TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示

News Release
2022 年6月 30 日
エスリード株式会社




TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示



当社グループは、「総合デベロッパーとして。都市と住まいの未来を見据えて。」を経営理念とし、「多様化
する社会のニーズへの対応を通じ、持続可能な社会に貢献する。」を社会的使命の一つとして掲げていま
す。
企業を取り巻く環境が大きく変化する中、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長を両立していくこ
とが重要な経営課題であるとの認識に立ち、ESG に関する取組みを推進しています。
近年、気候変動が原因の一つとされる異常気象や自然災害が頻発しています。IPCC(気候変動に関
する政府間パネル)第 5 次報告書では、「20 世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の活動による
影響の可能性が極めて高い」という科学的見解が示され、「パリ協定」の採択以降、世界各国が脱炭素へ
大きく政策移行しています。
当社グループにおいても、気候変動問題の重要性を認識し、当社ビジネスへの影響を分析し対応してい
くことが重要であると考え、2022 年 6 月に「TCFD」提言への賛同を表明しました。「TCFD」提言に基づく
情報開示を通じて、ステークホルダーの皆様との対話を進め、分析をさらに精緻化し取組みを深化させてま
いります。


当レポートでは、「TCFD」提言により開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目
標」について開示致します。


ガバナンス 気候変動リスク及び機会に関する組織のガバナンス

戦略 組織のビジネス・戦略・財務計画に対する気候変動リスク及び機会に関する
実際及び潜在的な影響

リスク管理 組織が気候変動リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

指標と目標 気候変動リスク及び機会を評価・管理するのに使用する指標と目標





1.ガバナンス


当社グループは、気候変動を経営に重要な影響を与える課題の一つとして認識し、リスク管理委員会を
気候変動関連課題について検討する機関と位置づけています。
リスク管理委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、営業本部・事業本部・管理本部の本部長及
び副本部長によって構成されています。その他、必要に応じてグループ会社の役職員、内部監査室長やそ
の他の者が出席します。
委員会は、リスク管理規定に基づき月に 1 回以上開催され、議事内容は取締役会に報告します。


2.戦略


気候関連にともなうリスクと機会には、低炭素な社会へ移行していく過程での政策や市場、技術等の変
化によって生じる「移行リスク」と、地球温暖化に伴い慢性的な気温上昇や急性的な自然災害の激甚化
によって生じる「物理的リスク」に大別されます。
当社グループでは、「移行リスク・機会」が大きいシナリオとして①2℃シナリオを設定し、IPCC 第 5 次報
告書の RCP2.6 シナリオや経済産業省の「グリーン成長戦略」等を参照しました。一方、「物理的リスク・機
会」が大きいシナリオとして②4℃シナリオを設定し、IPCC 第 5 次報告書の RCP8.5 シナリオを参照しまし
た。
分析の事業範囲は、エスリード株式会社と全グループ会社を含むエスリードグループとしました。また、分析
期間は 2050 年までを想定し、2030 年までを中期、2031 年以降を長期として、相対的な事業への影
響度の大きさを大・中・小の 3 段階で分析しました。


①2℃シナリオ IPCC RCP2.6 世界中で気候変動に対する厳格な対策が徹底され、地球温暖化を
抑えることに成功し、2050 年の平均気温は 18 世紀の産業革命前
「グリーン成長戦略」
に比べて 2℃前後以内にとどまる。「移行リスク・機会」が大きいことが
「新たな住生活基本計画」
想定される。


②4℃シナリオ IPCC RCP8.5 温暖化に関する様々な注意喚起にも関わらず、各国の足並みが揃
わず、厳格な対策は導入されないことにより、温暖化はさらに進行し、
2050 年の平均気温は 18 世紀の産業革命前に比べて 4℃上昇
し、自然災害が激甚化、頻発化する。「物理的リスク・機会」が大き
いことが想定される。





