油性ゲルの構造に着目した新たな製剤化技術の確立に成功

News Release
2019 年 4 ⽉ 8 ⽇




油性ゲルの構造に着⽬した新たな製剤化技術の確⽴に成功
〜温度変化によらず狙いの使い⼼地を保つ製剤を開発〜

株式会社ミルボン(代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)は、油性ゲルの構造に着⽬した新たな製剤化技術の確⽴に成
功しました※。
油性ゲルとは、液状の油やエタノールなど⽔以外の液体を固めたものを指します。これまで油性ゲルの製剤は、温度に
よって使い⼼地(取り硬さ、伸び、塗布性、仕上がり)が変化するという課題がありました。これは油性ゲルの構造が温
度変化の影響を受けやすく、崩れてしまうことが原因でした。本技術では、特定のライスワックス*1 を⽤いることで、温度の
変化に対して安定な構造をもつ油性ゲルの形成に成功しました。この技術を⽤いることで、温度によらず⼀定の使い⼼
地を保つ製剤の開発が可能になりました。本技術は 2019 年夏ごろ全国発売予定のスタイリング剤をはじめとして、今
後ミルボンの製品に活⽤していく予定です。なお、本研究成果は以下の外部発表にて報告しました。
※特許出願済み


【学会発表】
発表会︓⽇本化学会 第 99 春季年会
発表タイトル︓特定のライスワックスが形成するオルガノゲルの温度特性と化粧品としての応⽤
発表者︓井⼝ 亮, 瀧野 雄介, 堀内 照夫
発表⽇︓2019 年 3 ⽉ 16 ⽇


【研究の背景】
化粧品製剤の⼀つである"バーム"は、⼀般的に油性ゲルを⽤いた製剤で、髪や肌にツヤと保湿感を与えることに優れ
ており、多くの化粧品で⽤いられています。また近年は、環境や⼈への優しさから天然由来成分に対するお客様の関⼼
が⾼く、そのような理由から天然由来の固形油であるミツロウ*2 を⽤いたバームが⽀持されています。しかし、ミツロウを⽤
いたバームは「夏季に柔らかくなり部分的に液状化する」や「冬季は硬くなり取り出しづらい」など、温度によって使い⼼地
が変化するという課題があります。これは温度の影響を受けて製剤の構造が変化することが原因であり、そのため⼀定の
使い⼼地を保つことが困難でした。そこでミルボンでは、お客様がもつ天然由来成分への関⼼に応えながら、温度による
使い⼼地の変化を解決することを⽬指し、温度による構造変化が⼩さい製剤の開発に取り組みました。


【研究の成果】
〜液状の油を固形にする天然由来の固形油「ライスワックス」の発⾒〜
液状の油を固形にする天然由来成分を探索した結果、特定のライスワックスが、少量でたくさんの液状油を固形にす
ることを⾒出しました。3%のライスワックスと 97%の液状油を加熱して溶かした後、室温まで冷却すると、その混合物は
傾けても流動せず油性ゲルを形成していることが確認出来ました (図 1)。さらにこの油性ゲルは 50℃で保管しても
25℃のものと同様の外観でした。⼀⽅、ミツロウの場合、10%以下の濃度では 50℃で流動し、50℃で流動しないため
には 15%以上のミツロウが必要でした。そこで、50℃でも流動しなかったライスワックスの油性ゲルは、構造に特徴をもつ
と考え、さらに実験を⾏いました。
-1-
以降の実験では、機器を⽤いた測定で、25℃での試料の硬さが同程度であったライスワック 5%配合油性ゲルとミツ
ロウ 20%配合油性ゲルについて実験を実施しました。




