「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に基づく情報開示のお知らせ

2023 年 5 月 11 日


各 位

会 社 名 日本空港ビルデング株式会社
代表者名 代表取締役社長執行役員兼COO 横田 信秋
( コ ー ド 番 号 9 70 6 東 証 プ ラ イ ム )
問合せ先 専務取締役執行役員企画管理本部長 田中 一仁
( TEL.03- 5757- 8409)




「 気 候 関 連 財 務 情 報 開 示 タ ス ク フ ォ ー ス ( TCFD) 提 言

に基づく情報開示のお知らせ




当社は、このたび「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)(注)」提言に基づく情報開示を行いまし
たのでお知らせいたします。


当社グループは、公共性の高い旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う民間企業として、社会的役割を充
分認識し、公共性と企業性の調和のとれた経営を目指しています。長期ビジョン「To Be a World Best
Airport」の実現に向け、気候変動問題への対応は重要な経営課題の1つと位置付けており、2022 年 9 月に
TCFD 提言への賛同を表明いたしました。


今後も、気候変動に関連する情報開示を推進するとともに、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献
してまいります。


(注) 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」とは
Task Force on Climate-related Financial Disclosure の略。主要国の中央銀行や金融規制当局が参加する金融
安定理事会(FSB)によって 2015 年に設立されたタスクフォース。金融市場の不安定化リスクを低減するため、
企業に対し、気候変動が事業活動に与えるリスクと機会の財務的影響、具体的な対応・戦略等を情報開示する
ことを提言。


以 上
TCFD 提言に基づく情報開示


◼ 日本空港ビルグループは、公共性の高い旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う民間企業として、社会的役割を充分
認識し、公共性と企業性の調和のとれた経営を目指しています。長期ビジョン「To Be a World Best Airport」の実現に向
け、気候変動問題への対応は重要な経営課題の1つと位置付けており、環境負荷の低減に向け、これまでもさまざまな
取り組みを行ってきました。
◼ 当社では、2022 年 9 月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD 提言)への賛同を表明し、2023 年 5 月、下記
のとおり TCFD 提言に基づく情報を開示いたします。
◼ 今後も、当社を取り巻く事業環境を認識し、リスク・機会の分析を深化させるとともに、対応策を推進し、関連情報の開示
に努めてまいります。




ガバナンス
◼ サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関する推進体制強化を目的に 2022 年 7 月に設立し、代表取締役社長を
委員長、当社の全役員(執行役員を含む)を委員として、年 2 回以上開催されます。同委員会はサステナビリティに関す
る方針の策定及び進捗管理等を統括し、社長直轄の専任組織として設立された「サステナビリティ推進室」が具体的な取
り組みを担います。
◼ 当社は、気候変動関連の取り組みを経営の重要課題に位置づけ、サステナビリティ委員会を中心に取り組み方針の策定
や進捗管理を行っています。これらは同委員会における審議を経て、経営会議において経営戦略との関係性・整合性を
踏まえた審議がなされた後、取締役会に報告、決議されております。


図 1 サステナビリティ推進体制の全体像

取締役会
監査等委員会/報酬諮問委員会/指名諮問委員会

経営会議
情報共有
連携

リスク管理委員会
サステナビリティ委員会
事務局:サステナビリティ推進室 コンプライアンス推進委員会

日本空港ビルグループ
CS 推進会議

脱炭素コア会議

全社横断的 人権分科会
な展開
サプライチェーン分科会 など

各事業部門・グループ会社





戦略
◼ (シナリオ分析の前提)当社グループの事業に気候変動が与える影響を評価するため、下記の 2 つのシナリオ(「1.5℃シ
ナリオ」及び「4.0℃シナリオ」)を用いて分析を実施しました。シナリオの設定にあたっては、IEA(International Energy
Agency, 国際エネルギー機関)や IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パ
ネル)が公表するシナリオを参照しています。


表 1 シナリオ分析の前提
名称 1.5℃シナリオ 4.0℃シナリオ

 抜本的な施策が機能することにより脱炭素社会

が実現、産業革命時期比で気温の上昇が約  現状を上回る施策を取らないことにより地球温暖
シナリオの
1.5℃未満に留まる 化が進展、産業革命時期比で気温が約 4℃上昇
概要
 脱炭素社会への移行に関するリスクが主に顕在  気候変動による物理リスクが主に顕在化



