大規模なメタボローム解析法に関する論文掲載のお知らせ

News Letter
2021 年 5 月 24 日
各位
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
(証券コード:6090 東証マザーズ)


大規模なメタボローム解析法に関する論文掲載のお知らせ
~画期的な疾患予兆発見の仕組み構築のための基盤技術の確立~


ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(代表取締役社長:橋爪 克仁、 本
社:山形県鶴岡市、以下「HMT」)では、弘前大学COI※1において国立大学法人弘前大学(学
長:福田 眞作)と「認知症・生活習慣病研究とビッグデータ解析の融合による画期的な疾
患予兆発見の仕組み構築と予防法の開発」に関する共同研究を行い、キャピラリー電気泳
動-質量分析計(以下、 「CE-MS」)による大規模なメタボロームデータの解析法※2の開発に
取り組んでおります。
この度、本研究に関する研究成果が国際メタボローム学会提携ジャーナルである
Metabolites 誌に掲載されましたのでお知らせいたします。

1.研究の背景
メタボロミクス※2 では、サンプル測定時の分析機器の状態等の変動要因の影響を受ける
ことが知られています。特にコホート研究※3 といった大規模なサンプルにおいては、測定
が長期間にわたることから測定値が変動してしまうことがデータの取り扱いを困難にし
ています。これらの変動の影響を低減させるため、メタボローム解析のデータ補正に関す
る研究が以前より行われています。弊社でも 1 プロジェクトあたりのサンプル数が数百~
数千にもなる大型試験のニーズに対応できるように、この問題解決に取り組んでまいりま
した。

2.研究の内容
当社は、2019 年 5 月より弘前大学大学院医学研究科に共同研究講座「メタボロミクスイ
ノベーション学講座」を開設し、青森県弘前市(岩木地区)の住民を対象とした岩木健康増
進プロジェクトで取得された血漿・尿サンプルのメタボローム解析を実施しております。
今回、健常者の血漿サンプルを用いた大規模なメタボローム解析データの補正に関する解
析法(以下「本解析法」 )を確立しました。

3.今後の展開
コホート研究や臨床試験等の大規模なメタボローム解析に、本解析法を適用することに
より、測定時の変動の影響を極力低減した上で、統計解析や結果の解釈を行うことができ、
従来よりも精度の高い結果を得ることが可能となります。また、本解析法は CE-MS を用い
た大規模なメタボローム解析に関する基盤技術となることから、コホート研究に限らず、
今後は代謝物データベースの構築や精度の高いバイオマーカー※4 開発への応用が可能と
なり、メタボロミクス事業の新たな市場開拓に繋がるものと期待されます。

4.掲載論文について
雑誌名: Metabolites
題名: Capillary Electrophoresis Mass Spectrometry-Based Metabolomics of Plasma


News Letter
Samples from Healthy Subjects in a Cross-Sectional Japanese Population
Study
著者: Hiroyuki Yamamoto,Makoto Suzuki,Rira Matsuta,Kazunori Sasaki,Moon-Il
Kang,Kenjiro Kami,Yota Tatara,Ken Itoh,and Shigeyuki Nakaji
https://doi.org/10.3390/metabo11050314
論文概要:岩木健康増進プロジェクトに参加した 314 名のヒト血漿サンプルの CE-MS を用
いたメタボローム解析において、サンプルより Quality Control サンプル(QC
※5
サンプル) を作成し、 一定数のサンプル測定ごとに QC サンプルもあわせて測
定し解析を行いました。主成分分析の結果、第 1 主成分スコアでキャピラリー
交換を要因とする測定値の変動、第 2 主成分スコアで測定順を要因とする測定
値の変動が確認されました。QC サンプルを用いて補正を行ったところ、補正後
では全ての代謝物において測定時の変動の影響が低減されていることが確認さ
れました。 次に 188 名の健常者の血漿サンプルを対象に、 血液検査項目と QC サ
ンプル補正後のメタボローム解析データとの網羅的な相関解析を行いました。
その結果、血中尿素窒素とグアニジノコハク酸に、また、γ-GT とシステイン-
グルタチオンジスルフィドに特に高い相関があることが見出され、本解析法に
より新たな知見が得られました。


※1 弘前大学 COI
JST のセンターオブイノベーション(COI)プログラムに採択された、全国に 18 ある拠点のひとつ。岩木
健康増進プロジェクトを十数年間実施して 2,000 項目以上の多項目健康データを取得しています。この
多項目健康データを解析することで、認知症・生活習慣病などの早期発見を可能にし、予防方法の創出
と検証を行い、その成果を社会実装することを目指しています。
※2 メタボローム解析(メタボロミクス)
メタボローム解析(メタボロミクス)は、細胞や生体内に存在する代謝物質を包括的に測定し、生命現象
を相対的に理解しようとする研究分野です。遺伝子を解析するゲノミクス、タンパク質を解析するプロ
テオミクスなどと共に、生命科学における解析手法の一つとして注目されています。
※3 コホート研究
特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたってその人々の健康状態と生活習慣や環境の状態
など様々な要因との関係を調査する研究をいいます。疾病の要因と発症の関連を調べるための観察的研究
の手法の一つです。
※4 バイオマーカー
特定の病状や生命体の状態の指標のことをいいます。
※5 Quality Control サンプル(QC サンプル)
サンプルの分析に用いられた分析法の妥当性を評価するために分析されるサンプルのことをいいます。


以上


ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT)について
HMTは、山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果をもとに2003年に
創立したバイオベンチャーです。企業や公的研究機関などの研究者を対象に代謝物質の解析サ
ービスの提供や大うつ病をはじめとする精神疾患等を客観的に評価するバイオマーカーを活
用した研究開発等を進めています。創立10周年を迎えた2013年12月には東証マザーズに上場い
たしました。 (https://humanmetabolome.com/)

ニュースについてのお問い合わせ先
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
コーポレート統括本部 石原(イシハラ)
TEL 03-3551-2180 FAX 03-3551-2181
invre1@humanmetabolome.com


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