期、2031 年以降を長期として、相対的な事業への
影響度の大きさを大・中・小の 3 段階で分析しました。



2℃シナリオ IPCC RCP2.6 世界中で気候変動に対する厳格な対策が徹底され、地球
「グリーン成長戦略」 温暖化を抑えることに成功し、2100 年の平均気温は 18
「新たな住生活基本計画」 世紀の産業革命前に比べて 2℃前後以内にとどまる。「移
行リスク・機会」が大きいことが想定される。

4℃シナリオ IPCC RCP8.5 温暖化に関する様々な注意喚起にも関わらず、各国の足
並みが揃わず、厳格な対策は導入されないことにより、温暖
化はさらに進行し、2100 年の平均気温は 18 世紀の産業
革命前に比べて 4℃上昇し、自然災害が激甚化、頻発化
する。「物理的リスク・機会」が大きいことが想定される。




出所)環境省「IPCC 第 5 次評価報告書の概要」





<移行リスク・機会による事業への影響(2℃シナリオ)>


項目 事業への影響 影響度 期間

政策・ 省エネルギー規制の強化 大 中~長期
規制 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)対応
<リスク>
・省エネ基準引き上げによる基準適合のため原価が増加
・ZEH マンション・戸建住宅の提供により原価が増加
<機会>
・政府目標に沿った支援策の拡充
・炭素クレジット市場の創設
・ESG 融資の増加
・省エネ技術の進展により原価が減少
・省エネ物件や ZEH の需要増加


炭素税の導入 中 中期
<リスク>
・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加
・事業活動にともなう化石燃料由来の光熱費が増加
<機会>
・省エネ化に対する需要増加
・再生可能エネルギーの利用機会が増加
・HV 車や EV 車の利用機会が増加


市場・ 建材、部材等の調達原価の増加 中 中期
評判 <リスク>
・炭素集約度の高い建材、部材等の調達原価が増加
<機会>
・技術の進展、価格の低廉化


ZEH など省エネ住宅の普及 大 中~長期
<リスク>
・ZEH を含め省エネ物件の提供が遅れることによる顧客からの評価低下
<機会>
・消費者の環境負荷低減への意識の高まり
・ZEH や省エネ住宅の需要が増加


再生可能エネルギー事業の拡大 中 中~長期
<機会>
・再生可能エネルギーの需要が増加
・当社グループの綜電株式会社の事業拡大

*中期︓~2030 年 長期︓2031~2050 年





<物理リスク・機会による事業への影響(4℃シナリオ)>


項目 事業への影響 影響度 期間

慢性 屋外作業の効率の低下 小 中~長期
<リスク>
・施工現場での熱中症発生リスクが増加
・工期の遅延リスクが増加


建物や設備の劣化 小 中~長期
<リスク>
・高温多湿により建物や設備が早く劣化
・劣化点検、修繕工事の費用が増加
<機会>
・修繕工事やリフォームの需要が増加
・当社グループのイー・エル建設株式会社の修繕工事受注が増加


空調コストの増加 中 中~長期
<リスク>
・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加
・省エネ性能を高めるため原価が増加
・事業活動にともなう光熱費が増加
<機会>
・ZEH や省エネ住宅の需要が増加


急性 自然災害の増加 中 中~長期
<リスク>
・台風や集中豪雨による工期の遅延リスクが増加
・建物や設備の損傷リスクが増加
・浸水リスクが増加
<機会>
・耐久性が高い物件の需要が増加
・災害時や緊急時の建物管理の需要が増加

*中期︓~2030 年 長期︓2031~2050 年





<リスク・機会への対応策/戦略のレジリエンス>

当社グループは、環境配慮型住宅の開発とクリーンエネルギーの活用の2つを軸として、脱炭素社会の
実現へ向けた取り組みを推進しております。


(1)環境配慮型住宅の開発


①ZEH への取組み
中期的には原価の増加が見込まれるものの、市場の拡大や省エネ技術の低廉化により長期的には収
益増加が見込まれます。政府のグリーン成長戦略では、2030 年までに「新築住宅の平均で ZEH の実現
を目指す」という目標が掲げられており、政府目標に沿った支援策の拡充や省エネ技術の進展が見込ま
れ、当社グループにおいても、これらの機会を活用して ZEH 販売戸数を増加させていく所存です。また、炭
素税の導入により化石燃料由来の光熱費が増加することが見込まれるため、ZEH や省エネ物件の提供に
より販売後不動産の利用者が負担する光熱費の減少に努めます。