 カーボンプライシングや航空事業者の SAF 使用

比率規制等により、空港を含めた航空業界はカ
 低炭素化社会への移行のための政策や規制導
ーボンオフセットや再エネ・省エネ投資等の対応
入は限定的。
が必須となる。
 気候変動の進行に伴い、気候パターンの変化や
世界観  中期的には航空業界全般への脱炭素化に向け
海面上昇、異常気象の激甚化・頻発化等により
たプレッシャーや代替移動手段へのシフトも想定
空港運営への悪影響が生じる。サプライチェーン
されるが、SAF の普及につれ、空港ではサプライ
リスク管理や BCP の見直しの重要性が高まる。
チェーンを含めた GHG 排出削減が着実に進

む。

 WEO ( 注 1 ) : APS ( Announced Pledges  WEO:STEPS(Stated Environmental Policies
主な参照
Scenario, パリ協定の目標達成シナリオ)(注2) Scenario, 現状の政策シナリオ)
シナリオ
 SSP1-2.6(注3)  SSP5-8.5

(注1) World Energy Outlook (IEA が発行する調査レポート)
(注2) APS シナリオを原則としているが、産業革命時期比で気温の上昇が約 1.5℃未満に留まる他シナリオとして、NZE(Net Zero

Emissions)も一部参照した。

(注3) SSP1-2.6 シナリオを原則としているが、産業革命時期比で気温の上昇が約 1.5℃未満に留まる他シナリオとして、SSP1-1.9

シナリオも一部参照した。





◼ 図 2 1.5℃シナリオ 世界観の詳細(注)




(注) 太字は両シナリオ共通の事項、青字は当該シナリオに特徴的な事項


◼ 図 3 4.0℃シナリオ 世界観の詳細(注)




(注) 太字は両シナリオ共通の事項、青字は当該シナリオに特徴的な事項




◼ (リスクと機会、影響度、対応策)当社グループの「施設管理運営業」及び「物販・飲食事業」(「物品販売業」及び「飲食業」
をまとめた区分)を分析対象とし、上記の 2 つのシナリオを踏まえたリスクと機会の抽出、影響度評価、リスクへの対応策
を下表のとおり定めました。


表 2 気候変動に関わるリスク及び影響度
セグメント 主に

リスクの種類 概要 物販 時間軸 関連する 影響度
施設
飲食 シナリオ

炭素税やクレジット制度等のカーボンプライシング導入

にともなう、ターミナル運営コストや原材料仕入・物流コ ✓ ✓ 短期~中期 1.5℃ 大

ストの増加

気候変動関連法規制によるコストの増加(環境関連規

制、環境配慮にともなう、建設コストの増加、建築物の ✓ 短期~長期 1.5℃ 大

環境認証取得要件の厳格化等)

気候変動関連法規制によるコストの増加(プラスチック
GHG 排出量
等の資源循環や自然資本に配慮した調達、廃棄・仕入 ✓ 短期~中期 1.5℃ 中
削減施策
コストのデータ集計など、環境対応を想定)
(政策と法律/技術)
気候変動対策投資コストの増加(再生可能エネルギー

の導入・更新及び新エネルギーの導入・利用・調達のほ 1.5℃
✓ 短期~中期 大
か、LED 化・機器更新等の省エネ投資や脱炭素関連新 /4.0℃

移行 技術の導入など)

リスク 気候変動対策投資コストの増加(車両の EV 化等の資

材物流における省エネ投資や店舗改装・機器更新等の ✓ 中期~長期 1.5℃ 中

省力化投資など)

航空需要にネガティブに影響する政策措置(航空機の

GHG 排出量制限や航空券価格上昇等を想定)による、 ✓ ✓ 短期~長期 1.5℃ 中

空港利用者数の伸びの鈍化

環境対応の遅れによる、テナント・パートナー・顧客・取

その他 引先・従業員からの評判低下や競争力への影響、取引 1.5℃
✓ ✓ 短期~中期 中
(市場/評判) (雇用)条件への悪影響、環境意識の向上による消費 /4.0℃