出所)環境省「IPCC 第 5 次評価報告書の概要」


【分析結果】


①2℃シナリオ


<移行リスク・機会による事業への影響と対応策>
移行リスクとして事業への影響度が大きいのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)対応です。中
期的には原価の増加が見込まれるものの、市場の拡大や省エネ技術の低廉化により長期的に収益増加
が見込まれます。政府のグリーン成長戦略では、2030 年までに「新築住宅の平均で ZEH の実現を目指
す」という目標が掲げられており、政府目標に沿った支援策の拡充や省エネ技術の進展が見込まれ、当社
グループにおいても、これらの機会を活用して ZEH 販売数を増加させていく所存です。
また、炭素税の導入により化石燃料由来の光熱費が増加することが見込まれるため、ZEH や省エネ物
件の提供により販売後不動産の利用者が負担する光熱費の減少に努めます。弊社グループの事業活動
においても再生可能エネルギーの利用や営業車の HV 化や EV 化を推進していきます。さらに、再生可能
エネルギー需要の増加が見込まれるため、当社グループの綜電株式会社の事業拡大を見込んでいます。
中長期的に、ZEH を含め省エネ物件の提供や再生可能エネルギー事業による収益増が、総じて負の
財務影響を上回ると分析しました。





項目 事業への影響 影響 期間 対応策



政策・ 省エネルギー規制強化 大 中~ ・ZEH-M 開発を推進
2022 年2月に投資用分譲ワンル
規制 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)対応 長期
ー ム マ ン シ ョ ン で 業 界 初 の 「ZEH
<リスク>
Oriented」BELS 認証取得
・省エネ基準引き上げによる基準適合のため原価が増加
・ZEH マンション・戸建住宅の提供により原価が増加
・経済産業省の ZEH デベロッパー
<機会>
に登録認定(2022 年 6 月)
・政府目標に沿った支援策の拡充
・炭素クレジット市場の創設
・ZEH 仕様の戸建販売促進
・ESG 融資の増加
・省エネ技術の進展により原価が減少
・省エネ物件や ZEH の需要増加


炭素税導入 中 中期 ・ZEH、省エネ物件の提供
<リスク> 一部物件で居住者向け EV カーシェ
アリングサービスを開始
・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加
・事業活動にともなう化石燃料由来の光熱費が増加
・再生可能エネルギー由来の電力
<機会>
利用を推進
・省エネ化に対する需要増加
・再生可能エネルギーの利用機会が増加
・営業車の HV 化、EV 化(急速
・HV 車や EV 車の利用機会が増加
充電器含む)を推進


市場・ 建材、部材等の調達原価が増加 中 中期 ・建築材料の見直し、関連業界と
評判 <リスク> の連携
・炭素集約度の高い建材、部材等の調達原価が増加 タイル剥落対策工法「NS モールド
×NS コート」の実用新案権を取得
<機会>
・技術の進展、価格の低廉化


ZEH など省エネ住宅の普及 大 中~ ・経済産業省の ZEH デベロッパー
<リスク> 長期 に登録認定
・ZEH を含め省エネ物件の提供が遅れることによる顧客からの
評価低下 ・ZEH-M 開発を推進
<機会>
・消費者の環境負荷低減への意識の高まり ・スマートシティ開発を推進
・脱炭素商品への嗜好が上昇 枚方市で ZEH 相当の環境性能
+IoT スマートホームの街づくりを
・ZEH や省エネ住宅の需要が増加
計画


再生可能エネルギー事業の拡大 中 中~ ・太陽光発電事業の拡大
<機会> 長期
・再生可能エネルギーの需要が増加 ・高圧一括受電契約の拡大
・当社グループ綜電株式会社の事業拡大

*中期︓~2030 年 長期︓2031~2050 年





(シナリオ分析を踏まえた取り組み)
2023 年 1 月に投資用分譲ワンルームマンション「(仮称)神戸市中央区楠町 3 丁目」を竣工予定で
す。2022 年 2 月 17 日に当社物件初となる「ZEH Oriented」の BELS 認証を取得しました。


■物件概要(予定)

名 称 (仮称)神戸市中央区楠町 3 丁目
所 在 地 兵庫県神戸市中央区楠町 3 丁目 4-2
構 造 規 模 鉄筋コンクリート造、地上 11 階
総 戸 数 138 戸
竣 工 日 2023 年1月中旬(予定)
引 渡 日 2023 年1月下旬(予定)