2022 年2月 17 日には、エスリード神戸大倉山ヒルズが投資用ワンルームマンション業界で初めて
「ZEH Oriented」認証を取得しており、業界最速供給を達成いたしました。また、経済産業省が導入し
ている「ZEH デベロッパー」登録制度において、2022 年6月に「ZEH デベロッパー」として登録認定されま
した。




エスリード神戸大倉山ヒルズ





さらに、戸建分譲事業を展開する当社グループのエスリードハウス株式会社でも ZEH 仕様の戸建を販
売しております。




エスリードハウス枚方養父丘


②NS モールド×NS コート
NS モールド×NS コートは当社グループのイー・エル建設株式会社が実用新案権を取得した、建物の外
観を損なわないタイル剥落対策工法です。タイルを使用しないタイル調意匠付けトータルシステム工法で、
タイル製作過程の成型や焼成時に発生する二酸化炭素排出を抑制します。




③枠無メーターボックスドア
当社グループのイー・エル建設株式会社が枠無メーターボックス
ドアを共同開発・特許取得いたしました。枠のないシンプルなデザ
インを採用し、CO2 排出量は材料と施工手間で約 1/2 まで抑
制されます。


④建材見直し
マンション建設に使用する建築材料及び建築製品を見直すことで建設時の CO2 排出量を削減しま
す。





(2)クリーンエネルギーの活用


①太陽光発電設備
当社グループにて電力供給事業及び太陽光発電事業を手掛ける綜電株式会社は、現在 10 基のメ
ガソーラーを保有しており、クリーンエネルギーを供給しております。クリーンエネルギー供給量は、当社のファミ
リーマンションの約 40%、約 4,800 戸の消費電力に相当します。


また、2023 年1月 31 日に綜電株式会社が 8 基目の太陽光発電所を取得するにあたり、当社グル
ープ初となるグリーンローン契約を株式会社滋賀銀行と締結いたしました。グリーンローンは資金使途が環
境に配慮したプロジェクトに限定される融資で、融資後の資金使途の管理や環境改善効果の実績報告
を通じて透明性が確保されます。綜電株式会社が策定したグリーンローン・フレームワークは、第三者評価
機関より認証を得ております。




【6基目】北海道北広島市 【7基目】福井県あわら市

②EV カーシェアリングサービス
当社が 2023 年2月に引き渡したエスリード京都梅小路公園について、居住者向けに EV カーシェアリ
ングを提供いたしました。
再生可能エネルギー需要の増加に伴い、自動車の HV 化や EV 化が進行することが見込まれます。当
社グループでは、多様化する社会のニーズに応えるべく積極的に新たな取り組みにチャレンジしていきます。




エスリード京都梅小路公園


③電気自動車の活用
エスリードの社用車の一部をガソリン車から PHV(プラグインハイブリッド車)に変更いたしました。エスリ
ード本社敷地内に EV 急速充電設備を設置する予定です。





4.リスク管理

当社グループは、気候変動にともなうリスクと機会を経営に重要な影響を与える課題の一つとして認識
し、代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理委員会において審議します。リスク管理委員会は、本
情報開示で掲げたシナリオ分析に基づき戦略の改善に努め、対応の進捗を統括します。


委員会は、リスク管理規程に基づき、各本部及び子会社のリスク管理責任者及びリスク管理担当者
を置いています。また、委員会の事務局は管理本部が務めます。





5.指標と目標

気候変動にともなうリスク及び機会を評価管理する指標として、Scope1・2・3 の CO2 排出量を算出
しました。
また、Scope1・2 の削減目標については、2021 年度の排出量(t-co2)と比較して、2030 年まで
に△46%、2050 年までに△100%と定めております。そして、Scope3 の削減目標については、2021 年
度の面積当たり排出量(t-CO2/㎡) ※1 と比較して、2030 年までに△30%、2050 年までに△
100%と定めております。※2


<排出量>
(単位︓t-CO2)
2021 年度
2022 年度
(基準年)

Scope1 75.0 128.9

Scope2 624.4 897.0

Scope1・2 合計 699.4 1,025.9


(単位︓t-CO2/㎡)
2021 年度
2022 年度
(基準年)

Scope3 6.3 5.9


<削減イメージ>




※1 ㎡︓当社グループが開発したマンション及び戸建等の建築物の延床面積
※2 前提条件︓第6次エネルギー基本計画の 2030 年の電源構成の実現
社会情勢により前提条件に変更があった場合、排出削減目標を再検討する可能性があります。





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