16th International Symposium on MPS and Related Diseasesにおける発表内容のご報告

2021 年 7 月 29 日
各 位




会 社 名 J C R フ ァ ー マ 株 式 会 社
代表者名 代 表 取 締 役 会 長 兼 社 長 芦 田 信
(東証第 1 部 コード番号 4552)
問合せ先 執 行 役 員 管 理 本 部 長 本 多 裕
(TEL 0797-32-1995)

16th International Symposium on MPS and Related Diseases における
発表内容のご報告

当社は、2021 年 7 月 23 日から 25 日に開催された 16th International Symposium on
MPS and Related Diseases(MPS2021)において、血液脳関門(以下、BBB)通過技術「J-
Brain Cargo®」を適用した開発中のライソゾーム病治療薬について、 件の口頭発表および 2
3 件のポスター発表を行いました。その発表概要を下記に示します。

口頭発表(2 件)
演題名
Enzyme replacement therapy with pabinafusp alfa (JR-141) for neuropathic and non-
neuropathic MPS-II: a report on integrated efficacy and safety data from three clinical
trials in Japan and Brazil

Phase I/II clinical trial for mucopolysaccharidosis type I with an intravenously
administered blood-brain barrier-crossing enzyme (JR-171): preliminary results


ポスター発表(3 件)
演題名

Efficacy and safety of a blood-brain barrier-penetrable antibody-fused alfa-L-
iduronidase in non-clinical studies

Neurologic and systemic effectiveness of a blood-brain barrier-penetrable N-
sulfoglucosamine sulfohydrolase in a mouse model of Mucopolysaccharidosis IIIA

Therapeutic effects of a blood-brain barrier-penetrable α-N-acetylglucosaminidase in
a mouse model of Mucopolysaccharidosis IIIB
開発コード 演題名
Enzyme replacement therapy with pabinafusp alfa (JR-141) for
neuropathic and non-neuropathic MPS-II: a report on integrated
JR-141
efficacy and safety data from three clinical trials in Japan and
Brazil

【概要】
ムコ多糖症 II 型(ハンター症候群)患者を対象として、日本及びブラジルで JR-141 の臨
床試験を実施した。日本では 2.0 mg/kg/週の投与を 52 週間、ブラジルでは 1.0、2.0 または
4.0 mg/kg/週の投与を 25 週間実施し、いずれの国においても続く継続投与試験において 2.0
mg/kg/週の投与を続けている。今回、中枢神経症状に対する JR-141 の有効性を中心に、長
期のデータを含めた試験結果について報告する。

【結果概要】
 JR-141 を 2 mg/kg/週以上の用量で投与したムコ多糖症 II 型患者では、病型に関わら
ず、脳脊髄液中ヘパラン硫酸濃度の減少が確認された。

 ほとんどのムコ多糖症 II 型患者において、長期間にわたり発達年齢の上昇または維持
が認められた。特に、早期より JR-141 の投与を開始したムコ多糖症 II 型患者におい
て、正常発達の維持が認められた。また、 「語彙が増えた」「落ち着きが増した」など
の変化が報告された。

 全身症状に対する有効性の指標である肝臓及び脾臓容積については、既存酵素製剤か
らの JR-141 への切り替え患者において維持が確認され、既存酵素製剤を投与されて
いない新規治療患者において JR-141 の投与後に減少が確認された。

 104 週時点までの安全性の結果では、JR-141 の忍容性が確認され、薬剤に関連した重
篤な有害事象は認められなかった。

 以上の結果より、ムコ多糖症 II 型の中枢神経症状及び全身症状に対する JR-141 の長
期の有効性が示され、また、安全性上の特筆すべき問題はなかった。今後、グローバ
ル臨床第 3 相試験を実施し、既存酵素製剤を対照群とした JR-141 の有効性を確認す
る予定である。
開発コード 演題名
Phase I/II clinical trial for mucopolysaccharidosis type I with an
JR-171 intravenously administered blood-brain barrier-crossing enzyme
(JR-171): preliminary results

【概要】
ムコ多糖症 I 型(ハーラー、ハーラー・シャイエ、シャイエ症候群)患者を対象とした JR-
171 の臨床第 1/2 相試験は、非盲検多施設共同のグローバル治験として実施中である。第 1
期では、成人のムコ多糖症 I 型患者 4 名を対象として JR-171 投与を行った。第 1 期の速報
結果を発表する。

【結果概要】
 第 1 期では、4 名の成人ムコ多糖症 I 型患者に対して用量漸増により 4 週間の JR-171
投与を行った。

 被験者はすべて 10 年以上の酵素補充療法を継続している軽症型(シャイエ症候群)
の患者であった。

 JR-171 の血漿中薬物動態を評価した結果、用量依存的な血漿中濃度の増加がみら
れ、JR-171 の投与翌日には消失することが示された。

 中枢神経症状についての効果の指標となる脳脊髄液中のヘパラン硫酸濃度は、JR-171
の投与によって 4 名すべてにおいて減少した。(減少割合の平均は 65%)

