オハラの固体添加材「LICGC(TM)PW-01」によりリチウムイオン電池の寿命が4倍長持ち

Press Release

2020 年 3 月 12 日
株式会社オハラ



オハラの固体添加材「LICGCTM PW-01」により
リチウムイオン電池の寿命が 4 倍⻑持ち
株式会社オハラ(本社:神奈川県相模原市、代表取締役社長執行役員:齋藤弘和)は、このたび「LICGCTM PW-01」
を正極に微量添加することで、リチウムイオン電池の劣化を抑え、長寿命化させる機能を見出しました。電池容量
劣化が加速的に進む高温環境(60℃)において、電池容量が 10%減少するまでの充放電繰り返し回数(サイクル数)
が 4 倍多くなることを確認しました。立命館大学の協力のもと、 「LICGCTM
この機能発現のメカニズム解明を進め、
PW-01」を添加した正極において、繰り返し充放電した正極内の活物質粒子の表面劣化の進行と粒子表面上に形成
される皮膜生成量が抑制され、リチウムイオン電池の長寿命化に寄与することを明らかにしました。
既に見出されている「LICGCTM PW-01」の正極への微量添加によるリチウムイオン電池の高電流入出力、低温
「LICGCTM PW-01」は複数の改善効
特性などの性能向上効果に、今回見出された長寿命化の効果が加わることで、
果を発揮する固体添加材となります。
オハラは、こうした長寿命化と性能向上の両立が不可欠な車載用途をはじめ、今後各種用途で需要が増加すると
みられるリチウムイオン電池向け固体添加材として、採用に向けた活動を加速してまいります。




オハラはリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス「LICGCTM PW-01」を車載電池や民生電子デバイスに用い
られているリチウムイオン電池の正極に微量添加することで、電池の寿命(サイクル容量維持率、保存特性評
価)が大幅に向上することを確認しました。使用可能温度範囲(-20~60℃)で劣化が加速的に早くなる 60℃
での評価は次の通りです。


・容量維持率が 10%容量減少(90%容量維持)に至るまでの充放電回数が 4 倍長持ちになりました
(下記、左図維持率 90%でのサイクル回数比較)。
・満充電保存 1 ヵ月後の電池容量(V×Ah=Wh)は、未添加に比べて 11%増加しました。保存前の状態で 90%放電
となる 3.6V 到達時の放電容量(Ah)は 56%増加しました。
高温暴露や充電する度に進行する正極の劣化を抑制して、電池容量を長持ちさせる効果を見出しました。





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このように見出した長寿命化の効果を、立命館大学の協力により、正極活物質の表面の極近傍状態を X 線吸収
分光(XAS)により捉え「LICGCTM PW-01」の微量(1%)添加が正極活物質の表面近傍で生じる抵抗層の生成
を抑制する効果を確認しました。
1)室温 25℃での初期充放電後において、「LICGCTM PW-01」を 1%添加した正極中の活物質コバルト酸リチウ
ム(LCO)の粒子表面上に生成される皮膜厚さが薄くなることを XAS(立命館大学)から確認しました。
2)60℃500 回充放電サイクル後の LCO 粒子表面の皮膜厚さは、
「LICGCTM PW-01」を添加した正極の方が薄い
状態であることが確認できました。
3)60℃500 回充放電サイクル後の正極活物質 LCO 粒子表面において、
「LICGCTM PW-01」を添加した正極のコ
バルトの還元状態の進行が抑えられていることが確認できました。
[XAS に用いたサンプルは、右記条件でオハラで作製。初期:充電 4.35V CC-CV 0.05C、放電 3.0V 0.1C 、
温度 25℃、サイクル後:充電放電 4.35-3.0V 1C、温度 60℃)]




立命館大学ご協力にて、同大学 SR センターの放射光を用いた XAS により解析


これらの XAS 測定結果から、LCO 粒子の表面極近傍の変化に伴うリチウムイオン電池の劣化 1,2 に対する抑制
効果が働いたことを示していると考えられます。
電池内の極微量水分(H2O)と電解質塩 LiPF6 の化学反応により生成した弗酸(HF)が正極活物質表面を劣
化させることは良く知られており、 「LICGCTM PW-01」はこの弗酸発生を抑える機能を有しています。そのた
め、正極に「LICGCTM PW-01」を添加することで、正極活物質表面近傍の抵抗層(表面上の皮膜生成、表面付
近の組成変化による還元状態)の生成に関与する HF 量を低減させることができると考えられます。
「LICGCTM PW-01」を微量添加した正極を用いたリチウムイオン電池の内部では、電池性能を劣化させる正
極の抵抗増加の要因となっている活物質表面上の皮膜生成と正極活物質表面の還元を抑制する働きがあること
を解明いたしました。リチウムイオン電池が長寿命化することと併せて、正極電池反応の抵抗(電荷移動抵抗)
を下げて、高レート入出力特性、低温特性の性能を高めることが可能です。


参考文献:1. Electrochimica Acta 277(2018)59-66
2. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 11597–11601




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【LICGCTM の特徴】

オハラは、他社に先駆け 1995 年に酸化物系の無機固体電解質であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミッ
クス「LICGCTM」を開発しました。「LICGCTM」は酸化物系固体電解質のなかでも高いイオン伝導度をもち、
また、大気中および水や有機溶剤中で安定かつ不燃性を有する極めて安全性の高い材料です。現在、LICGCTM」

は、全固体リチウムイオン電池およびリチウム空気電池の固体電解質やリチウム資源回収・精製用選択透過膜
として、様々な研究開発機関において利用されています。


【会社紹介】
オハラは 1935 年の創業以来、光学ガラスのリーディングカンパニーとして、デジタルカメラをはじめとし
た各種光学機器向けのガラス素材を開発・供給しています。
また、光学ガラスで培ったナノテクノロジー技術をもとに、様々なガラスセラミックスの開発も行っており、
「LICGCTM」のほか、耐衝撃・高硬度クリアガラスセラミックス「ナノセラム TM」や、極低膨張ガラスセラ


ミックス「クリアセラム TM-Z」等を展開しています。


【会社概要】
社名 株式会社 オハラ
所在地 〒252-5286 神奈川県相模原市中央区小山 1-15-30
代表者 代表取締役社長執行役員:齋藤弘和
事業内容 光学ガラス・特殊ガラスの製造・販売
資本金 58 億 5 千 5 百万円
従業員数 436 名
TEL 042-772-2101(代)
FAX 042-774-1071
MAIL sale@ohara-inc.co.jp
URL https://www.ohara-inc.co.jp


【本件に関するお問合せ】
株式会社オハラ
グローバル市場開拓推進室
担当 加藤高志
TEL 042-861-2623(ダイヤルイン)
FAX 042-774-1071
MAIL tkatoh@ohara-inc.co.jp





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