CDC7阻害剤AS-0141の創製研究に関する論文の学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」への掲載のお知らせ

2021年10月6日
各 位
会 社 名 カルナバイオサイエンス株式会社
代表者名 代表取締役社長 吉野 公一郎
(コード番号:4572)
問合せ先 取締役経営管理本部長 山本 詠美
(TEL: 078-302-7075)


CDC7阻害剤AS-0141の創製研究に関する論文の
学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」への掲載のお知らせ

当社が開発中のCDC7阻害剤AS-0141の創製研究に関する論文が、アメリカ化学会(American Chemical
Society)が発行する学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」に掲載されましたのでお知らせい
たします。AS-0141は当社が創製したCell division cycle 7 (CDC7)キナーゼの強力かつ選択的な阻害
剤であり、現在、日本国内において切除不能進行・再発又は遠隔転移を伴う固形がん患者を対象とした
臨床試験を実施中です。
この度、AS-0141の創製研究に関する論文が、医薬品化学(メディシナル・ケミストリー)分野にお
ける最高峰の雑誌の一つである、国際的創薬化学専門誌「Journal of Medicinal Chemistry」のthe
Drug Annotations Series(臨床開発に進んだ新薬の創製研究に限定したセクション)に掲載されまし
た。本論文は、AS-0141の創製に至る戦略・知見を報告するものです。


論文の概要
CDC7キナーゼは、酵母からヒトまで進化的に保存されたセリン/スレオニンキナーゼであり、DNA複製の
制御に重要な役割をしています。近年、CDC7発現量が様々ながん細胞株やヒトの腫瘍において向上して
いることや、CDC7が高発現している様々ながんで予後不良であることが報告されていることから、CDC7
は、がんの新しい治療標的として注目されています。しかしながら、CDC7キナーゼは他のキナーゼに比べ
て、特徴的な立体構造を有していることからキナーゼ阻害活性および選択性の向上が難しく、さらに基
質の1つであるATPに対する親和性が非常に高く、細胞内で活性が非常に減弱することから、CDC7阻害剤
の開発は進んでいませんでした。当社はこれらの問題を克服するため、細胞内と同じ高濃度ATP条件下で
活性が低下しないよう、通常のスクリーニング条件より厳しい100 µM(Km値の36倍)のATP存在下で化合
物をスクリーニング・構造最適化を行った結果、非常に選択性が高く、細胞内濃度に近い1 mM ATP存在
、すでに論文報告しています(1)。興味深い
下でも強力な阻害活性を示すリード化合物1を見出し(図1)
ことに化合物1は酵素とプレインキュベーションすることで、さらに阻害活性が増強されるという特徴
を有していました。


-1-
今回、薬の開発に重要な薬物動態の改善を目指して、化合物1の更なる構造最適化を実施し、高いキナー
ゼ選択性、強い細胞活性を保持しつつ、良好な薬物動態を示す化合物24を見出すことに成功いたしまし
た(図1)
。本化合物は、化合物1と同様にプレインキュベーションで阻害活性が増強されるという非常
にユニークな特徴を有しており、また、いちどCDC7に結合すると、CDC7から解離しにくいという性質を示
すことが分かりました(図2)
。また本プレインキュベーション効果はCDC7キナーゼに対してのみ観察さ
れ、他のキナーゼでは観察されませんでした。化合物24の抗腫瘍活性を評価するために44種類のがん細
胞パネルを用いてスクリーニングしたところ、化合物24はヒト結腸直腸癌細胞株SW620に対して強い増殖
抑制活性を示しました。化合物24は、SW620を皮下移植したマウス担癌モデルに対しても強い抗腫瘍効果
を示したことから、24を臨床開発化合物として選択いたしました。現在、化合物24は開発番号AS-0141と
してフェーズ1試験を実施しています。


図1.リード化合物1からAS-0141への構造最適化
O O
O O
O Lead O
optimization CF3
O N O N N N
H H
N N N N
Cl
H H

1 24 (AS-0141)



図2.AS-0141のユニークな特徴




-2-
図3.ヒト結腸直腸癌細胞株SW620を皮下移植したマウス担癌モデルに対するAS-0141の抗腫瘍効果




参考文献
(1) Irie, T.; Asami, T.; Sawa, A.; Uno, Y.; Hanada, M.; Taniyama, C.; Funakoshi, Y.; Masai, H.; Sawa, M. Discovery
of Novel Furanone Derivatives as Potent Cdc7 Kinase Inhibitors. Eur. J. Med. Chem. 2017, 130, 406–418.


発表論文
雑誌名: Journal of Medicinal Chemistry

タイトル: Discovery of AS-0141, a Potent and Selective Inhibitor of CDC7 Kinase for the Treatment of
Solid Cancers

著者: Takayuki Irie, Tokiko Asami, Ayako Sawa, Yuko Uno, Chika Taniyama, Yoko Funakoshi, Hisao

Masai, Masaaki Sawa

DOI: 10.1021/acs.jmedchem.1c01319

以 上


CDC7 阻害剤 AS-0141 について
AS-0141 は当社が創製した CDC7 キナーゼを選択的に強く阻害する医薬品候補化合物です。CDC7 (cell
division cycle 7) キナーゼは、細胞周期において染色体複製開始の制御に重要な役割をしていますが、
細胞周期制御が異常であるがん細胞において CDC7 活性を阻害すると、がん細胞が死ぬことが知られてい
ます。一方で、正常細胞は、細胞周期が正常であるため、CDC7 活性が阻害されても死ぬことはなく、こ
の点から CDC7 阻害剤は非常に副作用の少ない新しい治療薬になると期待されています。CDC7 は、いくつ
かのがんで過剰発現していることが報告されており、CDC7 阻害薬は、これらのがんの新しい治療薬とし
て期待が寄せられています。カルナバイオサイエンスでは、特異的な CDC7 阻害剤 AS-0141 の創出に成功
しており、様々ながんを標的とした画期的な治療薬の開発を目指しています。




-3-

7339