〜ライスワックスを⽤いた製剤の構造解明と使い⼼地の評価〜
まず、異なる温度下での油性ゲルの状態を確認するために、ゲルの内部構造が観察出来る偏光顕微鏡観察*3 をお
こないました。その結果、ライスワックスを⽤いた油性ゲルは、規則性のある構造をもち、10℃から 50℃の範囲で規則性
を保つことが明らかとなりました。⼀⽅で、ミツロウを⽤いた油性ゲルでは、25℃で⾒られた規則性のある構造が 50℃で
顕著に消失していることが確認されました(図 2)。この実験からライスワックスが形成した油性ゲルは、温度変化に対して
安定な構造をもつことが分かりました。そこで次に、構造が安定であれば使い⼼地も保てる可能性が⾼いと考え、油性ゲ
ルの触感評価を実施しました。
その結果、ライスワックスが形成する油性ゲルは、ミツロウの場合に⽐べて温度によって使い⼼地が変化しにくいことが触
感評価から確認出来ました(図 3)。さらに、使い⼼地が保たれていることを客観的に証明するために、動的粘弾性測定
*4
を実施しました。測定の結果、ライスワックスが形成する油性ゲルは温度による硬さの変化が⼩さいことが⽰されました
(図 4)。
以上の実験から、ライスワックスが汎⽤的なミツロウに⽐べて少量で効率的、かつ、温度に対して安定な油性ゲルを形
成することを⾒出しました。また、ライスワックスが形成する油性ゲルが温度変化に対して⼀定の使い⼼地を保つことが出
来るのは、温度に対して安定な構造を形成するためであることが明らかになりました。




《⽤語解説》
*1 ライスワックス
コメヌカから得られる固体油脂。
*2 ミツロウ
ミツバチの巣から得られる固体油脂。
*3 偏光顕微鏡観察
観察対象が結晶や液晶のような複屈折物質であるかどうかを観察する⼿法。本研究では、製剤が規則性のある構
造であるかどうかを評価するために⽤いた。
*4 動的粘弾性測定
弾⼒や粘りなど物質の⼒学的性質を測定する⼿法。本研究では製剤の硬さを数値化するために⽤いた。数値が⼤
きいほど硬く、⼩さいほど柔らかい。




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《参考資料》




図 1 各ワックス配合濃度における所定温度での試料の状態
試料を所定温度で 24 時間保管した後、45 度傾けて撮影した。
固形であった試料は、⾚塗りで⽰した。



ライスワックスを 3%以上配合することで 25℃、50℃で流動しない固形の油性ゲルが形成出来た。




-3-
10℃ 25℃ 50℃




















図 2 油性ゲルがもつ構造の温度による変化
25℃での硬さが同程度であったライスワックス 5%配合油性ゲルと
ミツロウ 20%配合油性ゲルを偏光顕微鏡で観察した。
構造に規則性がある場合、⻩⾊と⻘⾊の像が映し出される。


ライスワックスが形成する油性ゲルは 10℃、25℃、50℃において、
⻩⾊と⻘⾊で⽰される規則性のある構造が保持されている。
ミツロウの油性ゲルは 50℃において、⻩⾊と⻘⾊で⽰される規則性のある構造が顕著に消失している。




柔らかい 25℃と同等 硬い

50℃保管
試料


10℃保管
試料

図 3 温度に対する油性ゲルの触感の変化 (○:ライスワックス 5%、○:ミツロウ 20%)

ジャーカップに⼊った試料を指先で取り出す際の硬さをパネラー8 名で評価した(右図)。
25℃での硬さを基準にして 50℃、10℃の試料の触感の変化を評価した。
触感評価の様子

ライスワックスが形成する油性ゲルは
50℃と 10℃において、触感の変化が⼩さい。

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◆ :G’ ライスワックス △ :G’ ミツロウ
● :G” ライスワックス □ :G” ミツロウ




図 4 温度に対する油性ゲルの動的粘弾性の変化

ライスワックス 5%配合油性ゲルとミツロウ 20%配合油性ゲルの
動的粘弾性測定の結果を温度に対してプロットした。




ライスワックスが形成する油性ゲルは、
温度による硬さの変化が⼩さいことが⽰された。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社︓東京都中央区、社⻑︓佐藤⿓⼆、証券コード︓4919(東証1部)




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