ダメージによるヒト毛髪内タンパク質の構造変化を解析する新技術を開発

News Release
2017 年 6 月 29 日




ダメージによるヒト毛髪内タンパク質の構造変化を解析する新技術を開発
〜⽑髪内タンパク質構造を⾃⼰回復、変性抑制する成分の発⾒に成功〜



株式会社ミルボン (代表取締役社⻑・佐藤龍⼆) は、筑波大学 ⽩⽊賢太郎教授と共同で、熱やアルカリによるヒ
ト⽑髪内タンパク質の構造変化を解析する新技術を開発しました。また、その解析技術を用いて、タンパク質の構造変
化を抑制し、更に構造を回復させる成分探索法を開発し、効果的な成分を⾒出すことに成功しました(特許出願︓
2017-81150)。
ヘアカラー、ヘアブリーチ、コテ等の美容施術によってヘアダメージが生ずる際に、⽑髪内タンパク質の好ましくない構造
変化(タンパク質変性)が起こることが知られています。しかし、これまで⽑髪内タンパク質の変性過程を⾼精度に捉え
ることができなかった為に、その変性の抑制や変性した構造を回復することはできませんでした。
これらの知⾒については、今後、ヘアケア製品などの開発に応用していく予定です。この研究成果は以下の外部発表に
て報告されました。




【外部発表】
発表会︓The 4th Asia-Pacific Conference on Life Science and Engineering (2017 APCLSE)
発表タイトル︓" Investigation of hair damage improvement based on protein stability "
発表者︓M. Furuta1, K. Suzuta1, A. Baba1, S. Oki2, K. Shiraki2, L. Ito1
所属︓1MILBON Co., Ltd., 2 University of Tsukuba
発表⽇︓2017 年 6 月 21 ⽇




【研究の背景】
ヘアカラー、ヘアブリーチ、コテなどの美容施術は、ヘアデザインを楽しむうえで必要な美容施術です。しかし、これらの施
術によって⽑髪に生ずるダメージが原因となって、美しいヘアデザインを保つことが困難になる人も多くいます。⽑髪の
80%以上はタンパク質で構成されており、これらの施術によって⽑髪内タンパク質の好ましくない構造変化(タンパク質
変性)が起こることが知られています。このような構造変化を引き起こす一因として、熱や製剤中に含まれるアルカリが考
えられます。しかし、⽑髪内タンパク質の変性過程を⾼精度に捉える技術は充分に確⽴されておらず、その詳細は未だ
に充分に分かっていません。
今回ミルボンは、上記の問題に取り組むために、筑波大学 ⽩⽊賢太郎教授との共同研究を⾏い、ヒト⽑髪内タン
パク質の構造変化を検出することができる技術の確⽴に取り組みました。



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【研究の成果】
ヒト⽑髪から⽑髪内タンパク質を溶出させ、CD スペクトル*を用いて⽑髪内タンパク質の構造を観察した結果、ヒト⽑
髪内タンパク質はαヘリックスやβシートなどの⼆次構造を有するものであることが分かりました(図 1)。このスペクトルデー
タを元に、熱やアルカリに対して⽑髪内タンパク質の安定性を⾼める成分を探索した結果、特定の成分群が有効である
ことを⾒出しました。また、前述の成分によるケラチンタンパク質構造(αヘリックス)の回復率を算出したところ、これらの
成分が効果的に構造を回復させることを確認しました(図 2)。
更に、⽑髪に対してこれらの成分を作用させたところ、補修、アルカリダメージ抑制、熱ダメージ抑制、洗髪ダメージ抑
制、くし通りによるダメージ抑制といった⽑髪ダメージに対する様々な機能を有することが分かりました。




《参考資料》




図 1 ヒト⽑髪内タンパク質の CD スペクトル
222 nm で観測されるショルダー(矢印)はαへリックス構造に由来している




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アルカリ変性で
見出した成分によ
αへリックス
構造が崩れる
り、 へリックスの構
α
造が回復




図 2 ケラチンタンパク質のアルカリ変性と成分による構造回復
(A:変性前 B:アルカリによる変性後 C:成分適用後)
ケラチンタンパク質のαへリックス構造(A)はアルカリ変性によって崩れる(B)が、その後アルカリを除去して今回⾒出した成
分を適用することにより効果的に回復する(C)




《用語解説》
* CD スペクトル
さまざまな波⻑の光を試料に照射することにより、構造や組成に関する情報を得る⼿法です。特に遠紫外領域の光を用
いてタンパク質を観測した CD スペクトルからは、そのタンパク質の⼆次構造に関する情報が得られます。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報・採用課 大阪市都島区善源寺町 2-3-35
TEL 06-6928-2331 FAX 06-6925-2301
株式会社ミルボン/本社︓大阪市都島区、社⻑︓佐藤龍⼆、証券コード:4919(東証1部)


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