BTK阻害薬AS-1763の創製研究に関する論文の学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」への掲載のお知らせ

2021年9月17日
各 位
会 社 名 カルナバイオサイエンス株式会社
代表者名 代表取締役社長 吉野 公一郎
(コード番号:4572)
問合せ先 取締役経営管理本部長 山本 詠美
(TEL: 078-302-7075)


BTK阻害薬AS-1763の創製研究に関する論文の
学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」への掲載のお知らせ

当社が開発中の次世代型BTK阻害剤AS-1763の創製研究に関する論文が、アメリカ化学会(American
Chemical Society)が発行する学術雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」に掲載されましたので
お知らせいたします。AS-1763は当社が創製したブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine
kinase, BTK)を標的とする阻害剤であり、高選択的かつ強力にBTKの活性を阻害します。非共有結合型
の阻害様式であることから、イブルチニブ耐性の血液がん患者にも有効な治療薬として開発を進めて
おり、この度、AS-1763の創製研究に関する論文が、医薬品化学(メディシナル・ケミストリー)分野
における最高峰の雑誌の一つである、国際的創薬化学専門誌「Journal of Medicinal Chemistry」の
the Drug Annotations Series(臨床開発に進んだ新薬の創製研究に限定したセクション)に掲載され
ました。当社は、現在、2つの選択的BTK阻害薬AS-0871およびAS-1763の臨床開発を実施しており、本
論文はAS-1763の創製に至る戦略・知見を報告するものです。


論文の概要
BTKは、非受容体型チロシンキナーゼの1種であり、B細胞の分化 増殖に関与するB細胞抗原受容体
・ (BCR)
シグナル伝達に重要な役割をしていることが知られており、慢性リンパ性白血病(CLL)などの血液がん
の重要な治療標的として認識されています。第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、CLLを含む成熟B細胞腫
瘍の有効な治療薬として幅広く使われていますが、近年、これらBTK阻害剤に対する薬剤耐性が深刻な問
題となってきています。これらの耐性患者においてC481S変異したBTKが高頻度に見出されていることか
ら、この変異が第1世代BTK阻害剤の共有結合を妨げ阻害活性を低下させることが主な薬剤耐性の原因と
考えられています。このような背景からBTK C481S耐性変異に対する新しい治療方法の開発が非常に望ま
れており、次世代型非共有結合型BTK阻害剤は、この薬剤耐性患者の有望な治療薬として大変期待されて
。一方、当社が開発した活性型BTKおよび不活性型BTKを用いた新しいキナーゼ創薬技術(1)
います(図1)
を用いて創出した、臨床試験中のAS-0871を含む活性型BTKに比べて不活性型BTKをより強く阻害する化合
物は、非常に高いキナーゼ選択性を有し、各種のアレルギー・自己免疫疾患モデルで高い効果を示します
が(2)、BTKにより増殖が制御されているヒトの血液がんの一種であるリンパ腫の細胞(OCI-Ly10細胞)に
対する増殖抑制活性が弱いことが分かっていました。
今回、OCI-Ly10細胞に対して強い増殖抑制活性を示しつつ、C481S耐性変異をもつBTKも阻害する新し
いBTK阻害剤を創出するために、新たに活性型BTKに対する阻害活性を指標として構造最適化を実施いた
しました。その結果、高いキナーゼ選択性を保持しつつ、野生型およびC481S耐性変異をもつBTKの両方を
強く阻害する化合物13fを見出しました(図2) 本化合物は、
。 C481S変異BTKを導入したイブルチニブ耐性
リンパ腫モデルにおいて高い抗腫瘍効果を示し(図3)
、また各種薬物動態試験においてヒトでも薬効を
示すことが示唆されたことから、13fを臨床開発化合物として選択いたしました。現在、13fは開発番号
AS-1763としてフェーズ1試験を実施しています。


図1.イブルチニブ耐性B細胞性腫瘍に対するAS-1763の作用イメージ




図2.最適化研究のストラテジー




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図3.AS-1763のヒトB細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果




参考文献
(1) T. Asami, W. Kawahata, M. Sawa, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2015, 25(10), 2033-2036.
(2) W. Kawahata, T. Asami, T. Kiyoi, T. Irie, H. Taniguchi, Y. Asamitsu, T. Inoue, T. Miyake, M. Sawa, J. Med.
Chem. 2018, 61(19), 8917-8933.
発表論文
雑誌名: Journal of Medicinal Chemistry

タイトル: Discovery of AS-1763, a Potent, Selective, Non-covalent and Orally Available Inhibitor of
Bruton's Tyrosine Kinase

著者: Wataru Kawahata, Tokiko Asami, Takao Kiyoi, Takayuki Irie, Shigeki Kashimoto, Hatsuo Furuichi,

Masaaki Sawa

DOI: 10.1021/acs.jmedchem.1c01279

以 上
BTK阻害剤AS-1763について
AS-1763は、慢性リンパ性白血病(CLL)を含む成熟B細胞腫瘍の治療を目的として開発中の、野生型お
よびC481S変異型Bruton's Tyrosine Kinase(BTK)の両方を阻害する高選択性で非共有結合型の経口
投与可能な化合物です。イブルチニブを代表とする第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、CLLや他の成
熟B細胞腫瘍の標準選択薬として使用されています。しかしながら、多くの患者で、BTKの481番目のシ
ステイン残基(C481)がセリンに置き換わる変異が生じて、第1世代の共有結合型BTK阻害剤の結合が
弱まり、薬剤耐性になることが報告されています。AS-1763は、野生型およびC481変異BTKのリンパ腫細
胞の両方の増殖を強く阻害することから、野生型のみならずC481変異BTKをもつ患者の治療にも有効と
考えられます。

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