SPring-8を用いて白髪と黒髪の金属分布の違いをミクロレベルで可視化

News Release
2015 年 3 月 13 日




SPring-8 を用いて白髪と黒髪の金属分布の違いをミクロレベルで可視化

~白髪の最新研究~



株式会社ミルボン(代表取締役社長・佐藤龍二)中央研究所は、兵庫県立大学 物質理学研究科の高野
秀和助教と共同で、同一人物(日本人女性)の白髪と黒髪に含まれる金属の分析を行いました。その結果、
白髪と黒髪に含まれる金属量に違いがあることが確認できました。さらに、大型放射光施設 SPring-8*1
兵庫県ビームライン(BL24XU)を用いることにより白髪と黒髪における毛髪断面の金属分布の違いをミ
クロレベルで可視化することに初めて成功しました。
白髪と黒髪に含まれる金属の量や分布の違いは、ヘアカラー剤の発色反応等に大きく影響すると考え
られています。今後、この知見を次期発売のヘアカラー剤に応用していく予定です。この研究成果は以下
の外部発表にて報告しました。


【外部発表】
発表会 :第 6 回毛髪化学技術者協会研究発表会
発表タイトル :白髪と黒髪における最新の知見について
口頭発表者 :長野庸一
発表日 :2015 年 2 月 4 日


【研究の背景】
毛髪内に含まれる様々な種類の金属は、ヘアカラー剤の脱色反応や発色反応の触媒として作用してい
ます。毛髪内の金属に関する研究は過去に幾つか報告されていますが、日本人女性の白髪と黒髪について
の詳細な報告はありませんでした。そこで、ミルボンは日本人女性の白髪と黒髪に含まれる金属について
の研究に着手しました。


【研究の成果】
日本人女性二十数名分の毛髪を白髪と黒髪に選り分け、実験に用いました。ICP-OES*2を用いた金属
の定量分析により、日本人女性の白髪は黒髪よりも金属量が少ないことが明らかになりました。さらに、
SPring-8 BL24XU のマイクロビーム XRF*3 を用いることで、白髪と黒髪の金属分布の違いをミクロレベ
ルで可視化することに成功しました。今後、この知見とヘアカラー剤等の化学反応との関連性をさらに研
究し、より高機能な頭髪用化粧品の開発につなげていく予定です。



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《参考資料》
A B

白髪





属 黒髪








図 1 白髪と黒髪中のカルシウムの定量結果(A)および毛髪断面のカルシウムのマッピング像(B)

白髪は黒髪よりもカルシウム量が少ない(A)

白く光っている部分がカルシウム。白い部分の密度が高いほどカルシウム量が多い(B)。



C D

白髪





属 黒髪








図 2 白髪と黒髪中の亜鉛の定量結果(C)および毛髪断面の亜鉛のマッピング像(D)

白髪は黒髪よりも亜鉛の量が少ない(C)。
白く光っている部分が亜鉛。白い部分の密度が高いほど亜鉛の量が多い(D)。




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E F

白髪





属 黒髪








図 3 白髪と黒髪中の銅の定量結果(E)および毛髪断面の銅のマッピング像(F)

白髪は黒髪よりも銅の量が少ない(E)。
白く光っている部分が銅。白い部分の密度が高いほど銅の量が多い(F)。



《用語解説》
*1 大型放射光施設 SPring-8
播磨科学公園都市(兵庫県)にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設(同クラスのもの
はアメリカとヨーロッパ、世界で 3 台しかない)。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電
子ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げ
た時に発生する強力な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテ
クノロジー・産業利用まで幅広い研究が行われている。


*2 ICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry:ICP 発光分光)
金属元素を定量分析する装置。溶液試料に含まれる複数の金属元素を同時に一斉分析することができ
る。化粧品はもとより食品、医薬、半導体など幅広い分野で活用されている。


*3 マイクロビーム XRF
X 線照射によって放射される蛍光 X 線を利用して微量金属の画像化や状態分析を行うことができる装
置。天然物や異物等の分析、物質材料の評価など様々な用途で使用されている。


■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 大阪市都島区善源寺町 2-3-35
TEL 06-6928-2331 FAX 06-6925-2301
株式会社ミルボン/本社:大阪市都島区、社長:佐藤龍二、証券コード:4919(東証1部)

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