脊髄損傷に対してHGFを投与したときの遺伝子発現プロファイルに関する論文発表のお知らせ

2024 年3月 14 日
各 位
会 社 名 ク リ ン グ ル フ ァ ー マ 株 式 会 社
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番 15 号
住 所
彩都バイオインキュベータ 207
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 安 達 喜 一
(コード番号:4884 東証グロース)
問い合わせ先 取締役経営管理部長 村 上 浩 一
TEL.072-641-8739


脊髄損傷に対して HGF を投与したときの遺伝子発現プロファイル
に関する論文発表のお知らせ

当社の科学アドバイザーである慶應義塾大学医学部生理学教室 岡野栄之教授のグループが実施しまし
た脊髄損傷モデル動物に HGF を投与した後の遺伝子発現プロファイルの研究成果が、 2023 年3月 13 日に
国際学術雑誌「Inflammation and Regeneration(インフラメーション アンド リジェネレーション) 」の
オンライン版に論文掲載されました。

英文タイトル:Chronological transitions of hepatocyte growth factor treatment effects in
spinal cord injury tissue
タイトル和訳:脊髄損傷組織における肝細胞増殖因子の治療効果の経時的変遷
著者名:岡野雄士、加瀬義高、末松悠、中村雅也、岡野栄之
掲載誌:Inflammation and Regeneration
DOI:10.1186/s41232-024-00322-9

これまで、同大学医学部の末松悠先生らが、重度の脊髄損傷ラットに対して、急性期の HGF 投与に続
き、亜急性期に iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞を移植する併用療法において、細胞移植単独治療よりも大
きな機能回復を得る研究成果を論文報告しております(2023 年 10 月 30 日付け当社プレスリリース参
照)。この研究では、HGF 投与によって神経再生や抗炎症等に関連する遺伝子が発現し、脊髄微小環境が
整うことで併用効果が向上することが明らかになりました。
本論文では、さらに網羅的に経時的な RNA シークエンス解析を行った結果、HGF 投与によって脊髄損
傷組織の遺伝子発現パターンがダイナミックに変動し、神経再生に有利な環境が形成されていくことが
確認されました。すなわち、HGF を投与して数日経過した後に iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞を移植する
ことがより効果的であることが示され、今後、臨床応用に向けて、併用療法の最適な治療介入時期を設
定する上で重要なエビデンスが得られました。
本論文の詳しい内容につきましては、慶應義塾大学による 2024 年3月 13 日付けプレスリリースをご
参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/3/13/240313-1.pdf

以上
HGF(Hepatocyte Growth Factor, 肝細胞増殖因子)について
HGF は、成熟肝細胞の増殖を促進する因子として発見された生理活性タンパク質であり、その後の研究
から細胞増殖のみならず、細胞運動促進、抗細胞死、 形態形成誘導、血管新生など様々な組織・臓器の
再生と保護を担う多才な生理活性を有することが明らかにされました。
HGF は神経保護作用や軸索伸展作用も有し、神経難病とされる脊髄損傷に対する薬理効果は、慶應義塾
大学医学部生理学教室 岡野栄之教授及び整形外科学教室 中村雅也教授らのグループの研究により明ら
かにされています。新たな脊髄損傷治療薬として、HGF への期待が高まっています。
他方、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室 平野滋教授らのグループは、HGF の抗線維化
作用に着目し、 線維化疾患である声帯瘢痕に対する薬理効果を明らかにしました。HGF には、声帯瘢痕を
端緒として、他の線維化疾患への適応拡大の可能性が期待されています。

iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞について
ヒト iPS 細胞(人工多能性幹細胞)に由来し、未分化な状態を保ったまま増殖することが可能な自己複
製能と、中枢神経系を構成する3系統の細胞(ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト)へ
と分化できる多分化能を併せ持つ細胞です。
現在、慶應義塾大学病院において、
「亜急性期脊髄損傷に対する iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再
生医療」の臨床研究が実施されております。詳細は、同大学による 2022 年1月 14 日付けプレスリリース
をご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2022/1/14/220114-1.pdf

クリングルファーマ株式会社について https://www.kringle-pharma.com/
当社は「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、 難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供
し、社会に貢献すること」 を企業理念とし、希少疾病を対象に HGF タンパク質医薬品の自社開発を推進す
るバイオベンチャー企業です。
現在、HGF タンパク質医薬品のレイトステージの開発パイプラインでは、脊髄損傷急性期を対象とする
開発が第Ⅲ相臨床試験を終了し、声帯瘢痕を対象とする開発は第Ⅲ相臨床試験を実施中です。
当社は、HGF タンパク質医薬品の社会実装を通じて新たな価値を創造し、人々の健康と幸せに貢献して
まいります。

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