(開示事項の経過)米国物理学会(APS March Meeting 2024)発表のお知らせ

2024 年3月8日
各 位
会 社 名 株式会社多摩川ホールディングス
代表者名 代表取締役社長 桝沢 徹
(東証スタンダード・コード6838)
問合せ先 経営企画部 山内 加奈
電話番号 03-6435-6933


(開示事項の経過)米国物理学会(APS March Meeting 2024)発表のお知らせ



この度、当社は 2024 年3月4日付「米国物理学会(APS March Meeting 2024)発表のお知らせ」にて
PR 情報として公表いたしましたとおり、量子暗号通信向けの開発に関しまして、国際会議「APS March
Meeting 2024」にて東北大学、北海道大学、Silicon Austria Labs と共同発表いたしました。


1. 概要
今年の米国物理学会(APS March Meeting 2024)は、2024 年 3 月 3 日から 8 日までの期間に、ミネソタ
州のミネアポリスで開催され、世界中から多くの研究者が集まり、活発な議論が行われました。
特に、量子コンピュータ自体の開発から、それを応用した創薬等のアプリケーションなど今後量子コン
ピュータの出現が想定された取り組みが多く見られました。本発表も、そのような背景のもとにあり、量
子暗号通信等に使用される光学システムの設計に関する成果発表を行いました。


2.技術背景とビジネスアプローチに関して
巨大な市場のインターネット通信では、RSA 暗号と呼ばれる暗号技術が広く用いられております。近年
話題になっている量子コンピュータでは、RSA 暗号に使用されている素因数分解問題を効率的に解くこと
が可能になります。




図 1. 量子エンタングルメント光子対を用いた量子暗号通信の概要図。エンタングルメント光子対発生側が
人工衛星に当たり、アリス、ボブが、大陸間等で通信を行う地球局に当たる。地球局側に当たるアリスとボ
ブは、人工衛星からの光子を得るだけで、情報を共有しなくても互いにどのような 0, 1 の情報を得たのか
がわかる。
そこで、物理的に解読不能な量子暗号通信等を用いた量子インターネット網構築が進められております(1)
(2)
。量子暗号通信では、様々なプロトコルが発表されておりますが、代表的なものに、BB84 と BBM92 が
あります(3)~(5)。前者は、鍵を共有するアリスとボブ間で、単一光子に偏光の情報をつけて送る方式で、
後者は、エンタングルメント状態の 2 光子を、鍵を共有するアリスとボブに分けて送る方式です。


大規模な量子インターネット網を将来像とし、量子リピーターや専用のファイバー通信網等のインフ
ラが整っていない状態から段階を経た、ある程度の規模の量子通信網を確保するとなると、主要な箇所
での量子暗号ファイバー通信に加え、人工衛星にエンタングルメント光子対発生装置を搭載し、地上の 2
点にて鍵を共有する BBM92 等を利用したシステムが重要であるとわかります。


そこで、東北大学、北海道大学、Silicon Austria Labs と連携し、量子エンタングルメント光子対発
生装置の開発を進めております。量子エンタングルメント光子対発生装置は、地上でも利用されます
が、今回の取り組みでは、人工衛星への搭載も想定しております。そして、今回の発表にあります開発
いたしました設計手法を用いることで、高精度な通信の制御を行うことが可能になります。


図 1 に示しましたのは、量子エンタングルメント光子対を用いた量子暗号通信の概要になり、0 と 1 の
通信の基礎となる情報を、光の偏光の情報に置き換えて光を用いて情報を送信しています。この際、共
役と記載してありますように、同じ 0 と 1 に対して、異なる光の偏光の情報のペア(垂直と水平のペア
と 45 度と 135 度のペア)を用いることで、盗聴を不可能にする仕組みがあります。このように、光の性
質を維持するまた、光源として効率よく情報を送ることが大切になっております。今回の開発成果の光
通信デバイスの高精度な制御がこのようなところで結びついております。


図 2 には、今回の会場であるミネアポリス・コンベンションセンターの写真と、ミネアポリスの写真
を掲載いたしました。




図 2 米国物理学会 (APS March Meeting 2024)の開催地の写真。
2024 年の開催地はミネソタ州のミネアポリスで、来年 2025 年はカリフォルニア州アナハイムにて開催。
左図 会場のミネアポリス・コンベンションセンター
右図 ミネアポリスの街並み
3. 発表情報
会議名 APS March Meeting 2024
開催日程 2024 年 3 月 3 日 - 8 日(ミネアポリス、米国)
発表タイトル A design method using transformation matrix to obtain the trace of the light
through the optical components controlled by high-precision actuators
(高精度アクチュエータで制御された光学部品を通過する光の軌跡を得るための変換
行列を用いた設計手法)
発表日時 2024 年 3 月 6 日 (GMT – 6)
発表番号 Q12.00011
国際会議 URL https://march.aps.org/
発表概要 URL https://meetings.aps.org/Meeting/MAR24/Session/Q12.11


今後も、当社は SDGs (Sustainable Development Goals) を念頭とした、
「通信」「エネルギー」「宇
・ ・
宙」分野でのソリューションを提供し、「脱炭素社会」の実現に貢献して参ります。


(参考文献)

(1) H. J. Kimble, The quantum internet. Nature 453, 1023–1030 (2008).

(2) M. Sasaki, et al. Field test of quantum key distribution in the Tokyo QKD Network. Opt. Express 19, 10387–10409

(2011).

(3) C. H. Bennett and G. Brassard, Quantum cryptography: public key distribution and coin tossing. In Proc. IEEE

International Conference on Computers, Systems and Signal Processing 175–179 (1984).

(4) C. H. Bennett, et al. Quantum cryptography without Bell’s theorem. Phys. Rev. Lett. 68, 557 (1992).

(5) N. Gisin, et al. Quantum cryptography. Rev. Mod. Phys. 74, 145–195 (2002).



以上

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