〈本物件に採用する最先端仕様〉

当社グループにて建設・リフォーム事業を手掛けるイー・エル建設株式会社が実用新案権を
タイル剝落対策工法 取得したタイル剝落対策工法「NS モールド×NS コート」を採用することにより、建物の外観
は損なわずタイル剥落による落下を完全に防止します。
SD-NET 株式会社つなぐネットコミュニケーションズが提供する日本初(マンション一括インターネットサー
by UCOM 光レジデンス ビスで住戸ごとに優先制御できるサービスにおいて/2021 年 5 月時点、つなぐネットコミュニケ
「Connectix」 ーションズ調べ)の通信オプションサービスです。
業界初の高セキュリティマンションとして、オートロックから住戸入室まで解錠機能をカードキー
ドアロックセキュリティー 又はスマートフォンのみとする ASSA ABLOY 社のドアロックセキュリティシステムを採用します。
入居者動線から物理キーと鍵穴を排除することにより、安全安心な暮らしをサポートします。




※取組事例の詳細については 2022 年3月期決算説明資料も
ご参照ください。





<物理リスク・機会による事業への影響と対応策>
物理リスクとして事業への影響度が中程度あると考えられるのが、気温上昇により空調利用頻度が増え
空調費用の増加が見込まれることと、自然災害の増加への対応です。移行リスクの場合と同じく、販売後
不動産の利用者の光熱費負担を減少させる ZEH や省エネ住宅への需要が増加すると見込まれるため、
ZEH を含め省エネ物件の提供を推進していきます。
自然災害への対応としては、耐久性が高い物件や災害時の管理への需要が増加すると見込まれます
が、エスリードグループでは躯体構造部分や設備面など将来の資産価値を考えて独自のノウハウを取り入
れています。また、当社グループのエスリード建物管理株式会社は、地震や台風、集中豪雨といった天災
やその他緊急時に 24 時間 365 日対応を行っています。
中長期的に、ZEH を含め省エネ物件の提供や当社グループであるイー・エル建設株式会社の修繕工
事等の受注拡大が、総じて負の財務影響を上回ると分析しました。


項目 事業への影響 影響 期間 対応策



慢性 屋外作業の効率低下 小 中~ ・安全な労働環境の確保
<リスク> 長期 ・余裕のある引き渡しスケジュール
・施工現場での熱中症発生リスクが増加 の確保
・工期の遅延リスクが増加 ・施工業者への要請


建物や設備の劣化 小 中~ ・劣化点検や修繕工事対応
<リスク> 長期
・高温多湿により建物や設備が早く劣化 ・修繕工事やリフォームの受注
・劣化点検、修繕工事の費用が増加
<機会>
・修繕工事やリフォームの需要が増加
・当社グループであるイー・エル建設株式会社の修繕工事受注
が増加


空調コストの増加 中 中~ ・ZEH、省エネ物件の提供
<リスク> 長期
・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加 ・事業活動における省エネ対応
・省エネ性能を高めるため原価が増加
・事業活動にともなう光熱費が増加
<機会>
・ZEH や省エネ住宅の需要が増加


急性 自然災害の増加 中 中~ ・BCP 対応の強化
<リスク> 長期
・台風や集中豪雨による工期の遅延リスクが増加 ・耐久性の高い物件の提供
・建物や設備の損傷リスクが増加
・浸水リスクが増加 ・災害時や緊急時の建物運営管
<機会> 理の強化
・耐久性が高い物件の需要が増加
・災害時や緊急時の建物管理の需要が増加

*中期︓~2030 年 長期︓2031~2050 年




3.リスク管理


当社グループは、気候変動にともなうリスクと機会を経営に重要な影響を与える課題の一つとして認識
し、代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理委員会において審議します。リスク管理委員会は、本
情報開示で掲げたシナリオ分析に基づき戦略の改善に努め、対応の進捗を統括します。
委員会は、リスク管理規定に基づき、各本部及び子会社のリスク管理責任者及びリスク管理担当者を
置いています。また、委員会の事務局は管理本部が務めます。


4.指標と目標

気候変動にともなうリスク及び機会を評価管理する指標として、Scope1・2 の CO2 排出量を算出し
ました。また、2030 年までの Scope1・2 の削減目標を 2021 年度と比較して△46%、2050 年まで
の削減目標をカーボンニュートラルの達成と定めております。


<排出量・削減目標>


2021 年度
排出量(t-CO2)
Scope1 75.0
Scope2 624.4
Scope1・2 合計 699.4


<削減イメージ>




以上





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