 全身症状についての効果の指標となる血清中のヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸濃度
は、治験期間を通して大きな変化がなく安定して推移した。

 現時点で安全性に懸念はなく、第 2 期が進行中である。
開発コード 演題名
Efficacy and safety of a blood-brain barrier-penetrable antibody-
JR-171
fused alfa-L-iduronidase in non-clinical studies

【概要】
ムコ多糖症 I 型(MPS I)は、α-L-iduronidase(IDUA)遺伝子の欠損により、ヘパラン硫
酸やデルマタン硫酸などのグリコミサミノグリカンが全身の細胞へ蓄積し、中枢神経系を
はじめとした、幅広い臨床症状を呈する疾患である。我々は、抗ヒトトランスフェリン受容
体抗体とヒト IDUA からなる融合タンパク質(JR-171)を開発し、マウス及びサルを用い
て、有効性と安全性を評価した。

【結果概要】
JR-171 をマウス及びカニクイザルへ静脈内投与すると、BBB を通過し脳内へ移行するこ
とが示された。MPS I モデルマウスに JR-171 を反復投与することで、末梢組織だけでな
く、中枢神経系組織に蓄積した基質の減少効果が認められた。また JR-171 の投与によっ
て、病態対照で認められる神経細胞体内の空胞化に改善が認められた。サルにおける反復
投与毒性試験では、JR-171 を高用量で反復投与した際に、JR-171 起因と考えられる毒性
学的所見は認められなかった。以上の結果から、JR-171 は MPS I 患者に対する治療効果
並びに安全性を有すると期待される。




開発コード 演題名
Neurologic and systemic effectiveness of a blood-brain barrier-
JR-441 penetrable N-sulfoglucosamine sulfohydrolase in a mouse model
of Mucopolysaccharidosis IIIA

【概要】
ムコ多糖症 IIIA 型(サンフィリッポ症候群 A 型、MPS IIIA)は、N- sulfoglucosamine
sulfohydrolase(SGSH)遺伝子の遺伝的欠損により、グリコサミノグリカンであるヘパラ
ン硫酸 (HS) が全身に蓄積し、 重篤な神経症状と軽度の骨格変形が生じる疾患である。 我々
は、抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の Fab フラグメントと SGSH からなる融合タンパ
ク質である JR-441 を開発し、マウス及びサルを用いて JR-441 の生体内分布と薬効を評価
した。

【結果概要】
JR-441 をマウス及びカニクイザルに静脈内投与したところ、中枢神経系(CNS)及び末梢
組織に分布することが明らかとなり、免疫組織化学染色により、JR-441 が神経細胞内に送
達されることが示された。また、MPS IIIA モデルマウスで観察されるミクログリアの活性
化は、JR-441 投与により著明に抑制された。さらに、JR-441 は末梢組織だけでなく、CNS
組織中に蓄積した HS 濃度を著しく低下させた。このことから、JR-441 は MPS IIIA に対
する治療効果が期待される。
開発コード 演題名
Therapeutic effects of a blood-brain barrier-penetrable α-N-
JR-446 acetylglucosaminidase in a mouse model of
Mucopolysaccharidosis IIIB

【概要】
ムコ多糖症 IIIB 型(サンフィリッポ症候群 B 型、MPS IIIB)は、α-N-アセチルグルコサ
ミニダーゼ(NAGLU)の欠損または不足に起因し、全身のへパラン硫酸(HS)の蓄積によ
って重度の中枢神経症状と中度の末梢症状を呈する。 今回、 中枢神経系及び末梢組織へ効率
的に薬物を送達するために設計された、抗トランスフェリンレセプター(hTfR)抗体と遺
伝子組み換えヒト NAGLU からなる融合タンパクである JR-446 を開発した。マウス及び
カニクイザルに JR-446 を静脈内投与し、その薬理作用及び薬物動態を解析した。

【結果概要】
JR-446 を hTfR-KI マウス及びカニクイザルに静脈内投与すると、脳内で JR-446 が検出さ
れた。また、JR-446 反復投与後の MPS IIIB モデルマウス(hTfR-KI/Naglu-KO)におけ
る中枢神経系及び末梢組織中の HS 濃度は、病態対照群と比較して統計学的有意に減少し
た。加えて、中枢神経系の組織病理学的変化は JR-446 投与群で抑制された。以上の結果よ
り、JR-446 は MPS IIIB の中枢神経及び末梢症状に対する治療効果が期待される。




以 上

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