頭皮に存在する老化菌に高い効果を発揮する成分を発見

News Release
2019 年 11 ⽉ 7 ⽇


頭⽪に存在する⽼化菌 TM に⾼い効果を発揮する成分を発⾒

〜髪や頭⽪の⽼化現象の抑制に成功〜

株式会社ミルボン(代表取締役社⻑・佐藤⿓⼆)は、頭⽪細菌叢※1(スカルプフローラ)に含まれる⽼化菌に着眼
した、頭⽪と⽑髪の⽼化現象を抑制できる画期的な新技術の開発に成功しました。
頭⽪の上では様々な細菌が共⽣しており、この集団は頭⽪細菌叢(スカルプフローラ)と呼ばれています。スカルプフ
ローラは髪と頭⽪に対して、何らかの影響を及ぼすと予想されていますが、その働きのほとんどは未だ不明です。我々はこ
れまでに、スカルプフローラに含まれるエンテロコッカス属細菌※2 が髪と頭⽪の⽼化現象※3 を促進することを発⾒し、これ
を「⽼化菌 TM」と名付けました。
(参照︓2019 年 6 ⽉ 25 ⽇「第 14 回アジア地区化粧品技術者会(ASCS)⾹港⼤会 2019 で「若⼿奨励賞」受賞
http://www.milbon.co.jp/ir/upload_file/m000-/20190625_ASCS2019.pdf」)
このように、これまで当社の研究では、⽼化菌と頭⽪・⽑髪の関係を明らかにしてきましたが、その具体的な対策⽅法
が⾒つかっていませんでした。そこで、これまで明らかにされた知⾒をもとに、⽼化菌を減少させる⽅法、⽼化菌の影響を
受けた頭⽪を改善する⽅法を探索した結果、それを可能にする成分の発⾒に⾄ることができました。
今回⾒いだした⽼化菌の働きを制御する技術により、⾼い効果を発揮できるヘアケア製品の開発が期待されます。
本研究成果は以下の学会で報告されました。この知⾒は来春発売のヘアケア製品から応⽤していきます。


【外部発表】
発表会︓第 92 回 ⽇本⽣化学会⼤会
発表タイトル︓頭⽪常在菌が促進する頭⽪と⽑髪の⽼化
発表⽇︓2019 年 9 ⽉ 20 ⽇


【研究の背景】
先進国で進む⾼齢化に伴い、髪や頭⽪の⽼化現象に対応したヘアケア製品の需要は年々⾼まっています。太い直
⽑を持つ傾向にある⽇本⼈⼥性の多くは、加齢に伴って⽑髪のハリコシが低下し、うねり、ごわつきなどが⽣じるようになり、
髪に対するより多くの悩みを抱えるようになります。これらの悩みを抱えた⼥性は、ヘアスタイルの選択に制限を強いられて
いますが、これを本質的に解決できる⽅法は未だに開発されていませんでした。
我々はこれまでに、3000 ⼈を超える⽇本⼈⼥性の⽑髪と頭⽪の⼤規模調査の中で、髪や頭⽪の⽼化現象が進⾏
した⼈では、頭⽪にエンテロコッカス属細菌が多く⽣息していることを発⾒してきました。さらに、エンテロコッカス属細菌が頭
⽪の細胞を⽼化させ、⽑髪形成にも影響を及ぼすことを明らかにしてきました(図 1)。今回、髪や頭⽪の加齢変化を抑
制することを⽬指して、頭⽪上のエンテロコッカス属細菌の働きを制御出来る技術の開発を⾏いました。




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【研究の成果】
頭⽪と⽑髪の加齢変化をエンテロコッカス属細菌という観点から抑制するため、以下の 3 つの側⾯から成分の検討を⾏
いました。


1. エンテロコッカス属細菌の増殖を抑える
スカルプフローラにはエンテロコッカス属細菌以外にも様々な細菌が含まれており、多種多様な細菌によるバランスの
上に成り⽴っています。そのため、細菌叢すべてを殺菌してしまうような成分は好ましくなく、エンテロコッカス属細菌に
限ってその増殖を抑える成分が必要でした。様々な物質を検討したところ、グリシン※4 を⼀定濃度で加えることで、エ
ンテロコッカス属細菌に限って増殖抑制効果が発揮できることを発⾒しました(図 2A)。
2. エンテロコッカス属細菌が産⽣する⽼化促進成分を減少させる
エンテロコッカス属細菌は⽼化促進成分を産⽣することを確認しておりました。そこで、その⽼化促進成分の産⽣を
抑制する成分を検討したところ、フィチン酸※5 に顕著な効果が⾒出されました(図 2B)。
3. 細胞⽼化を抑制する
我々は以前の研究において、⽼化が進⾏した頭⽪の細胞には、⽑髪形成を司る⽑包の細胞の増殖を阻害するは
たらきがあることを明らかにしました。⽑髪の加齢変化を効果的に抑制するには、細菌だけでなく、細胞⽼化を抑える
ことが必要です。そこで、細胞⽼化を抑制する成分を検討したところ、リン酸アスコルビル Mg※6 とδ-トコフェロール※7
が特に有効であることが発⾒されました(図 2C)。




