微細藻類ユーグレナ粉末の抽出物がインフルエンザウイルスの増殖抑制に寄与することを確認しました

2020 年 11 月 16 日

微細藻類ユーグレナ粉末の抽出物が
インフルエンザウイルスの増殖抑制に寄与することを確認しました
細胞の防御機構を活性化し、根本から元気なカラダを支える可能性

株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社⻑:出雲充)は、武庫川女子大学の伊勢川裕二教授と
の共同研究により、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)粉末の熱水抽出
物※1が薬剤に耐性のある種類も含めたさまざまなインフルエンザウイルスの増殖抑制に寄与するこ
とを確認するとともに、宿主細胞(感染される細胞)の防御機構を活性化している可能性が示された
ことをお知らせします。なお、今回の研究成果は、2020 年 11 月 14 日に開催された「第 59 回日本
栄養・食糧学会近畿支部大会」※2で発表しました。
※1 ユーグレナ粉末を 95℃の熱水で 2 時間かけて抽出した抽出物。体内に摂取された時のユーグレナ水溶性成分(ユーグレナ特
有の機能性成分であるパラミロン以外の成分)と考えられる
※2 第 59 回日本栄養・食糧学会近畿支部大会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、ウェブページを
活用したオンライン発表形式で開催されました




■研究の目的
当社は、健康の基盤を維持した上で、より良い状態へ高めることで、サステナブルな健康を実現す
ることが大切だと考えています。当社は、健康の基盤を妨げる複合的要因として「栄養不足」「心身
の疲労」
「免疫力低下」の相互関係に着目しており、ユーグレナの摂取を通じてからだが本来持つ「つ
くる・はたらく・まもる」のサイクルが保たれ、対症療法だけに頼ることのないサステナブルな健康
が実現する可能性について研究を進めております。
当社は、「免疫力の低下」によって影響を受ける現象のひとつであるインフルエンザウイルス感染
症状について、ユーグレナの摂取により、主にユーグレナ特有の機能性成分であるパラミロンの作用
によって免疫伝達物質の産生促進を介して症状を緩和する可能性※3,4を、2015
年 2 月 9 日付、2017 年 11 月 1 日付のニュースリリースにて報告しています。
インフルエンザウイルスは呼吸器系の感染症を引き起こすウイルスとして知ら
れており、ワクチンや数種の抗インフルエンザ薬が開発されていますが、新型ウ
イルスの出現や副作用などの問題があり、さらなる対策が求められています。今
回は、ユーグレナがインフルエンザウイルス感染症状を緩和するメカニズムの解明の一助として、イ
ンフルエンザウイルス感染に及ぼす直接的な影響を調べました。
※3 2015 年 2 月 9 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/n20150209/
※4 2017 年 11 月 1 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20171101-2/


■研究の内容と結果
イヌの腎細胞にインフルエンザウイルスを感染させ、ユーグレナ粉末から熱水抽出した抽出物(以
下、「ユーグレナ熱水抽出物」 を含んだ培地、
) および含まない培地で各々培養しました。その結果、
ユーグレナ熱水抽出物を含んだ培地では、インフルエンザ治療薬であるオセルタミビルなどの薬剤
に耐性のあるインフルエンザウイルスを含め、さまざまな種類のインフルエンザウイルスの増殖が
抑制されました(図1)。
Type ウイルス名 8.0.E+06
H1N1 Osaka/2024/2009




Virus titter (FFU/mL)
PR/8/34
Osaka/2024/2009 6.0.E+06 オセルタミビル耐性株
オセルタミビル耐性株
A/ Osaka/71/2011
H1N1 Suita/6/2007
4.0.E+06
Suita/114/2011
New Caledonia/20/99
2.0.E+06
A/ Sydney/5/97
H3N2 Aichi/2/68
Nagasaki/1/87 0.0.E+00
B
Shanghai/261/2002
0 0.5 1
Euglena concentration (mg/mL)
図1 増殖抑制が確認されたインフルエンザウイルスとオセルタミビル耐性株の増殖抑制効果
Virus titter は感染時のウイルスの強さを表す



また、インフルエンザウイルスが増殖する過程※5(図2)のうち、どの段階で増殖を抑制してい
るかを確認するための実験を行いました。
※5 一般的にウイルスは、細胞膜に吸着し、取り込まれた後、細胞質内でウイルス粒子から RNA を放出します。放出された RNA
は核内に移行し、複製および転写を行い、ウイルスタンパク質とウイルスゲノムが合成されます。そして、ウイルスの構成材料が揃
うと、細胞膜近くで凝集し、細胞膜から遊離します。この 1 サイクルがインフルエンザウイルスにおいては 8 時間であることが分
かっています




インフルエンザウイルス
吸着
放出
エンドサイトーシス

脱殻
出芽
RNA



凝集

ウイルスRNA複製

Goldi体

核 小胞体


MDCK cell

図2 ウイルスが増殖する過程


ユーグレナ熱水抽出物の添加のタイミングを、ウイルス吸着時期、ウイルス増殖にかかる 1 サイク
ル(8 時間)、1 サイクルを 2 つ(0〜4 時間、4~8 時間)に区切った各時点とし、各時点におけるイ
ンフルエンザウイルスの活性を測定しました。その結果、吸着時期におけるユーグレナ熱水抽出物の
添加でインフルエンザウイルスの増殖を有意に抑制したことが確認されたため、宿主細胞(感染され
る細胞)の防御機構を活性化している可能性が示されました(図3)。
1.4.E+03 ** *




Virus titter (FFU/mL)
1.2.E+03
1.0.E+03
8.0.E+02 control
6.0.E+02
Euglena
4.0.E+02
2.0.E+02
0.0.E+00
吸着 0-8h 0-4h 4-8h
*:p<0.025, **:p<0.005 Unpaired t-Test

図3 各増殖段階におけるインフルエンザウイルス増殖抑制効果
Virus titter は感染時のウイルスの強さ、FFU は Focus Forming Unit の略で FFU/mL とは培養液 1 mL 中にウイルスによって変性
した細胞がどのくらいいるかを表す




今回の検討から、ユーグレナの熱水抽出物、すなわち体内に摂取されたユーグレナの水溶性成分
が、既存の抗ウイルス薬とは異なるメカニズムでインフルエンザウイルスの増殖を阻害している可
能性、ならびにインフルエンザウイルスに直接作用するのではなく宿主細胞(感染される細胞)の
防御機構を活性化している可能性、インフルエンザウイルス感染症状の緩和において、パラミロン
のみならず、ユーグレナの水溶性成分も含めて、効果を発揮している可能性が示されました。


当社では、さまざまな健康不安が訪れる昨今において、からだが本来もつ「つくる・はたらく・
まもる」のサイクルを支えるユーグレナの可能性のさらなる解明と、ユーグレナおよびその含有成
分の健康食品、医療分野等での利活用や食材としての付加価値向上を目指し、研究開発を行ってい
きます。


<ユーグレナ(和名:ミドリムシ)について>
石垣島ユーグレナは、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両方の特徴を持っ
ており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など 59 種類の栄養素をバランスよく含ん
でいます。なお、ユーグレナ特有の成分で β-グルカンの一種であるパラミロンは、近年機能性に
ついての研究が進み、食品や化粧品などのヘルスケア分野などでの活用が期待されています。
以上

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