産業振興センター、国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点とHMT、培養細胞からの代謝物質抽出法に関する論文発表

2019 年 6 月 10 日
各 位
公益財団法人庄内地域産業振興センター
国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社




産業振興センター、国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点と HMT、
培養細胞からの代謝物質抽出法に関する論文発表


公益財団法人庄内地域産業振興センター (所在地: 山形県鶴岡市、理事長: 皆川治、以下
産業振興センター)、国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点 (所在地: 山形県鶴岡市)とヒュ
ーマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 (本社: 山形県鶴岡市、代表取締役社長: 菅野隆
二、以下 HMT) は、この度、共同研究により培養細胞からの代謝物質抽出法に関する論文を
JoVE (Journal of Visualized Experiments)誌に発表しました。国立がん研究センターの研究
室が鶴岡市に設置され、初めて共同で出版する論文になります。JoVE 誌は 2006 年創刊の世界
初のビデオジャーナルで、文章だけでは理解が難しい生物学研究などの実験方法や技術を、動
画で分かりやすく紹介するユニークな学術誌です。今後、HMT の受託解析のお客様がサンプル
調製を行う際や、広く培養細胞を用いた代謝研究を行う多くの研究者の方々に資すると期待され
ます。


1.背景
培養細胞は、創薬研究をはじめ再生医療や免疫研究、さらには食品や化粧品関連の基礎研
究など幅広い分野で使われており、HMT におけるメタボローム解析の受託サービスにおいても、
培養細胞の案件は全プロジェクトの約四分の一を占めています。培養細胞を用いたメタボローム
解析は、抗がん剤の作用メカニズムの解明や再生医療に用いる細胞のクオリティチェック、化粧品
成分の細胞代謝への影響の調査など、実に様々な目的で行われています。


今回、論文発表された培養細胞からの代謝物質抽出法は、2017 年に特許登録となった HMT
の手法(特許番号 JP6173667 号)に基づいたもので、基本的な培養技術を心得た研究者が、短
時間で簡便に且つ再現性良くイオン性の代謝物質を網羅的に抽出できるよう工夫されており、
HMT が得意とするキャピラリー電気泳動質量分析装置(CE-MS)※1 によるメタボローム解析用に
最適化されたプロトコルとなっています。
2.概要
本論文の第一著者は、産業振興センター所属の丸山亜美で、HMT の手法に基づきプロトコル
を文章として作成し、動画では実際に丸山が培養細胞から代謝産物を抽出する実験のデモンスト
レーションを行いました。具体的には、目的の細胞(約 106〜107 個)が培養されたシャーレから培
養液を除き、有機溶媒により細胞内の代謝物質を溶出させた上で、回収した溶液から限外ろ過に
より低分子の代謝物質のみを抽出するというプロトコルです。培養液の洗浄の際、CE-MS による
分析の妨げとなる塩を含むバッファー※2 を使用せず、マンニトール※3 による細胞の洗浄を行う事
で、浸透圧を保ち細胞へのストレスを最小限に抑えながら、CE-MS 分析において良好なピークを
得ることができます。さらに、有機溶媒であるメタノールを添加した後に、水を加える事で、核酸や
リン酸化合物など、イオン性の強い物質の抽出効率を高める工夫もされています。また、細胞のス
クレーピング※4 を行う必要がないことから、再現性の高いデータが得られるメリットもあります。培養
細胞から代謝物質を抽出するこれらの一連の作業に関する動画は、JoVE 誌に公開されました
(下記 URL 参照)。


https://www.jove.com/video/59551/extraction-aqueous-metabolites-from-
cultured-adherent-cells-for

3.今後の課題
この手法は、イオン性代謝物質の抽出に特化しており、脂溶性代謝物質の抽出の為には、別
途サンプルを準備する必要があります。今後の課題として、一枚のシャーレからイオン性と脂溶性
の代謝物質をまとめて抽出するプロトコルの開発が求められています。また、免疫や再生医療に
関連する研究では、従来よりも非常に少ない細胞数(103〜104 個)を用いたメタボローム解析のニ
ーズが高く、サンプル溶液の濃縮度を高める工夫も検討されています。
産業振興センターおよび国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点において、がんのメタボロ
ーム解析を推進しています。今回の論文と動画が今後のメタボローム解析に大いに参考となること
が期待されます。


※1 CE-MS
キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis; CE)と質量分析計(Mass Spectrometer; MS)を組み合わせ
た分析装置である CE-MS は、高分離能と高分解能、高感度を併せ持ち、イオン性化合物の分析に威力を発揮しま
す。細胞内の代謝物質はほとんどがイオン性化合物であるため、生命科学研究に適しています。1 つの細胞には
数千種類もの代謝物質が存在するため、その解析の効率化は大きな課題となっており、CE-MS には迅速な代謝物
質測定実現の期待が寄せられています。
※2 バッファー
緩衝液
※3 マンニトール
糖アルコールの一種。白色で甘味のある水溶性の結晶。天然に広く存在する。
※4 スクレーピング
ヘラのような器具で細胞を掻き集めること
<参考資料>
○会社概要
【公益財団法人庄内地域産業振興センター】
所在地: 山形県鶴岡市末広町 3-1
代表者: 理事長 皆川治


【国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室】
所在地:山形県鶴岡市覚岸寺水上 246 番地 2


【ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社】
本社所在地:山形県鶴岡市覚岸寺水上 246 番地 2
代表者: 代表取締役社長 菅野隆二
証券コード: 6090 (東証マザーズ)
事業内容: メタボロミクス事業(メタボローム解析試験の受託)
バイオマーカー事業(バイオマーカーの探索および診断、医薬品開発分野での事業化)


以 上

<お問い合わせ先>
○ 国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点
庄内地域産業振興センターがんメタボロミクス研究室
研究補助員 丸山亜美
電話:0235-64-0980 FAX:0235-64-0981
○ ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
さ さ べ
経営管理本部 雀部
電話: 03-3551-2180 FAX: 03-3551-2181
e-mail:invre1@humanmetabolome.com

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