測定に必要な時間を短縮する新たなガス・水蒸気透過率測定装置を開発

平成 29 年3月 31 日
各 位
会 社 名
代 表 者 名 代表取締役社長 赤 田 民 生
(コード番号 5018 東証第一部 )
問 合 せ 先 取締役常務執行役員
デバイス材料事業部長 兼
経営企画部長 宮 川 弘 和
T E L 078 - 303 - 9058
組 織 名

代 表 者 名 理事長 中 鉢 良 治

問 合 せ 先 企画本部報道室
E - m a i l press-ml@aist.go.jp

T E L 029 – 862 - 6216


測定に必要な時間を短縮する新たなガス・水蒸気透過率測定装置を開発

当社(株式会社MORESCO)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) ナノ材料研
究部門【研究部門長 佐々木 毅】、工学計測標準研究部門【研究部門長 高辻 利之】は、フィルム状
試料のガス・水蒸気透過率を測定する従来の等圧法、差圧法とは異なる新たな方法(MA法: Modified
differential pressure method with an Attached support)を共同で開発しました。さらに、MA法に
基づいた測定装置も開発しました(図1)。今回開発したMA法は、水蒸気等の検出器につながるスペ
ース(検出側空間)と測定試料の間に支持体の層を設けたところに特徴があります(図2)。支持体
層を設け、その構造を工夫することにより、試料交換、ガス・水蒸気の透過中に関わらず常時支持体
層を設けたままにすることを可能にしました。その結果、測定試料両側の圧力差が測定試料に与える
ダメージ(試料表面に形成されたガスバリア層の損壊等)を最小限に抑え、かつ測定時間を大幅に短
縮できるようになりました。さらに、装置の構造が簡素化され、そのため感度も向上しました。
これまでの測定方法では、測定試料を装置に取り付ける際に検出側空間に大気中の水蒸気が流れ込
んでしまうといった課題があり、この水分子を取り除くために、排気、乾燥ガスの導入、装置加熱等
の前処理に数日から数週間の時間を要していました。今回開発したMA法では、測定試料を取り付ける
際に検出側の空間を大気に開放させないため、高い真空度が維持され、前処理の時間を省くことがで
きます。
また、MA法では検出側空間の環境が常に良好に維持されることから、上記の前処理等を通じて試料
を十分乾燥させることなく測定できます。その結果、フレキシブルな太陽電池やディスプレイで必要
となる10-4 g/m2/dayより優れた水蒸気透過率を持つバリアフィルムの測定において、測定時間そのもの
を短縮する効果もあります。例えば、従来法で測定時間に100時間を要した 10-5 g/m2/day相当のバリア
フィルムの水蒸気透過率を、開発した装置では約20時間で測定でき、従来比で約1/5に測定時間を短
縮できました。
さらに、開発した装置は10-7 g/m2/dayレベルの水蒸気透過率をも測定する能力を有しています。これ
は、サッカーグラウンド10面と同じ面積のフィルムに一日あたり1滴の水を落ちたことを測定できる
能力に相当します。MA法を取り入れた装置には、産総研が開発した校正器(水蒸気を一定量導入する
ためのガス導入器:標準コンダクタンスエレメント)が搭載されており、透過率が既知の標準フィル
ムを用いることなく得られる測定値を保証することが可能です。
また、MA法は、水蒸気に加えて酸素等のガス成分も測定できます。従って、高い水蒸気バリア性が
求められる有機デバイスや太陽電池分野のみならず、酸化による品質劣化を防ぐため酸素バリア性が
重要な食品・医薬品包装分野、水素を取り扱う燃料電池等の自動車関連分野の研究・開発にも用いる
ことができます。成長が期待されるバリアフィルムの生産現場における品質管理にも大きく役立つも
のと期待されます。当社では、先に発表した株式会社イデアルスターとの技術提携に関連して、有機
薄膜太陽電池製品(OPVモジュール等)の市場形成と量産化に向けて、今回開発した装置を活かしてま
いります。
尚、当社では、平成29年4月5日から東京ビッグサイトで開催される展示会(ファインテックジャ
パン)に開発した装置を展示しますので、ご興味のある方は、ぜひ当社ブースへお越しください。
以上




図1 開発したガス・水蒸気透過率測定装置
図2 開発したMA法の概念図

5537