以上の 4 成分を配合した頭⽪⽤美容液を⽤意し、10 名の⼥性モニターによる 6 か⽉間の継続使⽤試験を⾏ったと
ころ、スカルプフローラ中のエンテロコッカス属細菌存在⽐率が減少した他、抜け⽑本数の減少、新⽣部⽑髪のねじり剛
性率※8 の上昇が確認されました(図 3)。ミルボンでは今後、この技術をもとにスカルプフローラからアプローチするスカルプケ
ア製品の開発に取り組み、ヘアスタイルの選択肢に悩む⼥性が、⽣涯を通じて美しい髪を保ち続けられることに貢献しま
す。




エイジングが進⾏した
⽑髪の例




図 1 エンテロコッカス属細菌がエイジングを促進するメカニズム

① エンテロコッカス属細菌には、頭⽪の細胞を⽼化させるはたらきがあります。

② ⽼化した頭⽪の細胞は、⽑包の細胞に対して細胞の増殖を阻害します。




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図 2 各種成分の効果検証



A グリシンによるエンテロコッカス属細菌の増殖抑制効果。グリシンを添加すると、エンテロコッカス属細菌の増殖が抑えられます。

B フィチン酸によるエンテロコッカス属細菌の⽼化促進成分の抑制効果。フィチン酸を添加すると、本来⽣産される⽼化促進成分がほと

んど産⽣されなくなります。

C リン酸アスコルビル Mg およびδ-トコフェロールによる細胞⽼化の進⾏抑制効果。各成分を添加すると、添加しない状態に⽐べて細胞

のβ-ガラクトシダーゼ活性※9 が減少し、⽼化の進⾏が抑えられます。




図 3 成分配合の頭⽪⽤美容液の継続使⽤モニター試験による効果検証




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《⽤語解説》
※1 頭⽪細菌叢(スカルプフローラ)
ヒトの⾝体のいたるところには「常在菌」と呼ばれる細菌が⽣息しており、頭⽪に⽣息する常在菌は「頭⽪常在菌」と呼ば
れます。常在菌は植物のように群⽣して「細菌叢」を形成します。そのため、細菌叢はフローラ(お花畑)とも呼ばれ、頭⽪
細菌叢はスカルプフローラと呼称されます。

※2 エンテロコッカス属細菌
乳酸菌の⼀種で球形をした細菌です。腸管、⼝腔内での報告例はありますが、⽪膚など体表の常在菌としては、これま
で注⽬されたことはありませんでした。

※3 髪と頭⽪の⽼化現象
髪の⽼化現象としては、⽩髪の増加、単位⾯積あたりの⽑髪本数の減少、細⽑の増加、うねった⽑髪の増加、ツヤ・ハ
リコシの減少、⽑髪のダメージ耐性の減少などが⾒つかっています。頭⽪の⽼化現象としては、抜け⽑の増加、頭⽪の⻩
ぐすみ、茶ぐすみ、柔軟性の低下などが⾒つかっています。

※4 グリシン
アミノ酸の⼀種で、ヒトの⾝体にも多く含まれています。細菌の細胞壁に取り込まれることで分裂を阻害することから、⾷
品の静菌剤などに使⽤されています。ヒトなど動物の細胞には細胞壁がないので、影響はありません。化粧品には保湿
成分として配合されることもあります。

※5 フィチン酸
植物、特にその種⼦に多く含まれている成分で、鉄分と結びつく性質があります。エンテロコッカス属細菌が⽼化促進物
質を⽣産するには鉄分が必要なことが分かっており、フィチン酸はこのはたらきを防いでいると考えられます。

※6 リン酸アスコルビル Mg
ビタミン C 誘導体の⼀種です。抗酸化作⽤により細胞⽼化を抑制する作⽤があります。

※7 δ-トコフェロール
ビタミン E の⼀種です。リン酸アルコルビル Mg 同様、抗酸化作⽤により細胞⽼化を抑制します。さらに、ビタミン C 類との
相乗効果があることが知られています。

※8 ⽑髪のねじり剛性率
⽑髪の物性値の⼀種で、ハリコシに関係するものです。

※9 β-ガラクトシダーゼ活性
ある種の糖類を分解する酵素の⼀種です。細胞⽼化の指標として、研究者の間で広く⽤いられているものです。⽼化が
進⾏するほど、β-ガラクトシダーゼ活性が⾼まることが知られています。

■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン
TEL 03-3517-3915 FAX 03-3273-3211
株式会社ミルボン/本社︓東京都中央区、社⻑︓佐藤⿓⼆、証券コード︓4919(東証1部)
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