者選好の変化

環境対応の遅れによる、資金調達への悪影響 ✓ 短期~中期 1.5℃ 小

バイオ燃料受入態勢構築の遅れによる、(外国航空会
✓ ✓ 中期 1.5℃ 中
社等からの)羽田空港の選好性低下





セグメント 主に

リスクの種類 概要 物販 時間軸 関連する 影響度
施設
飲食 シナリオ

気候パターンの変化にともなう、空港運営及び空港ターミナルイ
✓ ✓ 中期~長期 4℃ 中
ンフラ設備への悪影響

海面上昇による、羽田空港にアクセスする首都圏交通インフラ
✓ ✓ 中期~長期 4℃ 中
の麻痺等の空港運営への影響

気候パターンの変化にともなう、作物等の生産量減少と調達不

安・コスト増加、商品温度管理上のリスク増大及び関連コストの ✓ 短期~長期 4℃ 中
慢性
増加

気候パターンの変化にともなう、感染症の発生や人体に害を与
✓ ✓ 長期 4℃ 大
える外来害虫の影響、バイオセキュリティ対応コストの増加

気候パターンの変化にともなう、営業時間・勤務体系を含む生

物理 活スタイルの変化や、防寒用品需要の減少等の顧客ニーズの ✓ ✓ 中期~長期 4℃ 小

リスク 変化

異常気象の激甚化・頻発化にともなう、首都圏交通インフラの機

能不全や就航先気象に起因する欠航や関連する空港及び店舗 ✓ ✓ 短期~中期 4℃ 大

利用者数への悪影響

異常気象の激甚化・頻発化による、供給パイプライン(水光熱
✓ ✓ 中期~長期 4℃ 大
等)等の設備損壊、洪水・浸水被害等
急性
異常気象の激甚化・頻発化にともなう、サプライチェーンの分断

と(食品廃棄の増加・店舗収支への影響等)物流・商品調達へ ✓ 短期~中期 4℃ 大

の影響

異常気象の激甚化・頻発化にともなう、建設工事作業の停止や
✓ 短期~中期 4℃ 中
運行への影響回避対応等の悪影響

(注 1) 時間軸について:短期:2025 年まで、中期:2030 年まで、長期:2050 年まで

(注 2) 影響度について:当社事業への影響を総合的に勘案し、大、中、小の 3 段階で評価





表 3 気候変動に関わる機会及び影響度
セグメント 主に

機会の種類 概要 物販 時間軸 関連する 影響度
施設
飲食 シナリオ

高効率なエネルギー利用や新技術等の普及によるコストの
GHG 排出量 ✓ 長期 1.5℃ 中
低減
削減施策
エネルギー供給体制の構築による脱炭素への貢献と新し 1.5℃
(エネルギー源) ✓ 中期~長期 大
い収益源の確保 /4.0℃

脱炭素取り組みを通じた航空業界への脱炭素貢献、ブラン
✓ ✓ 中期~長期 1.5℃ 大
ド価値向上、競争優位や連携機会の獲得

持続可能性に配慮したターミナル施設の設計・建設による、
✓ 中期 1.5℃ 中
テナント誘致時の魅力向上
その他
機会 低炭素を実現する企業への政策支援の活用及びグリーン
(資源効率性/ ✓ 中期~長期 1.5℃ 大
ボンド等の ESG 投資資金の活用
製品・サービス/
廃棄物の抑制及び当社を中心とした循環型システムの構 1.5℃
市場) ✓ 短期~中期 大
築 /4.0℃

環境配慮の促進(資源循環・エシカル商品の拡大等)や非

来店購買への対応による新しい顧客・市場ニーズの取り込 ✓ 中期 1.5℃ 中



ステークホルダーや地域との連携による災害対策・絶対安 1.5℃
物理リスク ✓ 中期 中
全に取り組みむ空港のレジリエンス強化 /4.0℃

(注 1) 時間軸について:短期:2025 年まで、中期:2030 年まで、長期:2050 年まで

(注 2) 影響度について:当社事業への影響を総合的に勘案し、大、中、小の 3 段階で評価





表 4 対応策
セグメント

リスク・機会の種類 概要 物販
施設
飲食

空港内事業者や行政と連携した省エネ化・脱炭素化の推進

照明の LED 化、空調機器更新、AI 空調の導入を含めた省エネ施策

メガソーラー等の再生可能エネルギー導入、調達電源構成の見直し及び熱源使用効率化

GHG 排出量 の推進

削減施策 施設の ZEB 化、建物の木造木質化、放射冷却素材「ラディクール」の使用等による環境

配慮性能向上
移行リスク
新エネルギーの利活用に向けた調査及び検討
関連
気候変動に関連する消費者心理のモニタリングや空港に求められるインフラの調査

資源の有効活用(羽田空港の資材設備を地方空港や運営参画空港へ提供等)及び廃棄

物抑制の事業化(廃油の回収とバイオ燃料への活用等)

