世界初 ダメージを受けた角層の保湿力を回復する成分を発見

News Release
2019 年 3 ⽉ 15 ⽇



世界初 ダメージを受けた⾓層の保湿⼒を回復する成分を発⾒
〜SPring-8*1 を⽤い⾓層を分⼦レベルで解析することに成功〜



株式会社ミルボン (本社︓東京都中央区、代表取締役社⻑ 佐藤 ⿓⼆ 以下、ミルボン) と株式会社コーセー
(本社︓東京都中央区、代表取締役社⻑ ⼩林 ⼀俊 以下、コーセー)は、東北⼤学 盛⽥ 伸⼀ 准教授とともに、
肌表⾯の⾓層がダメージを受けた際の⾓層中タンパク質の構造変化を分⼦レベルで評価し、それに伴う⽔の結合状態
の変化を可視化する新技術を確⽴しました。さらに、ダメージを受けた⾓層中タンパク質の構造を再⽣し、⽔の結合状
態を回復させる成分を、世界で初めて⾒出すことに成功しました※。この成果を、今年発売する新商品に応⽤していきま
す。今回の研究成果は、下記の学会にて発表予定です。 ※特許出願済み



【外部発表】
発表会 ︓第 19 回⽇本蛋⽩質科学会年会
タイトル ︓放射光⾚外顕微鏡を⽤いた⽪膚ダメージ時の⾓層蛋⽩質の⼆次構造変化と⽔の結合状態変化の解析
発表者 ︓ 古⽥ 桃⼦ 1、坂⽥ 修 2、上原 静⾹ 2、猪⼜ 顕 2、盛⽥ 伸⼀ 3、伊藤 廉 1
所属︓1 株式会社ミルボン、2 株式会社コーセー、3 東北⼤学

発表⽇ ︓2019 年 6 ⽉ 24 ⽇〜6 ⽉ 26 ⽇


【研究の背景】
肌の最外層に位置する⾓層は、約 80%がケラチンタンパク質で構成される死細胞で、乾燥や紫外線、⼤気汚染物
質などの外的刺激から、肌を守るバリア機能の役割を担っています。
⾓層のバリア機能に関する研究事例は多数あり、美しい肌を保つためには⾓層内の⽔分量が重要であることも報告
されている中で、肌を美しく健康に保つためのスキンケアとして、⾓層に⽔分や油分を補うことが⼀般的に⾏われています。
しかし、外的刺激によりダメージを受けた⾓層のケラチンタンパク質の構造変化に関する研究事例はあまりなく、また、
⼀度ダメージを受けてしまうと、元の状態には戻せないと考えられていることから、⾓層のダメージに着⽬したスキンケア⽅
法も乏しいのが現状です。
このような背景があり、髪と頭⽪の研究を⻑年に渡り取り組んできたミルボンと、同じく⻑年に渡り、⽪膚科学研究・美
容成分開発に取り組んできたコーセーでは、両社の研究領域の強みを⽣かし、ミルボンの持つ「髪のケラチンタンパク質」
への測定・解析技術を、「肌のケラチンタンパク質」の解析に応⽤することで、ダメージを受けた⾓層が回復する有⽤成分
の探索に取り組みました。




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【研究の成果】
⼤型放射光施設 SPring-8 の BL43IR ⾚外顕微鏡を⽤いてヒト肌⾓層を測定し、得られた IR スペクトル*2 に対
して東北⼤学 盛⽥ 伸⼀ 准教授の協⼒のもと構築した解析技術を適⽤したところ、⾓層中タンパク質の分⼦構造の
情報を得ることに成功しました。
通常、タンパク質は分⼦内に規則的な構造を持ち、それらの構造が正しく保たれることで機能を発揮します。ところが
肌⾓層に対して酸化ダメージ処理を⾏うと、ダメージを受けた⾓層中タンパク質の構造が乱れてしまうことを、世界で初め
て分⼦レベルで解析・可視化しました(図 1)。
さらにダメージを受けた肌⾓層に含まれる⽔の状態を SPring-8 にて解析したところ、⾓層中タンパク質と⽔分⼦の結合
状態が変化し、本来であれば環境によらず肌⾓層に保持されるべき⽔分である結合⽔*3 の量が低下してしまうことも突
き⽌めました。
そこで、ダメージによってタンパク質構造が乱れ、その結果本来抱えているべき⽔分である結合⽔までも減少した肌⾓
層の状態を改善する成分の探索に取り組みました。その結果、未成熟なリンゴの幼果から抽出・精製したコーセー独⾃
の成分「リンゴ幼果エキス*4」が、⾓層中タンパク質のランダム化した構造を再⽣し、さらに結合⽔量まで回復させることを
発⾒しました(図 2,3)。リンゴ幼果エキスには抗酸化効果と表⽪の細胞増殖を維持するといった効果がこれまでに確認
されていましたが、今回さらに⾓層中タンパク質に対しても有⽤であることが分かりました。


今後は、今回の新たな知⾒・技術により、これまでの落とす・補うといったケアから⾓層中タンパク質の構造を再⽣し、
肌⾓層⾃体の結合⽔量を回復する新たなケア技術の確⽴につなげていきます。




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《参考資料》




図 1 ヒト⾓層中タンパク質におけるランダムコイル構造の割合のイメージング


(a)未処理のものと⽐較し、(b)ダメージ処理を⾏った⾓層中のタンパク質分⼦の構造が
ランダム化してしまうことを捉え、可視化に成功した。




図 2 ヒト⾓層中の(b)タンパク質の構造変化とそれに伴う(a)結合⽔量の変化



ダメージ処理により⾓層タンパク質の構造がランダム化してしまうと、肌⾓層が本来保持してい
るべき結合⽔の量が低下するが、リンゴ幼果エキスを添加するとタンパク質の構造が再⽣し、
結合⽔量も回復する。


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《⽤語解説》
*1 ⼤型放射光施設 SPring-8
播磨科学公園都市(兵庫県)にある世界最⾼の放射光を⽣み出す理化学研究所の施設(同クラスのものは⽇本以
外にアメリカとヨーロッパにあるが、世界で 3 台しかない)。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電
⼦ボルト)に由来している。放射光とは、電⼦を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁⽯によって進⾏⽅向を曲げた時に
発⽣する強⼒な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を⽤いてナノテクノロジー・バイオテクノロジー・産業利⽤まで
幅広い研究が⾏われている。


*2 IR スペクトル
可視光よりも波⻑の⻑い⾚外光を物質に照射し、物質の組成や構造の情報を得る測定⽅法を IR スペクトル測定と
いう。⾓層に対する測定の結果得られる IR スペクトルからは、⾓層を構成するタンパク質の構造や⾓層中の⽔分量に
関する情報を得ることができる。


*3 結合⽔
物質に弱い⼒で結合し保持されている⽔のことです。肌⾓層において結合⽔は⾓層中タンパク質等に結合しており、
湿度などの環境が変わっても保持され続ける。⼀⽅で⾓層の内外を⾃由に出⼊りし、湿度低下などで容易に失われる
⽔のことを⾃由⽔という。


*4 リンゴ幼果エキス
北海道の限定されたリンゴ園で⼿摘みされたリンゴの幼果から抽出した、コーセーオリジナル成分。リンゴの幼果は成熟
リンゴに⽐べて抗酸化物質であるポリフェノールを多く含み、優れた抗酸化能を発揮する肌に対して有⽤性が⾼いスキン
ケア成分。




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株式会社コーセー/本社︓東京都中央区、社⻑︓⼩林 ⼀俊、証券コード︓4922(東証1部)




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