5G通信時代へ向けて低損失LTCC用材料を開発-低損失を達成するため低誘電正接への挑戦-

2021 年 10 月 21 日
日本電気硝子株式会社


5G 通信時代へ向けて低損失 LTCC 用材料を開発
~低損失を達成するため低誘電正接への挑戦~


日本電気硝子株式会社(本社:滋賀県大津市 社長:松本元春)は、5G 通信に用いられる部品や
デバイスに適した誘電正接※1)の低い LTCC※2)用材料の継続的な開発により 2020 年に製品化したラ
インアップの特性を飛躍的に向上させ、業界最高の特性を達成することに成功しました。

5G 通信は、高速・大容量、低遅延通信、多数同時接続が可能になる通信技術です。その通信には、
ミリ波領域といわれる 28~40GHz の高い周波数が利用されており、信号を処理する部品やデバイ
ス(例:回路基板、フィルター)にはさまざまな LTCC 基板が使われます。これらの部品やデバイス
では周波数が高くなるほど、また誘電正接が大きくなるほど信号の減衰が大きくなります。このた
め、ミリ波領域において、より効率的な通信を実現するためには低誘電正接の材料を用いた LTCC 基
板によって信号の減衰を抑制し、低損失化することが必要になります。

この度当社は、昨年開発・製品化した低誘電正接を特長とする3タイプ(高膨張、高強度、低誘電
率)の LTCC 用材料に対し、市場から寄せられた課題を克服しました。特に高膨張タイプにおいて
は、その誘電正接が目標としていた 0.0010 以下を大幅にクリアし、現行品比 75%低下となる業界
最小の低誘電正接 0.0003 を達成しました。また高強度タイプについても、現行品比 57%低下とな
る誘電正接 0.0006 まで特性を改善しました。低誘電率タイプにおいては、実用化へ向けて課題と
なっていた強度を 130MPa から 150MPa に約 15%向上させ、比誘電率 4 未満の材料としては業界
最高の強度を達成しました。各製品の特性と改善ポイントは、下表のとおりです。


本製品は、10 月 27 日~29 日に東京ビッグサイトで開催される電子機器トータルソリューショ
ン展「JPCA Show 2021」に出展いたします。


当社はさまざまな電子デバイス向けの特殊ガラスを製造・販売していますが、今回開発した製品
で新たな市場ニーズに対応し、次世代の通信機器の性能向上に貢献してまいります。



※1. 誘電正接:誘電体が分極するときのエネルギーの指標。誘電正接が小さいほど、電磁波のエネルギー
が熱に変換されにくくなり信号の減衰が抑制される。
※2. LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics。ガラス粉末とセラミック粉末の複合材料で、1000℃
以下の低温で焼結できる。電気伝導率の高い銀導体と同時焼結し、多層化することにより複雑な高
周波部品を製造できる。





<新製品の特性と改善ポイント>
タイプ 高膨張タイプ 高強度タイプ 低誘電率タイプ
樹脂基板に近い熱膨張係 伝送損失・遅延速度の低
業界最高の曲げ強度で基
使用メリット 数を有し、接合時の信頼 減に寄与。インダクタ、
板の薄型化が可能。
性が向上。 モジュール基板に最適。
低誘電正接
改善ポイント 現行品 低誘電正接 現行品 強度アップ 現行品
強度アップ
ガラスコード MLS-53 MLS-51 MLS-64 MLS-63 MLS-23K MLS-23

誘電 28GHz 0.0003 0.0012 0.0006 0.0014 0.0015 0.0015
正接 40GHz 0.0004 0.0012 0.0007 0.0015 0.0016 0.0016

比誘 28GHz 6.8 6.1 7.6 7.9 3.8 3.8
電率 40GHz 6.8 6.1 7.6 7.9 3.8 3.8
熱膨張係数
8.9 9.7 7.4 8.7 6.1 6.1
(ppm/℃)
曲げ強度(MPa) 260 160 340 400 150 130


<製品写真>




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