その他 エシカル商品や環境配慮製品等の導入取扱及び什器等への環境配慮素材の使用の拡 ✓



EC 等販売チャネル拡大その他ビジネスシーズの研究開拓

デジタル技術や AI を活用した、正確で迅速な情報収集と早期対応 ✓ ✓

東京国際空港 A2-BCP への対応強化 ✓

気候パターンの変化による空港施設への影響を考慮した新規設備計画と既存設備の改

良改修
物理リスク関連
感染症対策の徹底、ロボットやデジタル技術を活用した非接触販売の実施 ✓ ✓

気候変動に対応した、労働・作業環境の整備 ✓

BCP 体制構築と定期訓練の実施 ✓

サプライチェーンの冗長化等、調達生産物流の全体最適化 ✓



◼ (レジリエンス) 当社グループでは、GHG 排出量の削減施策を中心に、気候変動に関するリスクの軽減と機会獲得に向
けた各種の対応策を検討・実行しており、複数のシナリオを前提とした分析を踏まえ、事業運営におけるレジリエンスを検
証しています。今後は、今回の分析に関連する情報のアップデートやモニタリングを実施するとともに、事業への影響の
定量的把握を含めた分析の高度化を進め、施策の推進をより効果的なものにしてまいります。





リスク管理
◼ 「サステナビリティ委員会」及びその専任組織である「サステナビリティ推進室」において、気候変動関連リスク・
機会の特定・評価、気候変動が、当社事業に与える影響の把握やその対応策に関する議論を行っています。
◼ 上記に加え、当社は、グループ全体のリスク管理体制の高度化を目的として、2023 年 4 月 1 日にリスク管理委
員会を設立しました。同委員会設立後は、全社的なリスクを総合的に管理する観点から、サステナビリティ委員
会が特定した気候変動関連リスクのうち当社の事業や業績に与える影響の大きいものについては、優先リスク
として、リスク管理委員会において他のリスクと同様に検証・評価され、必要に応じ見直しが実施される体制とし
ています。
◼ 取締役会は、サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会での議論内容について報告を受け、気候変動に関
するリスク管理を監督しています。


指標と目標
◼ 当社はこれまで、国土交通省航空局の「東京国際空港エコエアポート協議会」の枠組みの中で、羽田空港のス
テークホルダーの皆さまとともに、環境負荷低減への取り組みを進めてきました。
◼ また、当社は、気候変動を含む社会課題への取り組みの高度化に向けて、2023 年 5 月 11 日に「サステナビリ
ティ中期計画」を公表し、「気候変動への対策」を含む各マテリアリティについて、連動する KPI を定め進捗管理
を進めています。「気候変動への対策」における KPI として、GHG 排出量スコープ 1 及びスコープ 2(注)に関し、
2030 年までに 2013 年対比で 46%削減、2050 年までにカーボンニュートラルを実現することを長期目標に掲げ
ています。これを実現する道筋として、温室効果ガス(GHG)排出量削減の具体的取り組みを以下の通り想定し
ています。


図 4 GHG 排出量削減目標と検討中の具体的施策



CO₂排出量(Scope1、Scope2)削減目標

10.2万t
【想定する対策】


9 2013年比
8 ▲46%

6 5.5万t




ネット

ゼロ



(2021 年度排出量実績):84,005t-CO₂


(注) 対象範囲:羽田空港内における当社グループの CO₂排出量(羽田空港内の当社グループ保有の空港内
車両による排出を除く)
排出範囲:事業の運営により自家で消費したエネルギー起源の CO2





◼ 現時点で実現可能な省エネ施策による GHG 排出量削減効果は限定的であることから、国立研究開発法人新エ
ネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する「水素製造・利活用ポテンシャル調査」委託事業に採択
された「東京国際空港及びその周辺地域における CO2 フリー水素利活用モデル調査」への取り組みをはじめ、
主に新エネルギー分野で排出量削減に向けた調査・検討を進めていますが、カーボンニュートラル達成までの
道のりには不確実性が伴うため、引き続き将来の革新技術を含めた様々な削減施策の選択肢を柔軟に検討す
る方針です。今後は、上記の長期目標を弊社グループ内でより広く共有するよう努めるとともに、羽田空港のス
テークホルダーの皆様との連携・協働を強化し、空港全体における実効性のある排出量削減が進められるよう
検討を進めます。
◼ 関連リンク
 NEDO 事業による CO2 フリー水素利活用モデル調査プレスリリース
https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/news_release/000012550.pdf





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